ごはんがたべたい女の子
パーカーにスカートっていいですよね。
しばらく真っすぐの道が続いて、遠目に何か見える。
<闇魔法レベル1>に絶望していた俺は、とりあえず食料だとか寝る場所だとかが欲しかったのだ。後ろは行き止まりだったので、前へ進むしかなかった。
「あれ……人が……寝てる?」
緑色の塊。
緑のパーカーを着た人間が、うつぶせに、足をカエルみたいに折り曲げて寝ている。
近づいてみると、女の子だ。さすがにこの子が魔物ってことはないよな……
「もしもーし、大丈夫ですか?」
肩をたたくと、女の子が起きたようだ。
「ううん……」
目をこすりながら、女の子が起き上がる。
少し垂れ目の、かわいい感じの子。肩までの黒髪が寝ていたせいかぼさぼさになっている。
「こんな通路の真ん中で寝てるとあぶないですよ」
だけど、別に車が通るわけじゃない。魔物が来たら、真ん中でも隅っこでも一緒だな、と言ってから気付いた。
「……うわああああああああん!!!!」
抱きつかれた。やわらかい。何がとは言わないけど。結構大きい。
なんとかなだめて話を聞くと、彼女も白い部屋から女神に転移させられたみたいだ。ケイという名前だった。
「ええと、ケイは、どんなスキルもらったの?」
「ごはん……」
「……え?」
「ごはん、です。」
全然意味がわからない。何の話?
「ごはんが食べられないと困るから、ごはんを出せるスキルにしたんです……」
そんなスキル、女神の見せてくれたスキルブックにあったっけ。
またケイが泣きそうになっている。
「……あ、ええと……いいんじゃないかな。」
そういえば、ハエって何を食べるんだろう。腐ったものとかかな。いや、食べたくないけど。普通のごはん食べたいけど。
そういえば、おなかすいてきたな。
「あの、俺もおなかすいてきたし、出してくれると嬉しいなぁ。」
ケイにそう言ってみる。
「……う……うう……うううわああああああああん!!!」
また泣きながら抱きつかれた。やっぱり大きい。それに柔らかい。
やっぱりまた宥めてから、スキルを使ってもらうことにした。
「……ハエが飛んでる……」
ケイの手のひらから出た蠅が、しばらくぐるぐるケイのまわりをまわり、そのまま黒い粉みたいになって消えた。
「……だから、だから、一体なんなんだよ! これは!」
俺は天に向かって……いや、天井に向かって叫んだ。
ハエって馬鹿なほうが長生きするらしいよ!
女神様って長生きだよね!
次話投稿予定>>2016/04/30 21:00 [やっと食べられる!……え?まって? タベラレル?]
乞うご期待!