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リーズ提督48話

  Xに先を越された……。

  まだまだボクの状況判断能力は甘い……。

  ここでまさか後手に回るとはね……。


  それは、ボクと副提督が登城し、陛下に面会を求めた時まで遡る。

  いままで感じた事のないこの雰囲気に何かボクは出遅れたのを薄々感じていた。

  それを確信したのは、陛下の顔を拝見してからだった。


  今までボクは短い時でありながらも陛下とはよく顔を合わせていた。

  だからわかる。

  陛下の違和感を……。

  この、無機質な表情は、今までウェンデスに仕えた時の中で、見た事がない。

  陛下のサインが新造艦納入の書面にあった時に気付くべきだった……。

  いや……。

  気付いていたかもしれない。

  だが、ボクの希望的観測とやらでこの可能性を無意識に削除してしまっていただけだ……。

  つまり、想定範囲内……。

  取り乱すな、リーズ!

  想定範囲内だ……。


「ご苦労である……、リーズ提督」


「……は」


「君を呼び出す手間が省けて助かった。  本題に入ろう」


「……本題?」


「はじめまして、リーズ提督……。  卿の活躍は聞き及んでおります」


「……あなたは?」


  ウェンデス海軍の高級将校の軍服を着たその男が敬礼してきた。


「お初にお目にかかる……。  この度、海軍総督を命じられたヘレクトと申します」


「……海軍総督。  つまり、ボク……いえ、私の上官になるんですか……」


「そういう事になります」


「…………」


「リーズ提督……、これより我が国は、ナストリーニ及び、ユハリーンに対して宣戦布告を行います。  陸空軍がナストリーニと対峙しますので、我が海軍はヴィンセント軍と共にユハリーンと対峙します……」


「正気ですか?」


  ボクは冷えた声でその発言に対して言った。


「正気……とは?」


「ヘレクト海軍総督殿。  今、この場でナストリーニ及びユハリーンと戦端を開くのは世界中を敵に回す行為……。  とてもではないですが、正気の沙汰とは思えません」


「ほう?」


  ヘレクトはボクを睨むように見つめる。


「世界中を一辺に敵に回して勝てるとお想いで?  それに、今戦端を開くのはデメリットしかありませんが?」


「政治的判断というやつです……」


「国益にもならないこの愚か窮まりない戦争が、政治的判断?  誰が判断したのか、この場にて問い合わしたい!」


「国益にならないと勝手な判断は、提督の狭い見地からの判断であり、国益に基づいた判断であることは議会の承認をも得ている」

  嘘だな……。

  メリットなんかない……。

  このヘレクトとかいうやつは、一体何者だ?

  あんまりこんな事考えたくもないが、陛下は陛下ではない……。

  あの陛下は、Xの操り人形になっている事が推察される。

  となると、つまり……、どういうことだ?

  このヘレクトは、Xに属する人間と考えていいのか?

  まずいな……。

  八方塞がりだ。

  何も有効な手が思い付かない……。


  ん?

  ………………待て。

  サレア姫や、チューイはどうなった?

  陛下は奴らの手中にある。

  と、なると……。

  王家ももはや?

