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聖人シモンと星の銀貨  作者: 日比野暮
第2章 聖人シモンと王都の大賢者
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第2章 19話 勅許

「さて、吸血鬼(ヴァンパイア)を討伐したシモンにも何か褒美をとらせねばならんな」


「陛下、どうかお気遣いなく。見返りなら、吸血鬼(ヴァンパイア)の魔石をギルドに買い取ってもらいましたから」


「おお、そういえばギルドから大量の魔石の納品があったと聞いておる。あれはシモンの獲物だったか」



 なるほど、冒険者ギルドが買い取った魔石を王宮が買い取ってるのか。そういえば、ギルドのノーラさんが「これだけあれば王都の設備を丸2年は支えられる」って言ってたっけ。



「とはいっても、褒美を出さん訳にもいくまい。金の他に、何か欲しいものはないか?」


「欲しいものですか……」



 王様から貰えるものでいま必要なものといったら何があるんだろう。お金は沢山ある。名誉も特にいらない。権力なんか欲しいとも思わない。

 こうして改めて考えてみると、僕って物欲が薄いのかもしれないな。でも、何も貰わずには済まされない雰囲気だし、どうしよう……。あ、そうだ。駄目元であの話をしてみるか。



「陛下のお言葉に甘え、ひとつお願いしたい事があります」


「許す。申せ」


「この後、僕は故郷に戻って知人との約束を果たさなければなりません。その際、陛下のお力添えを頂きたいのです」


「その約束とやら、詳しく話してみよ」



 僕はグウェンさんから聞いた通りのことを王様に説明した。子供の誘拐と人身売買を主業とする犯罪組織。それを裏で支える富裕層。たった一人で暗闘を続けているグウェンさんの存在。

 王様に求められ、グウェンさんとの出会いや森林迷宮での冒険の話までさせられたため、随分と長い話になってしまったが、王様は僕の話に真剣に聞き入っていた。



「──というわけで、陛下には僕らが捕えた組織の構成員の引き取りと、彼らに対する厳正な裁きをお願いしたいのです」


「分かった、引き受けよう。差し当たってはモルトのオールストン伯爵に犯罪者の引き取りを委託する。取り調べと裁判については、こちらから人を派遣しよう」


「ありがとうございます」



 王様は深いため息をついて椅子に深く座り直した。



「我が国にそのような病巣が蔓延っておったとは……すまぬ、本来なら国が動くべき事案だな」


「いや、今動いたら逆効果じゃろう。組織を支える富裕層の中に貴族がおったら、こちらの動きが筒抜けになるわい」


「うむ……」



 師匠の言葉に、王様は眉間の皺を押さえるような格好で目を閉じる。


 エルム王国は比較的よく治まっている国ではあるのだが、民の規範であることを忘れ特権意識に凝り固まった貴族も少なくない。彼らの行状には、国王も頭を悩ませているようだ。



「どうかご安心ください。今回は僕だけじゃなく、銅級冒険者のグウェンさんもいますから」


「うむ、期待して待っておるぞ。可能であれば組織の背後にいる者も一網打尽にしたい。背後関係に関する情報があれば、是非持ち帰ってくれ」


「承りました」


「それから、犯罪者を捕えるのが困難な場合は構わぬ、お主の裁断で切り捨てよ」


「は!?」


「そのような連中、この世に生きてあるだけで国家の害悪だ。捕えたところでどのみち極刑は免れぬわ」



 王様は吐き捨てるように言い切った。

 僕の判断で人を殺してもいいって……これは大変な権限を預けられてしまったぞ。万一のことがあっても罪に問われずに済むというのは、確かに有難いけれど。



「ありがとうございます。陛下の寛大な裁定を頂き、安心して仕事に取り掛かれます」


「うむ。良い報告を待っておるぞ。そうそう、今回のお主の功績を王家として正式に認める旨、ギルドに申し伝えておいた。じきに銅級認定の沙汰が下るであろうから、心して待つがよい」


「有難き幸せ……って、はいぃ!?銅級認定!???」


「よかったのう。まあ、今のお主なら金級でも物足りんぐらいじゃろうがの」


「は、はあ…………」



 あまりのことに魂の抜けたような返事しか返せなくなった僕に王様が忍び笑いを漏らしたところで、今回の謁見はお開きとなった。

 色々とあったけれど、とても実のある話ができた気がする。早くグウェンさんに会って、色々と報告しなきゃいけないな。





「あのグウェンの奴が、お主にそんな依頼をしておったとはのう……」



 王宮からの帰り道で、師匠がぽつりと呟いた。

 グウェンさんとの約束については師匠にも話していなかったから、今回の話には意表を突かれたのだろう。



「グウェンさんは僕の聖人としての力を知ってますからね。それに、同じモルトの冒険者ですし」


「いや、あ奴はそれくらいで他人を信用したりはせん。恐らく、何かお主に感じるものがあったんじゃろうなあ」


「感じるもの……?」


「まあ、それが何なのかはワシにも分からんがの。本人にでも聞いてみたらどうじゃ?」



 確かに、出会ってから間もない僕に一生をかけた目標を手伝わせるっていうのは少々不自然な気もする。僕に聖人としての力があると言っても、犯罪組織と戦った経験なんて皆無だ。そういった方面に長けた優秀な冒険者を何人か雇えば、もっと早いうちに目的を達成できていたかもしれない。


 それなのに──グウェンさんはどうして僕を選んだんだろう?

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