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聖人シモンと星の銀貨  作者: 日比野暮
第1章 聖人シモンと魔界の脅威
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第1章 23話 告白

 宿に着いて早々、僕たち3人は食堂で同じテーブルを囲んでいた。



「ぼそぼそ……ぼそ……(さて、話を聞かせてもらおうかの)」


「単刀直入に言うわ。貴方、本当は()()()()()()()使()()()()()()()()()()



 ほらきた!やっぱり気付いてたんだ……。



「それならさっきも言ったじゃないですか。父さんから色々と手ほどきを──」


「ええ、貴方は()()としか言ってないわね」


「うっ……」



 うーん、嘘はつきたくなかったから敢えて誤魔化すような言い方をしてみたんだけど、グウェンさんには勘付かれたか。



「ぼそぼそ……ごしょごしょ……(まあ、お主の魔力の流れを見れば、身体強化なんぞ使っとらんのは丸わかりじゃがの)」


「それに、どんなに身体強化を極めたところで、悪魔の呪いを一瞬で解くなんて真似は不可能よ」


「ぼそぼそ……ごにょごにょ……ひそひそ……(シモンよ、お主は一体何者なのじゃ?どうしても語れないことであれば言わずともよいし、お主が望むなら何を聞かされようとも墓まで持っていくことを誓おう。どうじゃ、儂らに秘密の一端なりとも教えてくれんかの)」


「私達、明日になったらギルドに全てを報告しなきゃならないのよ。ビリーやノーマンが洗いざらい正直に話したら、破格の新人の登場にギルド中が大騒ぎになるのは目に見えてるし、そうなったらギルドは貴方を取り込もうと躍起になる筈よ。──ただ、貴方が話してくれる事情によっては、私たちが庇ってあげられるかもしれない」


「…………お二人には敵わないなあ」



 結局、僕は白旗をあげることにした。この二人には何を隠してもどうせ筒抜けだし、グウェンさんの言う通りギルドへの報告時に口裏を合わせてくれる人がいてくれると助かるのも事実だ。



「分かりました、お二人を信用して打ち明けます。他の人に聞かれたくないので、僕の部屋に行きましょう」



 僕は部屋に二人を呼ぶと、正直に事情を説明した。孤児院の子供を悪魔から守った時に聖人になってしまったこと。神様から解呪と治癒の力を授かったこと。もうひとつの祝福の力によってステータスが異常に上昇していること。そのせいで技能の習得速度が飛躍的に向上していること。暴食の守護天使に取りつかれていること。


 説明を聞いた二人の反応は、いいとこ半信半疑といったところだった。まあ、いきなりこんな話をされて信じるほうが逆にどうかしてる。



《暴食の守護天使って誰の事なの?》


《ステラ以外に誰がいるんだ……あ、二人にステラの姿を見せる事ってできる?》


《お安い御用なのー》



 そう言うと、急にステラの姿が妙に実感を帯びたものになる。



「おお!なんと、このお嬢さんが天使様かの!?」


「嘘じゃなかったのね……」



 初めてステラの姿を見た大賢者様とグウェンさんが固まっている。

 まあ、確かに見た目は神々しい天使そのものだから、その気持ちも分からないではない。でも、この子の場合中身がね……。



「初めましてなの。聖人シモン様の守護天使ステラエルなの」


「ワシはバルタザールという爺ですじゃ」


「私はグウェン。お会いできて嬉しいです」



 歴戦の冒険者である大賢者様とグウェンさんも、天使を見るのは初めてなのだろう。流石に畏まった様子で言葉を交わしている。対して、ステラはいつになくすまし顔だ。おい、何をカッコつけてるんだ。



「シモン様は神の祝福を受けた聖人。そのシモン様と秘密を共有した重みを、二人とも努々忘れてはいけないの」


「分かっております。ワシのこの命に替えても、秘密を守り通しましょうぞ」


「私も同じく」


「では、幾久しく神の御心と共にあらんことを──」



 ステラは最後ににっこりと微笑むと、祝福の言葉を残して存在感を薄れさせていく。どうやら二人の目から姿を消したらしい。

 大賢者様とグウェン様は、天使の顕現に立ち会うという貴重な経験にいたく感動しているようだ。



《シモン様、今のステラはデキる天使っぽかったの!我ながら完璧なの!》


《はいはい。二人の感動が台無しになるから黙っとこうね》



 僕の前では神々しさとか尊さとかいった要素が皆無すぎるんだよなあ、この子。普段から真面目にしていれば、ステラだって随分とイメージが良くなるだろうに。まあ、そうなったらそうなったで少しつまらないような気もするけど。



「ぼそぼそ……ひそひそ……(天使様の姿まで見せられては信じない訳にはいかんのう)」


「悪魔の呪いを簡単に解いてみせたのも納得だわ」


「信じて頂けて何よりです。でも、僕はこんなんですけど、なるべく普通にひっそりと暮らしたいんです」


「ぼそ……(普通に……?)」


「ひっそりと……?」



 すみません、二人揃って「無理じゃない?」みたいな顔をするのはやめてもらえませんか。



「まず、実力を隠し通すのは無理ね。貴方の力は異質過ぎるし、それが新人冒険者とあっては余計に目立つわ。どんなに気を付けたところで、誰かの目に留まるのは避けられない」


