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聖人シモンと星の銀貨  作者: 日比野暮
第1章 聖人シモンと魔界の脅威
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第1章 24話 旅立ち

 迷宮探索から帰還した翌日、僕たちは依頼を求める冒険者で賑わう朝早い時間を避け、少し日が高く昇ってから冒険者ギルドにやってきた。ギルドの中は閑散としており、受付のお姉さんを除けばテーブルで朝から酒を飲んでいる2、3人の冒険者くらいしかいなかった。



「大賢者様の御一行ですね。お待ちしておりました。案内いたします」



 僕たちの姿を見た受付さんがすぐに中へ案内してくれた。応接間に通されると、そこにはギルドマスターであるガラムさんの他にもいくつか見知った顔が並んでいる。



「オールストン伯爵にグローヴ子爵、それにセルマ様まで!なんでこんなところに?」


「魔界の(ゲート)といったら国が動くほどの大問題だ。近隣に所領をもつ我々が何もせず手を拱いているわけにはいかないんだよ」


「我々は3日ほど前から我がパナシエの別荘で待機していたのだ。昨夜遅く、迷宮の入口を警備している衛兵から君らの帰還を知らされ、今日あたり報告に来るものと思いここで待っておったのだ」


「お二人とも、領地を空けてしまって大丈夫なんですか?」


「我が領にはエルネスト君に来てもらっている。バーナードもいるし心配はないよ」


「ウチも次男を残してきたから問題ない。そんな事よりも早く聞かせてくれないか。魔界の(ゲート)はどうなったのだ?」



 オールストン卿の隣に控えるセルマ様も早く話を聞きたくてうずうずしている様だ。



「それでは、僭越ながら私の口から報告させていただこう」



 皆を代表してノーマンさんが事のあらましを端的かつ分かりやすく説明していく。第13階層で隠し部屋を発見したこと。中には魔界の(ゲート)があり、そこを通り抜けようとした巨大な悪魔がつかえていたこと。その悪魔はフォルゴーレと名乗ったこと。悪魔との戦いの末、撃退して門を封鎖したこと。



「──というわけで、魔界の(ゲート)の危機は去ったものと考えていいだろう」


「おおっ、素晴らしい!」


「流石は大賢者様と認定冒険者のパーティだ!」



 報告を聞いたオールストン伯爵とグローヴ子爵が喝采をあげ、その横でセルマ様も安堵の表情を浮かべている。



「依頼を達成できたのはシモンのお陰」


「ミリアムの言う通りだ。シモンがいなけりゃ、俺たちゃ一人残らず呪いの餌食になってただろうよ」


「ほう、コイツそんなに活躍したのか……只のホラ吹きだと思ってたが、こりゃあ認定証が1枚必要になるかな?」



 ミリアムさんとビリーさんの発言を受け、ギルドマスターのガラムさんが腕組みをして考え始める。

 しかし、それに大賢者様が待ったをかけた。



「ガラムよ、認定証の話は少し待ってもらえんかの」


「そりゃ大賢者様の仰せとあらば考慮しますが、理由を聞かせてもらってもいいですかね?」


「シモンはまだ身体強化を完全にはモノにしておらん。悪魔との戦いでも、力が暴走しかけておったからの」


「ほほう……しかし、それで悪魔を撃退するとは、逆に末恐ろしい」


「才能は確かじゃが、今はまだまだ未熟ということじゃ。故に、暫くワシが預かって鍛えてやろうと思っておる」


「分かりました。そういう事なら、認定証の件は据え置かせてもらいましょう」



 ガラムさんは納得したようにひとつ相槌を打つと、カウンターの下から大きめの皮袋を5袋ほど取り出した。



「これが今回の依頼の報酬だ。一人あたり金貨200枚だな」


「ききき、金貨200枚!??」



 なんという大金!冒険者になってからは随分と金回りが良くなってるけど、それでもこんな大金を手にするのは初めてだ。どうしようこれ。持ち歩くにはちょっと重すぎるよな……あ、収納の指輪にしまっておけばいいのか。



「私はギルドの口座に預金するわ」


「私も」



 口座預金!そういうのもあるのか。


 ビリーさんはお金を受け取るとさっさと退散していった。ビリーさん曰く「俺は貴族様の前だと息が詰まるんだよ」とのこと。これからパーティの仲間と一緒にまた迷宮に潜るそうだ。

