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リーズ提督9話

 ウェンデス王国に仕えて、初めての評定が行われる。

 その為に登城していた。

 その途中、従者を何人も連れ、派手な服装のおっさんが、リーズに声をかけてきた。

 自分自身が服装に関して無頓着であるため、このおっさんのセンスについてとやかく言える筋合いはないのだが、はっきりいって悪趣味である。

 ダチョウを彷彿させるふっくらな感じの黄金の服に、なんの毛か知らないが紫の羽毛のハット。

 ウェンデスでは、こんな服装が流行ってるんだなっとある意味関心していた。


「リーズだな?」


 初対面に尊大な態度を取る以上、かなり上の立場に違いない。

 ボクは一礼する。


「ふん、ぱっとせぬ男だ」


 あなたの奇抜なファッションに比べれば誰でもぱっとしなくなりますよ。

 陛下派との王弟派ともわからないこの男に悪い印象をもたれぬように、何も反応を見せずに頭を垂れ続けていた。


「お前が旗艦に突撃してきた命知らずに相違ないのだな?」


「………さようでございます」


「あのような無謀極まりない策、正気の沙汰とも思えぬ。 軍艦というものは高いのだ。 それを念頭に置いてウェンデス王国に仕えるのだな!」


 まあ、ボクはウェンデスの旗艦を沈めたのだから、その関連についてウェンデスの人達に恨まれるのは覚悟している。

 このおっさんもその口だろう。


「お前の出自は?」


「ファラスにて貿易によって商いをしている家でございます」


「ふん、小汚い商人ふぜいか。 己の利にのみしか動かず、義というものを知らぬあの者どもがお前の一族か」


「はい…」


 よく舌の回る男だ。


「神聖なる評定の場で物を売り付けようという愚かな行為をするなよ、商人」


 わっはっはっはっは


 と笑いながら言いたい事を言うだけ言って去って行った。

 変な奴だと思っていた矢先、また声をかけられた。


「君は彼にとって恥をかかされた男だからね。 ああいうふうに辛く当たるのは仕方ないよ」


 黒い鎧をつけた女がそういってきた。

 赤い髪は肩までかかり、背中の大剣が妙に印象的な女性だった。


「はじめまして、リーズ殿。 私はセレスといいます」


「リーズです」


 セレスは握手を求めてきた。

 はて、赤い髪のセレス……。

 あ、ひょっとして…。


「戦場を駆ける朱い風と言われたセレス殿?」


「あら、ファラス攻略戦で唯一の黒星を味わせたリーズ殿に知っていただけるとは光栄ですわ」


 機械技術が特化したウェンデス軍に置いて、自身が最前線に立ち、シャアプル率いる騎士団を破った女傑。

 どんな筋肉マッチョの大女かと思えば…。

 本当にどこにでもいる娘じゃないか。

 驚いた。


「何を意外そうな顔をしているんです?」


「い、いや…なんでもないです」


「それでは私は先に登城させていただきますね」

 

 そういってセレスは、城に向かっていった。

 さて、ボクもぼーっとしている場合ではない。

 ボクはウェンデス王国にとっては1番の新参者。

 大胆にも遅れてわざわざ敵を作らなくてもいい。

 どこの世界も新参には厳しい目を向けられるのは常。

 わざわざそんな下らないことで評価を落とすのも損なだけである。

 城の門番がボクを睨んでいる。


「リーズというものです。 王の招集により、登城いたしました」


 そういうと門番の態度が一変した。



「あ、話は聞いております。 皆様、評定の間に集まっておられます。 どうぞ、中へ……」


 どうぞ、中へと言われても城の中については何も知らないんだがな……。

 つい先日まで敵国の将兵が敵国の城の内情を知っているわけがない。

 逆に知っていたらそれはそれで後々不安だ。


「で、評定の間とやらはどちらですか?」


「はい。 この先、7つ目の上階に上がる階段を上り、左手に進みますとまた上階にある階段がありますのでそれを上り、右から4番目の通路を直進してその奥の階段を上ると評定の間です」


「………………」


 まあ、予想通り複雑難解な造りになっているわけだ。

 王城だからな。

 単純な造りだと敵が城になだれ込んだ時、あっというまに占拠されるだろうし、王城としては複雑難解な造りというのは常套な手段だ。

 が、新参にとってみればただの試練でしかない。

 はっきり言ってまず間違えなく迷うだろう。

 こんな時は後続に先導させて、着いていくのが正解だろう。

 そう思った矢先、白いフードを被った老人が登城してきた。

 何食わぬ顔でその老人に先を歩かせ、後ろから着いていく。

 老人を見失わないように配慮しながら改めて城の配置を頭にいれながら歩いていた。


 本当に迷路だな。

 その老人が、やがて扉の前で立ち止まりその扉をノックした。


「姫さま、爺でございます。 お勉強の時間ですじゃ」

 

