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詩人は歌う
歩いていると
うしろから付いてきた春風に
これまでの遥かな旅路を思う
空にまで届きそうな山を見た
どこまでも続く水平線の海を見た
にぎやかな街を見た
こじんまりとして、気のいい田舎を見た
どこが一番素晴らしいかって
どこもそれぞれ最高さ
一杯の酒とおいしい食事でもてなされた日には
その礼に民話・神話の歌を聞かせる
子どもも年よりも集まって
俺の歌に耳を澄ます
分かっているさ
そういうときには、おそらく
こっそりと彼らの祖先もやって来ているんだ
目には見えない彼らにも敬意を払い
その土地で育まれた話を
できるだけそのままに伝えるのが
俺の仕事だ
さあ声高らかに歌おう
偉大なる祖先の残した
伝説の始まりだ