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聖人シモンと星の銀貨  作者: 日比野暮
第2章 聖人シモンと王都の大賢者
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第2章 03話 世界最強の魔術師

 身体強化(仙術)をあっさり身に付けてしまった僕は、これで弟子入りの目的を果たしてしまったことになる。すぐにモルトに戻ってグウェンさんと合流することも考えたが、まずは師匠に今後のことを相談してみることにした。

 そして話し合いの結果、僕はもうしばらくの間師匠のもとに留まり、師匠の研究を手伝いつつ魔法の修行をつけてもらうことになった。


 僕としてはなるべく早く戻ってグウェンさんの手伝いをしたかったのだが、その事情を知った師匠から「そんな大仕事に取り掛かるなら、その前に手持ちのカードを増やしておけ」と、逆に修行の継続を強く勧められる形になってしまった。


 でも、正直いって大賢者様から魔法を学べるというのは、純粋にワクワクする。なにせ魔法に関しては大陸随一とも称される使い手だ。一体どんな魔法を教えてもらえるんだろう。



「ぼそぼそ……ぼそ……(魔法の修行は明日から始めよう。今日のところは書庫の魔導書にでも適当に目を通しておけばよい)」



 うわあ、あの書庫か。

 あの大量の蔵書のなかから僕でも読めそうな魔導書を探り当てるだけでも、かなり面倒そうなんだけど。



「ぼそぼそ……ぼそぼそ……(それにしても、たった1日で身体強化どころか仙術まで習得するとはのう。ステータスが高いというのは便利じゃな)」


「〝便利〟ですか……そうやって前向きに考えられれば楽なんですけど、なんだか自分がどんどん化け物じみていくようで──」


「シモンよ、お主はひとつ考え違いをしておるのう。人間、強力な力を持つだけでは化け物になんぞならんわい」



 急に真面目な顔つきになった師匠が僕の目を見据え、はっきりした口取りで語りだした。



「大事なのは力の使い道じゃよ。その強大な力をもって他人を救ったなら、お主は〝英雄〟じゃ。しかし、その力を振るって心正しき人を傷つけたなら、その時点でお主は〝化け物〟に堕することになる。努々それを忘れない事じゃ」


「師匠……」



 思わず立ち竦んだ僕を一人残し、師匠は自分の研究室へと戻っていった。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇




《さて、書庫に来たのはいいけど、一体どの本を読めばいいんだろ》



 僕の目の前にはぎっしりと本が詰まった書棚がずらりと並んでいる。これ一体何冊あるんだ?ひとつの書棚に100冊くらいの本が詰まっているとして、書棚の数は10…20…30……うん、数えるのもアホらしくなってくるな。



《シモン様にはこの本がお勧めなの》


《ん?どれどれ──『愛の指南~初めて知る本当の歓び~』──てやあっ!》



 僕は受け取った本を力いっぱい放り捨てた。



《ああっ、ステラが厳選した貴重な本が!?》


《厳選した結果がアレって頭おかしいんじゃないの!?というか、師匠もなんでこんな本を持ってるんだ!》



 ぶんむくれたステラが《シモン様ってば真面目ぶっちゃって……》とか《とんだムッツリなの……》とかブツブツと言ってるけど、そんなんでいいのか天使様。



《あ、これとか良さそうだな。『系統別魔法大全』だって》


《はいはい、ご勝手にどうぞなのー》



 いつの間にかステラは長椅子に仰向けにひっくり返り、料理のレシピ本を行儀悪く読み散らかしている。色気の次は食い気か。つくづく生臭天使だなこの子は……。


 まあいいや、ステラに構っていたらキリがない。僕はさっそく魔法書を開いて読み始める。



《なになに、魔法とは基本的に以下の系統のいずれかに属しており──》



  火魔法   :基本四属性魔法のひとつ。火を操る魔法

  水魔法   :     〃      水、氷を操る魔法

  土魔法   :     〃      土を操る魔法

  風魔法   :     〃      風、雷を操る魔法

  光魔法   :光、陽の精神を操る魔法

  闇魔法   :闇、陰の精神を操る魔法

  無属性魔法 :無属性のエネルギーを操る魔法

  神聖魔法  :神の奇跡とされる魔法

  暗黒魔法  :邪神の呪いとされる魔法

  精霊魔法  :自然の精霊の力を借りる魔法

  召喚魔法  :異界の生物を召喚使役する魔法

  空間魔法  :空間や重力を操る魔法



 分厚い魔法書の中では、これらの系統ごとに分類された魔法が挿絵付きで分かりやすく説明されていた。へー、挿絵があるのは便利だな。イメージだけで魔法を発動できる僕にとっては、まさに打ってつけの本だ。……ちょっと試したくなってきたな。



