安息の時間
「魔王?」
「えぇ、自覚はないと思われますが...あなたは王になったのです」
ツバキは真剣な表情に陸也は信じそうになっていたが信じきれはしなかった。
「なんかの手違いじゃないか?あの騎士だってきっとそうだ」
ツバキは口元に手をあて考えていた。それをみた陸也にとってはどう説明するか、納得させるかを考えているようにしか見えない。
「分かりました、私達のことと騎士のこと全て話します。信じてもらえると光栄です」
深く頷いた。陸也にはそれ以外選択肢など存在しない。
「私の名前はツバキ、私達はあなたを守る者です。普段はルードラという世界で暮らしています。こちらから言えば異世界というものに相当しますね」
ーー異世界?本当にそんなものが...ーー
「そして襲ってきた騎士ですがステイルスという集団です。簡単に言うと異世界の国際警察にあたりますね」
「じゃあ俺は警察に追われてたのか?」
「そうなりますね、しかしながらあなたは無罪です。何故襲われたのかは分かりません」
情報が多すぎて頭痛が起こるかと思った陸也だが1つずつ情報を整理することにした。
「さっき私達って言ってたがおま...ツバキ以外に他にもいるのか?」
「はい、あと私も含め5人程護衛に着くつもりです」
「すているす?だったか、そいつらはたった今襲ってくることはないのか?」
「さっき助けを呼んでも誰も出てきませんでしたよね?」
「お、おう」
唐突な質問返しをされて動揺してしまった。
「それはキューブというものの効果で一定空間を別次元に飛ばしてしまいます。なので周りの景色や建物は別次元に反映されますが生きているものは対象以外反映されません」
ツバキの話を聞いた陸也だがぽかーんと口が空いていた。
「えーと、簡単にいうとですねあそこの空間だけ人がいなくなっていたんですよね。それを可能にするのがキューブというものです。キューブは使ったら暫くは使えないはずです」
なるほど、と理解した陸也は自分の空腹に気づいた。時間はもう21時を回ろうとしていた。
「だいたい理解したよ、助けてくれてありがとうな。なんか食べたいものあるか?」
「わ、私はなんでも大丈夫です」
ツバキは初めて口調が崩れた、それを聞いた陸也は少し安心した。
1人暮しの陸也は料理がかなり上手で2人分をすぐ作った。
いただきます、とツバキが食べていた。陸也が気になって見ていたのがツバキに気づかれた。
「すごく美味しいです」
その一言は凄く陸也にとって嬉しいものだった。自分以外に出したことがなかったからだ。
食べている途中、陸也は気になったことがあった。
「今日は異世界に帰るんだよな?」
「いえ、陸也様が心配なのでここの護衛をしたいと思っています」
予想をしてなかった回答をされて箸を落としてしまった。
「いやそれはマズイんじゃないか?」
「言っておきますがこんな身なりですがあなたより年上です。生まれきてから成長していないので」
「いやそういう意味では...」
「私はここの屋上で見張りをしていますので休眠を取ってください」
「それは流石に...」
「これは絶対です」
ツバキの圧に押されて布団の中に入っている陸也がいた。
陸也にはまだ分からないことが多くて混乱していた。寝て起きればいつもの日常が戻っていると淡い期待をして陸也は目を閉じた。
「おーーー」
「おーーーーい」
「おーーーーい!!」
意識が朦朧とするが目をこすりながら目を開けた。すると謎の美少女が立っていた。