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聖人シモンと星の銀貨  作者: 日比野暮
第3章 聖人シモンと精霊姫の復讐
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第3章 05話 月例会の手掛かり

《グウェンさん……》


《悪いけど話は後にして。今は他にするべきことがある筈よ》



 ──確かに、敵のアジトへ潜入している最中にする話じゃないか。


 囚われている子供達は……悔しいけど、今はまだ助けられない。

 でも、後で必ず全員助け出す。万一その前に売られてしまった子がいたとしても、絶対に売られた先を探し出してみせる。



《またまた人助けマニアの血が騒いでるの。それでこそシモン様なのー》


《あーもう、うっさい!シリアスな雰囲気が台無しだよ!》



 と、とにかく、まずは月例会の手掛かりを探さなきゃ。

 僕とグウェンさんは薄暗い通路をさらに奥へと進んでいく。さほど歩くこともなく、通路は凝った彫刻が施された重そうな樫の扉の前に突き当たった。扉のノブをそっと回してみたが、どうやら鍵がかかっているようだ。



《開錠の技能を使うのは久々だなあ》


《貴方って本当に何でもアリなのね……》



 幸運の星(ラッキースター)斥候(スカウト)ジェニーさんから教わった開錠の技能が、久々に役立つ時が来た。確か技能レベルは5程度だったっけ。それでも、簡単な鍵を開けるくらいなら何の問題もない。鍵穴に差し込んだ開錠用の金具に手応えを感じたところで一気に捻りを加えると、扉は呆気なく開いた。ありがとうジェニーさん!



《この部屋は──明らかにボスの部屋っぽいですね》


《いかにも成金趣味の下衆が喜びそうな部屋だわ》



 辿り着いたのは、調度のあちこちに金があしらわれた煌びやかな雰囲気の部屋だった。他の部屋とは違い、魔法の明かりがふんだんに設置されたその部屋は地下とは思えないほどに明るい。金細工や金箔の数々がその光を反射し、部屋のそこかしこで黄金の輝きを放っている。



《なんて品のない……折角の金が泣いているわ》


《へえ……金の扱いにうるさいのはエルフよりもドワーフだと思ってました》


《私達エルフは優れた細工士でもあるのよ。もっとも、私にはそっちの才能は無いけどね》



 僕たちは手分けしてボスの部屋を捜索していく。僕は書棚。グウェンさんはキャビネットの中。ステラは……うん、あれは空中をふわふわと漂ってるだけで何もしてないな。



《グウェンさん、ちょっとこのファイルを見てください》


《M.K 2人@10P、G.W 1人@13P50G……何かのリストみたいだけど、これは?》


《多分、顧客リストですよこれ。客のイニシャルと売った子供の数。@の後ろは一人当たりの売値じゃないですかね。だとすると、Pは白金貨でGは金貨かな》


《!……ダナンの金持ちでM.Kっていったら、まさか〝モーリス・カーニー〟!?》


《有名な人なんですか?》


《知らないの!?この街を治める代官よ!》


《えええええ!?この街で一番偉い人がディアボロの顧客!?》


《G.Wは恐らく〝グレアム・ウォルダーズ〟……ダナンの商人ギルドのナンバー2まで……》


《街の支配階級ばかりじゃないか……!》



 弱者を守る立場の人たちが子供を食い物にする側に回ってるなんて世も末だ。こいつら、絶対に後で裁きの場に引き出してやる。



《これは……何かしら?》



 グウェンさんが1枚の羊皮紙を手に取って明かりに透かしている。見てみると、その羊皮紙の四辺を縁取るように不思議な記号が書かれている。でも書かれているのはそれだけで、他の部分は真っ白だ。



《何ですか、これ?》


《分からないわ。でも、宝石だらけの派手な手文庫の中にこれだけが入ってたの。何か重要な書類だとは思うんだけど……》


《縁取りの記号が暗号になってるのかな?……うーん……これといって法則性はなさそうですけど……いや、待てよ。これ、魔法がかかってますね》



 僕が解析(アナライズ)の魔法をかけると、羊皮紙に複雑な魔法陣が浮き上がってくる。



《これは……?》


《この羊皮紙に付与された魔法陣です。これを読み解けば、どんな魔法がかかっているのかが分かるんですよ》



 解析(アナライズ)──付与魔術師が魔道具に刻み込んだ魔法陣を浮かび上がらせることができる。あとは魔法陣を読み解く知識さえあれば、魔道具の効果を読み取れる。吸血鬼(ヴァンパイア)の真祖の棲み処から持ち出した魔道具の効果を鑑定した際にも大活躍した魔法だ。



《これは…………》


《何?一体何が書いてあるの?》


《今は何も書かれてませんね》


《はあ!?》



 唖然としたグウェンさんが口をぽかんと開けて固まった。



《でも、これこそが月例会の手掛かりかもしれません》


《何も書かれてないのに、それがなんで手掛かりになるのよ?》


《グウェンさん、僕は『()()何も書かれてない』と言ったんですよ》


《今は……って、一体どういうこと?》


《この紙には封印の魔法がかけられているんです。満月の夜0時になると封印が解け、隠された文章が浮き上がる仕組みになってます》


《!》



 実に周到な仕掛けだ。ここに書かれた文章を読もうと思ったら、この紙を盗み出して満月の夜を待つしかない。しかし、盗んだことを連中に気付かれたらそこでお終い。用心深いディアボロの連中は、すぐにその足取りを消してしまうだろう。


 そして、もう一つ明らかになったことがある。それは、これだけの仕掛けを施すことができる凄腕の魔術師がディアボロの中枢にいる、ということだ。これ程のレベルの魔術師が相手となると〝姿隠しのマント〟の効果すら破られるかもしれない。……こりゃ対策が必要だなあ。



《封印が溶けるのは満月の夜……確かに、それなら月に一度の月例会とタイミングが合致するわね。でも、満月にならないと読めないんじゃ潜入した意味が──》


《大丈夫です。封印なら多分僕が解けますから》



 羊皮紙に手を翳して〝聖人の奇跡〟を発動すると、浮かび上がった魔法陣が溶けるように消えていき、それと入れ替わるように隠されていた文字が浮かび上がってくる。



《これは……!?》


《『10月5日 20時 王都エルミナスの拠点 3・1・1・2・1』……多分、次の月例会の場所と日時ですね。後ろの数字の羅列はなんだろう?》



 何か意味のある数字なんだろうけど、いくら考えてもさっぱり見当がつかない。


 考え込む僕の脇で、グウェンさんが興奮に打ち震えている。



《10月5日といったら、今から3日後よ。遂に──遂にディアボロの月例会の手掛かりを掴んだわ!》

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