「ぼそぼそ……ぼそぼそ……(いっそのこと、ほとぼりが冷めるまで身を隠すべきかもしれんのう。お主、本気でワシの弟子になってみんか?)」


「ええー……」


「ぼそぼそ……ぼそぼそ……(お主の力は人の身にあり得べからざるものじゃ。いずれお主の正体を訝しむ手合いも現れよう。だが、お主に〝大賢者の弟子として身体強化の修練に励んだ〟という背景があれば、いくらか弁解もしやすくなろう)」


「案外いい考えかもしれないわよ。それに、今後もし貴方を無理に取り込もうとする勢力が現れたとしても、大賢者様の後ろ盾があれば無茶はできない筈よ」



 なるほど、身体強化の使い手であれば、僕の怪力や超スピードにも説明がつく。それに、ぽっと出の新人のくせに能力が高いと悪目立ちするけど、〝大賢者様の弟子〟のような万人が認める背景があれば、むしろ強いほうが自然ってことになるもんな。



「でも、大賢者様はあまり弟子を取らないと聞きました。僕なんかが弟子入りしたら、色々とご迷惑なのではありませんか?」


「ぼそぼそ……ぼそぼそ……(なあに、持ちつ持たれつじゃよ。ワシとしても、お主の高い知能が研究の助けになってくれることを期待しておるのじゃ。それを迷惑などと思うものかね)」


「……分かりました。大賢者様のご厚意に甘えさせてもらいます」



 こうして僕はめでたくマッドサイエンティストの助手に……もとい、大賢者様の弟子になることが決まった。明日の朝ギルドへの報告を済ませた後、その足で王都の近くにある大賢者様の研究所に向かうことが簡単に取り決められ、大賢者様はいたく満足した様子で自分の宿に戻っていった。



「あー疲れた……グウェンさん、せっかく食堂にいるんだし、このまま食事にしませんか?僕もう腹ペコです」


「そうね。私もどっと疲れたわ」



 僕らは思い思いの料理を注文して食べ始めた。その横では当然ステラが物凄い勢いでご飯を掻き込んでいる。



「探索中も少し気になってたんだけど、出された料理がどんどん減っていくのって──」


「はい、ステラが猛烈な勢いで食べてます……」



 これだけ凄まじいペースで食糧を消費してるのに、グウェンさんほどの冒険者すら「少し気になってた」程度にしか認識できないんだもんなあ。天使の認識阻害能力って本当に不思議。



《シモン様の夜の営みを隣で見ていても、決して相手に見つかることは無いの》


《なんでそこでシモに振るの!?冗談にしてもタチが悪すぎるよ!》


《やーねー、あくまで例え話なの。どのみちシモン様には縁のない話だから忘れていいの》


《くっ…………人が気にしていることを…………ッ!》



 ステラはそのうち堕天するんじゃないかと思う。うん。



「ひとつ頼みたいことがあるんだけど、いいかしら?」



 葡萄酒を飲んで少し頬を染めたグウェンさんが、唐突に切り出した。



「頼みってなんですか?僕にできる事ならいいんですけど」


「私には人生で成し遂げなければならないことが二つある。そのうちの一つを手伝ってほしいの」



 グウェンさんはそう言って少し間を空ける。



「貴方はこの国に蔓延る人身売買組織の話を聞いたことある?」


「人身売買というと、奴隷商の話ですか?」


「そういう合法的な連中じゃない。もっと下衆な連中よ」



 グウェンさんは苦々しい顔で葡萄酒をもうひと口煽ると、また話を続ける。



「連中は、まず金になりそうな子供を攫うの。金持ちの変態どもに受けが良さそうな、見た目のいい子供をね」


「攫うって、犯罪じゃないですか!?」


「そう、犯罪組織よ。でも、連中には大勢の金持ちがバックに付いてる。衛兵の多くが金で懐柔されているから、決して捕まることはないし、万一捕まったとしても裁きの場に引き出される前に釈放されてしまうの」


「この国にそんな奴らが……」


「連中はずっと昔から、それこそ貴方が生まれるよりずっと前から、この国で悪事を働いてきてるのよ。私が冒険者になったのも、その組織と戦う力を得るため。でも、調べれば調べるほど連中の力は根深さを思い知らされるばかりで、私一人で戦うことにずっと二の足を踏んできた──でも、貴方の助けがあれば、話は大きく変わってくるわ」



 グウェンさんは熱を帯びた瞳で語り続ける。



「分かりました、その組織をやっつければいいんですね?頼まれなくたってやりますよ。よりによって子供を狙うなんて許せません」


「ありがとう。貴方ならそう言ってくれると思ったわ」


「でも、僕はこれから大賢者様に弟子入りする身です。お手伝いできるのは修行が明けてからになるかもしれませんが、それまで待てますか?」


「私は永遠の時を生きるエルフよ。待つことは苦にならないわ」



 子供を狙った人身売買組織!この国にそんな酷い連中がいるなんて知りもしなかった。早いうちになんとかしないと、不幸な子供達がどんどん増えてしまう。グウェンさんは待つと言ってるけど、できるだけ早く修行を終わらせて戻ってこなきゃいけないな。



《ちなみに、その組織はシモン様にとっても個人的な因縁があるの》


《えっ?どういうこと?》


《前々々世のシモン様は、その組織が雇った殺し屋に刺されて殺されたの》


《えっ…………》

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