  手遅れかもしれないが、確認する必要がある。

  手遅れでないなら是が非でなくとも救出しなければ……。


「話を聞いているのか?  リーズ提督」


  ヘレクトの問い掛けにボクはハッとした。


「急な事でしたので、頭の中が混乱してしまいまして……。  それはともかく……、総督殿、就任おめでとうございます」


「うむ……、我が幕下に卿のような男がいることは心強い……」


「もったいなきお言葉……」


「それでは先ほども言ったが卿には艦隊を率いて、ヴィンセント海軍と共闘し、ユハリーン王国を叩き潰す事……。  何か質問はあるか?」


「ユハリーン王国の元は、海賊の集合体です……。  陸戦ならともかく海戦で彼らに太刀打ちできる勝算は極めて低いと思われますが……」


「そのための新造艦だ……。  また4日後、さらに4隻同型艦を配備する手配はできておる……。  これだけの戦力を与えるのだ。  卿ほどの男なら失敗もないだろう」


「さらに……4隻」


「それが私の着任に対する手土産だ。  そうそう……、リーズ提督」


「は?」


「今回の作戦立案は卿にやってもらう……。  大至急に立案に取り掛かりたまえ」


「ボク……いや、私がですか?」


「ああ、提督を信用している……」


  信用している?  ボクがそのままの言葉を鵜呑みするほど単純でないことくらい承知しているだろう……。

  それを踏まえて言っているのだろうから……、余計な事をするな……という暗黙の警告といったところか……。


「期待に答えられるよう、死力を尽くします」


  ボクらは敬礼して退廷した。




  帰りの道中……。


「あの総督は、何者でしょうか?」


  リファイルはやや不機嫌な口調でボソッと呟いた。


「さあて……、ね。  ボクがわかるはずないじゃない……」


「多恵殿は何か知っておりますか?」


  リファイルは何気なく、誰もいない方向へ問い掛ける。

  返事はない。

  いつもは頼んでもないのにリーズの側から不可解な事象について調べがついている事を語ってくるはずの多恵の気配を感じられなかった。


「多恵殿?」


  リファイルはもう一度問い掛けた。

  やはり返事は無かった。


「多恵は今、ボクのおつかいに行ってるよ」


「おつかい?」


「今後を左右しかねない大事なおつかいさ」


「すでに提督の中では悪知恵が進行している……、というわけですか……。  なるほど」


「悪知恵とは失敬な。  まあ、ボクも出来るかぎり手は打っておきたいからね……。  水面下で、誰にも悟られる事なく」


「あの総督の素性を探らなくていいので?」


「まあ……、優先順位の問題だ。  総督の素性を知り得たことで何かプラスになるとは到底思えない」


「そんなものですか?」


「ああ……」


  それに素性については仮説の域こそ出ていないがおおよその検討はついている。

  おそらく、科学省のスポンサーであるXの回し者だろう……。

  そう仮定することによって不思議と糸が繋がる。


「さて……、先手をうつつもりが先手を取られたな……。  これが後まで響かなければいいけどね」


「なんだか私は嫌な予感はします。  王弟派を排除した事でウェンデス軍部はまとまったと私は思っておりましたが、さらに一筋縄ではいかない連中が出てきました」


「しかも陛下の御旗に集ったボクら身内と呼べたはずの科学者どもがこうも露骨な事をしてくれるとはね」


「全くです」


「早まったことをやってしまったかもな」


「え?」


「王弟派の排除が、結果的に今回の事態を招いたのかもしれない。  そう思うと、最善を信じて行動してきた今日までのボクは結局、連中の手の平で躍らされていたということになるね」


  自分で言ってゾッとした。

  もし、王弟派を排除しなければこの事態になることはなかった。

  科学者やXの露骨な暗躍の起因は王弟派排除から始まっている。

  この事変は、彼らにとって行動を潤滑に進めるために発生した事象。

  今まで、敵対してきた連中は正体ははっきりしていたし、単純な連中だったからボク程度でも乗り切れた。

  今回はあまりにも狡猾。

  あまりにも隙がない。

  敵の全体像が見えてこない上に、目的もわかっていない。

  はたしてボクはどこまであがなう事が出来るか……。




序章、FIN

実はまだ序章でした。

序章だけで読了時間約300分って……。

我ながら無駄に引っ張り過ぎ。

時間に換算して5時間。

まあ、世の中には総プレイ時間100時間を余裕で越すテキスト形式アドベンチャーゲームもある事ですし、それを考えればまだまだ短い方ですかね?


ここまで読んでいただきありがとうございました。

まだまだ続きますが、良かったら今後の展開もご期待下さい。

ちなみに立身出世話はどこにいったんだろ?

最初のコンセプトから大分掛け離れてきてますね(汗)


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