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秋の小詩二編
「秋風」
透明な風が空から降りて
稲穂をくすぐり駆けてゆく
雲はうろこやひつじのかたち
夕日が雲のあいだに沈んでゆく
ピンク色に染まる空
茜色の太陽
今日の昼間にさようなら
涼しい夜がやって来る
虫がリロリロチッチと鳴いている
夜に読みふけっていた小説を閉じ
しばしの間物思いにふける
「誕生月」
誕生月が今日終わる
母がおなかを痛めて
生んでくれたこの季節
わたしが生まれたその日には
台風一過の青空が広がっていたという
何を始めるにも
涼しくてちょうど良い
そんな季節に生まれたことを
うれしく思う