 …………………。

 うん、状況の整理が必要だな。

 あの白いフードの老人は評定出席者じゃないということが推察される。

 そしてここはどう考えたところで評定の間ではないというのも、現時点で把握できる。

 それらの情報を組み合わせて導き出された答えは……。

 迷った。

 よし、落ち着こう。

 まだこの状況を打破する方法はあるはずだ。

 ここは仮にも王城。 しかも昼間。

 王城仕えの衛兵やら女官やら掃除夫やらがいるはずである。

 その者に道を聞くなり、連れていってもらうなりすればいい。

 というか、新参者が迷う事くらい念頭に置き、最初位は案内の者なりを付けるのが普通ではないか。

 ああ、なるほど。

 これは王弟派の嫌がらせに違いない。

 こんな低俗な嫌がらせをして何が楽しいんだか。

 とか、葛藤しているところ…

 人だ。

 小剣を携えたまだ10代前半位の少女がこちらがわに向かって歩いて来た。

 顔形が整った、金髪の美少女。

 まあ、どっかのウェンデス貴族の娘か何かでじゃじゃ馬娘が総じて、士官したとかいう感じであろう。

 もしくは行儀見習いの娘といったところか…。

 等と勝手な解釈をして、話しかけた。


「あの、すみません」


「え?」


「実は初めて登城したはいいんですが、見事に迷ってしまって…」


「登城? ……ああ、評定の出席者ですか」


「はい、それでよろしければ評定の間まで案内願えないでしょうか?」


 少女は最初、キョトンとしていたがやがて頷いた。


「ありがとうございます」


 少女の先導を得て、歩き始める。


「外国の方なんですね」


「ええ、ファラス出身です」


「え? ファラスって私たちの国が滅ぼした……」


「そうですね」


「ご、ごめんなさい」


「お嬢さんが謝る事はないですよ。 どんな理由でウェンデスがファラスを攻めたかという理由もあらかた察知していますし、それについて前の主君に何度もその危険性を示唆しても取り扱わず、防戦準備を怠った結果ですから……」


「そうなんですか。 よくわからないですけど…」


「まあ、お嬢さんが気に止む必要はないということです 。私たちファラスは負けましたが、それは運命というものですから」


「すごくアッサリしてるんですね」


「結果は結果です。 どんなにあがいても過去は変わりません。 ならば新たな未来を模索することに全神経を使えばいいだけですからね」


「変わってますね。 私の回りは、人によっては過去の屈辱を晴らすために行動したり、先祖の過去の功績を讃え、誇らしげに語る人もいるのに」


「過去にこだわって前に進めなかった人達をボクは見てきましたから。 その虚しさをボクは知っているだけですよ」


「虚しさ…ですか」


「ボクは幸いその虚しさに気付くことができた。 ただそれだけの差です」


「そうなんですか」


 少女はふと思い出したように言った。


「そういえばファラスにはすごい人がいるそうですね。 どんな方ですか?」


「……さあ? だれのことですか? 名前を聞けばわかると思うのですが」


「名前は聞かなかったです。 ただウェンデスではその人を称賛する人と、敵意をむきだしにしている人に別れていますが」


「誰だろう。 ボクはただ一介の軍人にすぎないので、ピンと来ないですが……。 お嬢さんは、どっちよりの人なんですか?」


「そうですね。 私の嫌いな人を破った人ですから称賛の方ですね」


 破った?


「ところで、貴方の名前を聞いておりませんでしたね」


「あ、これは失礼しました。 リーズと申します」


「リーズですか。 私はサレアと申します。 以後お見知りおきを」


「そういえば、サレアお嬢さんはこの城に行儀見習いとして登城してるんですか? それとも、私と同じで軍人として仕官しているのですか?」


「仕官?」


「城内で小剣をさして歩いておられたので勝手にそう解釈したまでですが」


「ああ、この剣は護身用として持たされているだけですよ」


「なるほど。 じゃあ、行儀見習いってとこが妥当な線ですね」


「……………まあ、そんなところですかね」


 少女はクスクス笑った。


「リーズさん」


「はい?」


「貴方の話は、爺たちより面白いです。 また空いてる時でいいのでお話してくださいね」


「私なんぞの話でよければいくらでも」


「あ、着きましたよ。 評定の間」


「ここですか。 ありがとうございます、サレアお嬢さん」


「いいえ。 爺の授業より面白くて勉強になる話が聞けて光栄ですわ」


「では、私はこれにて」


「あ、そうだ。 評定が終わったら聞きたい事があるので城の入口で待っててもらえますか?」


「聞きたいこと?」


「ファラスの事です。 評定が始まってしまいますので、また後で」


 そう言ってサレアお嬢さんは去っていった。

 さて、まだ評定が始まっている形跡はない。

 おとなしく自分の席を探すか。


ウェンデスがファラスを攻めた理由を明記していなかったことにいまさらながら気付きア然(´Д`)


世界征服とかそんな陳腐な理由なんかさすがに在り来りだし、フメレオン陛下の大望から世界征服する必要ないし、どうしようと考え抜いた末、こういう結論に達しました。



ウェンデスの西側に位置する隣国ナカラ王国が、大国ヴィンセント帝国に制圧され、ウェンデスにもその驚異が広がり、ヴィンセントに対抗するため国力増強のために金山など、地下資源を多く有するファラスに目を付けた。


………結局侵略ですね。

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