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聖人シモンと星の銀貨  作者: 日比野暮
第2章 聖人シモンと王都の大賢者
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第2章 07話 生存者たちの逃避行

 日が落ちる前に生き残りの村人を探して保護しなければならない。

 ジェシカの家から出ると、すぐに僕は気配探知を発動。徐々にその探知範囲を村全体へと広げて──



【技能 気配探知 のレベルが上がりました(Lv18→19)】

【技能 気配探知 のレベルが上がりました(Lv19→20)】

【技能 気配探知 のレベルが上がりました(Lv20→21)】



 ──うん、技能を使うたびにこれを見せられるのって、色々とキツい。



《ステラ、いい加減このメッセージが邪魔くさいんだけど》


《えー、もっと上げてやろうって気にならないの?》


《ならないよ!それどころか毎回ドン引きだよ!》


《仕方ないの。じゃあレベルアップのメッセージだけ非表示にしたげるの》


《ありがてぇ……ありがてぇ……!》



 悩みがひとつ解消された僕は、再び探索に意識を戻す。気配探知に引っかかった反応の数は全部で100に届かない程度。でも、なんだかいつもと違う反応が混じっている。



《……普通の反応の他に、妙に禍々しい気配が混じってるんだけど》


《多分それは吸血鬼(ヴァンパイア)の気配なの》


《へ?気配探知しただけで、相手が人間か吸血鬼(ヴァンパイア)かまで判別できちゃうの?》


《技能レベルが上がったせいなの。もっとレベルを上げると、離れた場所を空から俯瞰できるようになるの》


《それもう神様の視点じゃないか……!》



 生存者の反応が30程度だったのに対し、吸血鬼(ヴァンパイア)らしき反応は70近い。想像以上に浸食が進んでいる。助けに来るのがあと少し遅れてたら、村が全滅してたかもしれないな。



《とにかく生存者を一箇所に集めよう》


《集めてどうするの?そこを襲われたら一網打尽になっちゃうの》


《勿論、集めて終わりってわけじゃないさ。吸血鬼(ヴァンパイア)の退治が終わるまで避難してもらうんだよ》



 村人の皆さんを守りながら吸血鬼(ヴァンパイア)の軍団と戦うのは流石に厳しいので、一時的にでも離れた場所に逃げてもらうしかない。


 僕は生存者のいる家に片っ端から声をかけて回る。



「皆さんを助けに来た王都の冒険者です!日が出ているうちに避難先まで誘導しますので、速やかに出てきてください!」



 すると、家の中に隠れていた男が、僕の呼びかけに応えて顔を出した。



「王都の冒険者ってのは本当か!?」


「はい。皆さんが集まり次第すぐに誘導しますので、日が出ているうちに村役場まで移動してください」


「わ、分かった、すぐに荷物をまとめて役場に行く!」



 男はそういうと、家の中に駆け戻っていった。恐らく荷造りを始めるのだろう。


 同じように、他の生存者にも順次声をかけていく。避難を渋る人がいたらどうしようかと不安だったけど、生存者の皆さんも生命の危機と隣り合わせの生活に限界を感じていたらしく、僕が呼びかけると渡りに船とばかりに飛びついてきた。


 こうして、村役場に30名近くの村人が勢ぞろいした。その中には依頼主のジェシカとロバのルーの姿もある。



「シモンお兄ちゃん、どこにひなんするの?」


「うーん、これだけの人数を受け入れるとなると、王都の冒険者ギルドを頼るしかないかな」



 すると、やり取りを聞いていた周りの村人たちが一斉に声をあげる。



「王都だって!?ここからだと馬でも1日以上かかるだろう!」


「じきに日が落ちる。吸血鬼(ヴァンパイア)どもに追われたら逃げ切れんぞ」


「いやいや、皆さん大丈夫です!落ち着いてください!」



 僕が制止すると、騒いでいた村人たちが静まり返る。



「まず第一に、この避難はあくまで一時的なものです。吸血鬼(ヴァンパイア)を退治したら、皆さんがまた元の家に戻れるよう取り計らいますので、その点はご安心ください」



 村人達の間から安堵の声が漏れ聞こえてくる。



「それから避難の足についても心配無用です。王都までは空を飛んでいきますから」


「はあ!????」


『ヒィン!?』



 村人たちの声が見事に揃った。一部ロバの悲鳴も聞こえてきたが、そちらはとりあえずスルーする。


 唖然とする彼らの中で、ただ一人ジェシカだけがニコニコしてこちらを見つめ返してくる。



「あのね、シモンお兄ちゃんはまほうつかいなんだよ!あたしといっしょに、まちからお空をとんできたの!」


「魔法使い?その若さでか?」


「はい、王都で大賢者バルタザール様に師事しています」


「おお……」


「大賢者様のお弟子さんとは……」



 僕が師匠の名前を出した途端に村人たちが納得顔になった。師匠の知名度は凄いな。さすがは金級冒険者。



「これから魔法をかけますので、皆さん僕の周りに集まってもらえますか」



 村人たちが恐る恐るといった様子ながら集まってくる。



「それじゃいきますよ──飛翔(フライト)!」


『ヒィィィィィィ…………』



 ごめんよルー。決して悪気があってやってる訳じゃないからな。だから、そうやって僕を恨めし気に睨むのはやめてくれ。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 王都までの飛行は順調だった。これだけの人数が街中まで飛んで行ったら大騒ぎになりそうなので、街の外の人目につかない場所に降り立ち、そこからギルドまでは徒歩行軍だ。