《僕、実験場に戻って魔法の試し撃ちをしてくるよ。ステラも一緒に来る?それともここで待ってる?》


《なんだかイヤな予感がするからステラも付いてくの》


《そういう不吉なフラグ立てるのはやめて!》



 僕は魔法書を片手に実験場へと戻ってきた。この実験場は半球のドーム型をした部屋で、部屋の直径は200、いや300メートル程はありそうだ。師匠の説明によると、部屋の壁には全て対魔法結界が張り巡らされており、魔法の流れ弾が当たったくらいではビクともしないという。



《よーし、ここなら思う存分試し撃ちができそうだな》


《シモン様、それもフラグなの》



 ステラの不吉な指摘をサラリと無視し、僕は魔法の試し撃ちを始める。まずは火魔法だな。これまで使ったことのない魔法を使ってみよう。炎の矢(ファイアアロー)炎の玉(ファイアボール)炎の壁(ファイアウォール)以外の火魔法……あったあった。炎の槍(ファイアランス)か。挿絵見た感じだと炎の矢(ファイアアロー)の矢が槍に変わってるだけのような。その分威力が増すんだろうけど、魔力消費はちょっと多くなりそうだな。よーし、とにかく使ってみよう。



炎の槍(ファイアランス)!」



ゴウッ……チュドォォォォン!



 僕の指先から発射された青白く輝く槍が実験室の壁にぶち当たり、轟音と共に部屋全体が大きく振動する。壁に当たった炎の槍(ファイアランス)を中心として、激しく燃え盛る火焔が周辺に広がり、溶けた鉱物のような臭いが部屋に満ちていく。



《うわああ!?対魔法結界なんか張られてないじゃないか!師匠の嘘つき!》


《ううん、確かに結界は張られていたの。単にシモン様の魔法が強力過ぎただけなの》


《えっ?》


《シモン様の今のステータスは普通の人間の3万倍。普通に魔法を使ったらこうなって当然なの》


《ああ、なるほど……って、分かってるなら最初からそう言ってよ!》



 参ったな、これじゃ迂闊に魔法なんか使えないぞ。

 いや、待てよ?僕の魔法の威力が常人の3万倍だっていうのなら、魔法に注ぎ込む魔力を3万分の1に減らせばちょうど人並みになるんじゃなかろうか。極微量の魔力を制御するのは難しそうだけど、こちとら魔力操作の精度も常人の3万倍だからな!

 ……くそっ、自分で言ってて泣きたくなってきた。



シュッ……バシュッ!



 消費魔力を調整して放った二度目の炎の槍(ファイアランス)は上手くいった。弾速も威力もいい感じに()()()()で、対魔法結界が張られた壁に当たるとあっさり消滅していった。



《よっしゃ!そうだよ、こういうのが普通の魔法なんだよ!》


()()()()()()()()()が普通なの?》


《……そこは気にしない方向で》



 よーし、この勢いで本に載ってる他の魔法もどんどん試してみよう!まずは火魔法からコンプリートするか。えーと炎の槍(ファイアランス)の次は──




◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 魔法の試し撃ちに夢中になっているところに、師匠がやってきた。



「ぼそぼそ……(おーい、そろそろ晩飯の時間じゃぞい)」


「えっ、もうそんな時間!?」


《シモン様がここで試し撃ちを始めてからもう5時間は経ってるの》


「そんなに!?大変だ、食事の支度をしなきゃ!」



 慌てて本を収納の指輪にしまった僕はキッチンに駆け込み、簡単な料理を手早く作って食堂のテーブルに並べていく。肉とピーマン炒めものと、ベーコンと茸のオムレツの2品だけ。慌てて作ったから味にはイマイチ自信がないけど、ステラ対策でとにかく量だけは多めに。



