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わたしは、誰?
作家のわたしのなかには
幼い男の子の「ぼく」も
思春期の「オレ」「ボク」「俺」「僕」も
とらえどころのない人間ではないものでさえ表す
「わたし」「私」「わたくし」「あたくし」も
ひょうきんな「おいら」も「わて」も
現れては、作品にあしあとを残していく
詩人のわたしになると、一人称はもっと広がりをみせて
余白の中にそれを込めて
文のなかには誰も出てこない
ナニモノか、そのものの
言葉というツールでは
とてもとても表しにくい
たぶん「わたし」がいる
わたしは見て聴いて
わたしは食べて匂いをかいで
わたしは触って
感じたことに
できるだけ、純粋になる
そのわたしというカラダのうしろの
脳内電流が示す
わたしという個人と
外側の一切の挙動との輪舞を描く
ゴミだと思う気持ちを下降
美しいと思う気持ちを上昇
そのくらいシンプルな気持ちを、
こころの奥から流れてきた「感情」を描く
あなたは誰
その前に
わたしは、誰?