 他の4人もそれぞれ出立の準備を始めている。グウェンさんは一旦モルトに戻るそうだ。ノーマンさんとミリアムさんの拠点は王都だそうだから、ここから乗合馬車で1週間程度の道のりだ。

 短い間だったけど一緒に迷宮を探索した仲間たちだ。こうして散り散りになるのは少し寂しいな。



「あ、そうだ。この際だから収納しっぱなしの魔物を買い取ってもらおうかな」


「おう、それなら向こうの引き取り口に行ってくれ」


「我々も見せてもらっていいかい?シモン君がどんな魔物を狩ったのか興味がある」


「ええ、構いませんよ」



 伯爵夫妻と子爵を連れて引き取り口に行ってみると、そこにいたのは火蜥蜴(ファイアリザード)の買い取り時にお世話になった査定担当の男性だった。



「ようこそおいでくださいました。本日はどのような素材をお売りに?」


「いやー今回は大したことないですよ。迷宮探索の訓練中に狩った、浅い階層の魔物ばかりですから」



 そう断ってから、収納の指輪の肥やしになっていた魔物の死体を査定担当さんの前に並べていく。オークが21体、ハイ・オークが1体、オーガが8体、ハイ・オーガが1体、ジャイアント・スパイダーが3体──



「ちょっと、ちょっと待ってください。なんですかこの量は……」



 ハンカチで冷や汗を拭う査定担当さんの前には魔物の死体が山となって積まれ、伯爵夫妻と子爵様は度肝を抜かれたような表情を浮かべている。しまった、流石にやり過ぎたか……。収納の指輪にいくらでも放り込んでおけるから、ついつい狩り過ぎちゃうんだよな。

 他にゴブリン、コボルド、ケイブバットといった魔物も狩ったけど、こいつ等からは売れる素材が採れないので、死体はそのまま打ち捨ててきた。今頃は他の魔物のエサになっているだろう



「オークは肉と睾丸、オーガは皮と牙、ジャイアントスパイダーは毒牙と糸袋が買い取り対象の素材となります。今回は上位種もお持ちいただいておりますが、そちらは割高で引き取らせていただきます」



 オーク1匹あたりから採れる食肉は30キロ程度。買い取り相場はキロあたり銀貨1枚なので、21匹分630キロで金貨6枚と銀貨30枚。

 オークの睾丸はひとつあたり銀貨3枚。21匹分の睾丸42個の買取値は金貨1枚と銀貨26枚。

 オーガの皮は安価な皮製防具の材料になるそうで、1匹分の皮が銀貨10枚。これが8匹分で銀貨80枚。

 オーガの牙は防具のスパイクとして利用される。1匹分の牙が銀貨8枚。こちらも8匹分で銀貨64枚。

 ジャイアントスパイダーの毒牙と糸袋は魔術の触媒に使用される。それぞれ1匹分で銀貨3枚と銀貨5枚。3匹分の合計額は銀貨24枚。

 ハイ・オークとハイ・オーガは下位種の2倍の価格で買い取ってもらえた。こちらは合算で金貨1枚と銀貨8枚。



「──というわけで、合計買取金額は金貨10枚と銀貨32枚。解体手数料は買取金額の1割という規定ですが、今回は大量の素材をお売りいただいたので、サービスで端数のみといたしましょう。お渡しする金額は、差し引き金貨10枚となります。ご確認くださいませ」



