エピローグ
その人との出会い、それは僕が25歳の時だった。
6月の梅雨晴れた日、先祖の墓参りへ行った。墓参りなんてそれまでは熱心にした事がなかった。行ったとしても盆と正月くらいで、それすらも面倒だと感じる事が多かった。だけど友人の影響を受けて、先祖を大切にしなくてはという気持ちでこの時も行ったんだと思う。
何でそんな事してるかって言うと友達の影響を受けたのがきっかけだった。その当時週末に運動不足の解消とストレス発散のためしていたフットサル。その仲間の一人、真太郎が良く墓参りに行っていたのだ。
毎月毎月、足繁く通っていたので気になって聞いてみたところ、細木数子と言う占い師の影響と言う事らしい。僕も本を読んでみたりして多少なりとも共感出来る部分があったので、墓参りは行う事にし毎月一回は犬山へと出向いていた。
そうやって何カ月か繰り返した後の墓参りの事だ。一通りの掃除を終えた後に、ふと先祖達の名が刻まれた墓標に目をやった。
武志
ふみこ
武次郎
義弘
武志、ふみこは僕の祖父母の名前だ。
「武次郎と義弘は誰だろう?」
もう少し詳しく見てみる。
武次郎 享年 62歳 命日 昭和26年・・・
「顔も見た事ないけど、ひいおじいさんだったかな?」
義弘 享年24歳 命日 昭和19年6月16日。
「誰だろう???」
ちょうどこの時が6月だった事や、この時の自分の年と近かった事もあり記憶して家に帰った。
その後夕食時、父親に気になったその人の事を聞いてみた。
「お父さん、お墓に義弘って人の名前があったんだけど誰?」
「あ〜ぁ、それはじいさんの弟だぞ」
「おじいさんって弟がいたの?」
「詳しくは知らないが戦争で南方へ行って亡くなったらしいぞ」
ちょっと衝撃を受けた。祖父に弟がいた事も知らなかったし、僕とほぼ変わらない年に戦争へ行って亡くなっている。
今の自分と言えば週末になればフットサルをし、その帰りは仲間と街に出て良く飲み行ったりしている。そんな風に人生を楽しんでいる時に大叔父は戦争へ行って亡くなった・・・
その年の終戦記念日にその人の為と思って墓参りをした。だけどその後なぜだか分からないが、その人の事は記憶から遠ざけてしまっていた。