「いただきまーす!」


「う……美味い!美味過ぎる!どうやったらあの材料でこれ程の味を出せるんじゃ!?」


《うまっ!うまっ!シモン様の料理は最高なのー!》



 料理を口にした途端、二人が大絶賛している。

 うん、自分で食べてみても美味しい。というか、不自然なほどに美味し過ぎる。大した素材は使ってないし、短時間で適当に作った手抜き料理なんだけどな。料理レベル24ってつくづくとんでもないわ。



「ぼそぼそ……ぼそぼそ……(そういえば、書庫で読書するよう言っておいた筈じゃが、お主実験場で何をしておったんじゃ?)」


「ああ、この本を読んでたら、実際に試してみたくなっちゃいまして」



 収納の指輪から本を取り出してみせる。



「ぼそぼそ……ぼそぼそ……(ほっほ、魔法書を読んだだけ魔法を使えるようになるのなら誰も苦労せんわい)」


「え?この本に載ってる魔法は一通り使えましたよ?」


「ぼそ……ぼそ……(え?…………これ全部試したの?)」



 正確には全部じゃない。

 暗黒魔法は呪う相手がいないと使いようがない。

 精霊魔法を使うには、まず精霊を視るための訓練をしなければならない。

 召喚魔法は変なものを呼び出してしまうリスクがある。

 この3系統だけは、他人様の家で初心者が軽々しく使えるような代物じゃなかった。



「あ、そうだ。明日からの修行に備えて読んでおくべき本が他にあったら、タイトルだけでも教えてくれませんか。今夜のうちに予習しておきたいので」


「ぼそぼそ……(い、いや。今日はもう休んだ方がええんじゃないかのう…………)」



 そう言い残すと、師匠はふらふらと食堂から出ていった。

 もう寝ろって、いくらなんでも早過ぎない?まだ魔力には全然余裕があるし、もっと色々試してみたかったんだけどなー。



《シモン様、寝る前にステータスチェックなの》


《え?でも、今日は料理以外にレベル上がってないよね?》



 今日はたくさん魔法を使ったのに、技能レベルアップのメッセージが一切出てこなかったので、ちょっと不思議に感じてたんだよな。いや、あんなもの出てこないに越したことはないんだけど。



《ううん、シモン様のお勉強の邪魔にならないよう、一時的にメッセージ機能をOFFにしてただけなの》


《へ?……………………ちょっと待って、まさか!?》


《ご想像の通りなの。メッセージが表示されなかっただけで、レベルはしっかりがっつり上がってるのー》




─────────────────────

名 前:シモン

種 族:人間(聖人)

性 別:男

年 齢:18


生命力:12 (+303502)

魔 力:14 (+303564)


筋 力:11 (+303607)

体 力:12 (+303561)

精神力:17 (+303494)

知 能:12 (+303518)

感 覚:15 (+303543)

器用度:16 (+303502)

敏捷度:14 (+303529)


祝 福:聖人の奇跡 星の銀貨


技 能:仙術Lv5

    火魔法Lv53 水魔法Lv52 土魔法Lv51 風魔法Lv58

    光魔法Lv45 闇魔法Lv41 無属性魔法Lv48

    神聖魔法Lv35 空間魔法Lv25

    剣技Lv9 槍技Lv1 弓技Lv6 格闘技Lv6 盾技Lv1

    物理耐性Lv4 石化耐性Lv16

    魅了耐性Lv16 混乱耐性Lv16 恐怖耐性Lv16

    狂化耐性Lv10 毒耐性Lv20 麻痺耐性Lv16

    気配探知Lv18 危険感知Lv12 隠密Lv10 解体Lv8

    地図作成Lv14 罠解除Lv7 開錠Lv5

    料理Lv24 交渉Lv2 推理Lv4


称 号:悪魔殺し

─────────────────────




《なにこのレベル!?いやいやいやいや、アタマおかしいでしょ!》



 基本四属性魔法の技能レベルがまさかのオール50越え!?本を読んでちょっと試しただけでこれとか、少しは自重しろ僕の身体!

 確か、師匠の空間魔法レベル17が人類最高の技能レベルだったはずなのに、このレベルはいくらなんでも突き抜け過ぎじゃないの!?



《ぶっちぎりで世界最強の魔術師なの。たったの1日で師匠を越えちゃったの》


《そういうこと言うな!弟子として気まずいわ!》

評価してくださった読者様に心からの感謝を。

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