 そう言って、査定担当さんから金貨10枚が手渡される。凄いなー、今日だけで金貨210枚の収入だ。狩人をやってた頃の何年分にあたるんだろうか。



「ぼそぼそ……ごしょごしょ……(さて、これでひと段落じゃな。そろそろ出立するとしようかの)」


「あ、その前に武器を調達してきてもいいですか?僕、剣が折れちゃったので」


「ぼそぼそ……ぼそぼそ……(武器なら向こうで調達したほうが良かろう)」


「向こう?そういえば大事なことを聞いてなかった。大賢者様の拠点ってどこにあるんです?」


「ぼそっ……(王都じゃよ)」



 うわー、大賢者様の拠点も王都か!恥ずかしながら、僕は生まれてこのかた一度も王都に行ったことがない。どんな場所なんだろう。人がいっぱいいるんだろうな。


 ワクワクしている僕の傍で、オールストン伯爵が溜息をつく。



「まさかシモン君が大賢者様のお弟子さんになってしまうとはなあ。モルトまで一緒に帰ろうと思っていたのだが」


「修行を終えたら、またこっちに戻ってきますよ。そしたら必ず伯爵様のお屋敷まで挨拶に伺います」


「きっとよ、シモン君。それまでに、これまでの御礼をちゃんと用意しておくから」


「いやいや、どうかお気遣いなく、セルマ様」


「モルトに戻る時は、私の屋敷にも立ち寄ってくれよ。家を挙げて歓待しよう」


「はい、必ず立ち寄らせていただきます、子爵様」



 伯爵夫妻も子爵様も、とても良い人だった。しばらく会えなくなると思うと寂しいな。



「私を助けてくれるって約束を忘れないでね。待ってるわ」


「はい。なるべく早くモルトに戻れるよう頑張ります。だから、絶対に一人で無理をしないでくださいね」



 僕は最後にグウェンさんと握手を交わし、王都に向かう乗合馬車の乗り場へと向かった。王都に着いたら、大賢者様の弟子としての新しい生活が始まる。グウェンさんとの約束を果たすためにも、早く修行を終えて一人前にならなきゃいけないな。

 これもひとつの人生の節目ってやつなんだろう。不安もあるけれど、それ以上の期待が僕の胸を満たしている。さあ、いざ王都へ!






《──その前に》


《ん?急にどうしたのステラ?》


《恒例のステータスチェックなのー!》


《…………えっ?》



 ちょ、ちょっと待って。今回僕は何をした?

 魔界の門を封鎖したのはフォルゴーレだからノーカウントのはず。そのフォルゴーレも片手を失っただけでまだ生きてるから多分ノーカウント。つまり、ステータスが上がる要素なんか無いはずだ!



《シモン様は悪魔の腕が爆発するのを見事に止めてみせたの》


《あっ…………》



 そういやそんな事をしたような…………ま、マズい!これはマズいぞ!



《フォルゴーレの腕があのまま爆発してたらパナシエ地域全体が灰燼に帰すところだったの。この地域に暮らす全ての人がシモン様によって救われたことになるの》


《待て!待ってくれ!》


《このパナシエの町だけでも人口は約15,000人。この数には一時的な滞在者も含まれてるの》


《い、いちまん…………!?》



 駄目だ……これは駄目なやつだ…………。



《さらに周辺で暮らす人々や森に生きる動物達も含めると、今回シモン様が救った命はなんと30,249!天晴なのー!》



 ステラが空中をふわふわと漂いながら大量の紙吹雪を辺りに振り撒く。

 おい、そんな物いつ用意した!?



《そして、お待ちかねのステータスがこちらなの!》


《嫌だあああああ!見たくないいいいいい!!》




─────────────────────

名 前:シモン

種 族:人間(聖人)

性 別:男

年 齢:18


生命力:12 (+303502)

魔 力:14 (+303564)


筋 力:11 (+303607)

体 力:12 (+303561)

精神力:17 (+303494)

知 能:12 (+303518)

感 覚:15 (+303543)

器用度:16 (+303502)

敏捷度:14 (+303529)


祝 福:聖人の奇跡 星の銀貨


技 能:火魔法Lv8 水魔法Lv5 土魔法Lv5 風魔法Lv10

    剣技Lv9 槍技Lv1 弓技Lv6 格闘技Lv6 盾技Lv1

    物理耐性Lv4 石化耐性Lv16

    魅了耐性Lv16 混乱耐性Lv16 恐怖耐性Lv16

    狂化耐性Lv10 毒耐性Lv20 麻痺耐性Lv16

    気配探知Lv18 危険感知Lv12 隠密Lv10 解体Lv8

    地図作成Lv14 罠解除Lv7 開錠Lv5

    料理Lv8 交渉Lv2 推理Lv4


称 号:悪魔殺し

─────────────────────




《さ、さんじゅうまん…………》


《すごいの。ここまでくると、もう完全に人間じゃないの》


《くっ、殺せ!もういっそ殺してくれ!》


《もはや殺しても死なないと思うの》


《そんな馬鹿な話があるかあああああああ!?》

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