 しかし、人数が増えたぶん飛翔(フライト)の魔力消費量は増えてる筈だけど、これといって特に問題は無かったな。というか、僕の魔力量の百分の一も使ってないような……。



《シモン様の魔力は常人の三万倍だから当然なの》


《そのお陰で助かってるけど……何故だろう、ちっとも嬉しくない》



 村人の皆さんを引き連れてギルドの入り口を潜った時には、日もだいぶ傾いていた。



「ノーラさんすみません、ちょっと頼みたいことがあるんですが」


「あら?シモン様、まだ出発なさってなかったんですか……って、そちらの方々は一体?」



 受付のノーラさんが僕の後ろにいる村人たちをみて怪訝そうな表情を浮かべる。



「こちらはトマ村の生存者の皆さんです。これから村に戻って吸血鬼(ヴァンパイア)を退治してきますんで、それまでこの人たちをギルドに置いていただけませんか?」


「トマ村の?……失礼ですがシモン様、先ほど貴方がギルドから出ていってから、まだ半日も経っておりません。どんなに足の速い馬を飛ばしたところで、まだトマ村に辿り着いてすらいない筈ですが」



 ああ……うん、そりゃ疑うよね。困ったなあ、なんて説明すればいいんだろう。



「あのね、みんなシモンお兄ちゃんのまほうで、お空をとんできたの!」


「……はい?」


「お嬢ちゃん、この子の言う通りだ。俺たちは村から空を飛んできたんだよ」


「随分長く生きとるが、まさかこのワシが空を飛ぶとはのう」


「あの風を切る快感といったら、ちょっとクセになっちゃうわよね~」



 ジェシカの言葉に乗っかって、村人たちも初めて空を飛んだ感激を思い思いに話し出す。みんな最初は怖がってたから少し心配だったんだけど、どうやら気に入ってくれたみたいだな。帰りも空を飛んでいくことになるだろうから、拒否反応が出なかったのは何よりだ。



「えーと……つまりシモン様がこの全員に飛翔(フライト)の魔法をかけて連れてきた、ということですか?」


「その通りです。あ、そういえば行きも飛んでいきました。ジェシカと一緒に」



 ノーラさんのこめかみの辺りがヒクヒクと痙攣している。



「ええと、何から聞けばいいのかしら……。シモン様、そのような大魔法をどこで身に付けられたんですか?」


「大賢者様の下で学びました」


「大賢者様って……ま、まさかバルタザール様のことですか!?」


「はい。いま弟子入りさせてもらってまして」


「し、失礼いたしました!!」



 ノーラさんがいきなり床に土下座して僕に平謝りし始める。



「ええっ!?ちょっとノーラさん、いきなり何してるんですか!?」


「大賢者様のお弟子様とは存じ上げず、疑いの目を向けてしまったこと、この通り平にお詫びいたします!どうかお許しを!」


「ちょっ、許すも許さないもノーラさんは何も悪いことしてないじゃないですか!ほら、他の皆さんが見てますから、早く頭をあげてください!」


「いいえ!許すと言っていただけるまで、この頭を上げるわけにはいきません!」


「あーもう面倒くさい!許す、許します!だから早く土下座をやめて!」


「本当ですか!?本当ですね!?……良かったあああああ……うわあああああん!!」



 ノーラさんは安堵のあまり、幼い子供のようにおいおいと泣きじゃくり始めてしまった。くっ……周りの冒険者からの視線が痛い!


 それにしても、ちょっと待って、これって一体どういうこと?大賢者様といったら、大陸中の人々から尊敬される英雄だよね?それなのに、まるで魔王の逆鱗にでも触れてしまったかのようなノーラさんのこの態度は一体……?


 困惑する僕に、いかにもベテランといった風貌の冒険者が話しかけてきた。



「お前さん、バルタザール様のことを何も知らんで弟子入りしたのか?」


「嫌だなあ、知ってるに決まってるじゃないですか。世界最高の魔術師にして、金級冒険者の英雄ですよね?」


「やっぱし何も知らねえんだな……」


「えっ」



 ベテラン冒険者は憐れむような表情を浮かべたのち、話を続ける。



「今でこそ研究ひと筋の好々爺然としたお人だが、昔は気に入らねえ相手となると誰彼構わず大魔法をぶっ放す、そりゃあおっかねえ人だったんだよ」


「え……まさか、嘘でしょ?」


「嘘じゃねえよ。このギルドだって、あの人にゃ相当ひどい目に遭わされてんだ。うっかり酷い内容の依頼でも回しちまおうもんなら、怒り狂ったあの人に建物ごとあっという間に潰されちまうんだぜ?ギルドの関係者からすりゃ、あの人は生きた災害みてぇなもんなんだよ」



 何それ初耳……はっちゃけ過ぎでしょ師匠……。

 当時のことを思い出したのか、男はブルッと身体を震わせた。



「これだけは親切で言っとくが、くれぐれもあの人を怒らせるんじゃねえぞ。他所じゃ〝大賢者〟なんて偉そうな二つ名で通ってるらしいが、このギルドじゃ〝暴君〟って名前のほうが通ってるくらいなんだからよ」



 思わぬところで師匠のとんでもない黒歴史を知らされてしまった。

 元暴君にして現マッドサイエンティストって、どんだけ濃いキャラなんですか師匠……。

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