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大学暮らしと、朝日。

 ブラインドを指で押し下げるとこれでもかってほどの日の光が入ってくる。

 ここは部活棟二階の隅っこにある部室。普段はまったく日のささないこの部室の窓も、何時もこの時間だけは講義棟と講義棟の間から太陽が覗き込む。朝だ。

 目覚めのコーヒーを準備しながら、朝日を利用して身支度を整える。部室暮らしコウタの朝は早い。

 コウタがこの部室に住み始めたのは一週間前ほどのこと。バイトをしていた1年のころ、全く単位を取得していないのが親にバレてから仕送りが止まったのが原因だ。

 心を入れ替えて学業に専念するべくバイトを辞めようとすると、働いていた職場がマズかったのか辞めさせてくれず、ほとんど逃げ出すように辞表を置いてくると何処からの繋がりがヤクザがアパートを襲撃してきた。

 アパートに戻るわけにもいかず、かといって転がり込める友人はいないため、仕方なしに1年時幽霊部員として入籍していた「国際茶道部」なる謎の団体の部室に飛び込んだのが一週間前の話。

 国際茶道部なんていかにも大学生が好きそうな、妙ちきりんな団体名だと思う。実際活動しているのなんて数名で、その活動家たちだって他の大学の茶道部と遊ぶために参加しているだけだ。こんな俗世に染まった茶道部を、かの千利休がみたら大いに嘆き悲しむことだろう。

 そんなこんなで転がり込んだ大学の部活棟、これが案外住みやすいのである。

 部活棟なんていっても少し洒落た見た目をしているだけのコンクリートの箱でしかなく、それでも電気は来ているので携帯の充電なんかにも困らない。

 シャワーは近くの体育館に行けば24時間使い放題だ。料理を作りたいときは、新歓用のホットプレートがゼミ室に放置してあるから使える。コーヒーだって教授の部屋から盗み放題である。

 唯一の懸念は周囲からの視線だったが、そこはこのマンモス大学であるから、コウタ1人の存在ごとき難なく薄めてくれる。波乱万丈だがどこか目立たない男、それが主人公である西村コウタの人となりだ。

 電気ケトルのスイッチが自動的に切れる、お湯が沸いたのだ。誰の趣味か分からないが、とにかく奇抜なデザインをしたマグカップにドリップコーヒーを組み立て回しながらお湯を注ぐ。回すことにはあまり意味がないとコウタは思っているが、大学の唯一の親友がよくこんな風にコーヒーを淹れてくれるのを真似ている。

 香り立つブラックを一口飲んで、むせ返る。なぜ寒い日の温かいものは気管に入るんだろうか、この題で卒論を書こうかとコウタは考える。考えながら、大学に入ってから飲めるようになったブラックを猫舌でチビチビ飲んでゆく。

 灯油ストーブに火をいれて、窓から徐々にフェードアウトしてゆく太陽をみながら英語の課題を終わらせる。今日も1日が始まる。

初投稿ですので、生暖かい目で見てください。

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