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42話 回想 エゴ

  ファラスという国は極端な世襲制であった。

  能力があるものが努力しても、永久に今以上の地位を得る事は不可能である。

  どんなに優秀な戦果を上げようとも、現状の地位から逸脱することは不可能なのだ。

  しかしリーズは、これもまた一興と思っていた。

  己の力を過信し、実力主義の形態を採用する軍隊に憧れる同僚士官もいる。

  しかしリーズは彼らをある意味では、侮蔑の目で見ていた。


  終身雇用制……。

  結構ではないか……。 平和な時代ならばこれほど楽なシステムはない。

  実力主義がどれだけ地獄の世界か、露ほど知らぬ人間が言う幻想である。

  実力主義を唱える人間のパターンとして、自らが勝者としてのビジョンしか見えていない。

  自分が敗者に落ちぶれるビジョンを見えていないからこそ、安易に実力主義を唱えるのだと……。

  リーズは、父の会社がまさに実力主義を採用している、ファラスでは珍しい商家であった。

  よってリーズは、幼い頃より、実力主義の敗者という存在を知っているのだ。

  今この会合はリーズにとって興味の無い話であった。


「なんで、我が国は世襲制なんだ……」


「やる気も起きないよ……」


  同期で軍に入った同僚同士の秘密の会合。

  世襲制を恨めしく想い、愚痴を言い合う。  リーズは、付き合いで参加しているだけで本心は語らない。

  ただ、相槌を打つだけで、話をただ聞く。

  それだけしかしていなかった。

  やがて話は拡大する。


  謀叛……。

  リーズは直感でやばいと感じつつも、一種の好機をも画策した。

  リーズの現状では引けないカードを得る手段になり得るからだ。

  彼らがファラスに混乱を巻き起こせば幾多の策でエルゼを奪還できる。

  そんな事を一瞬でも考えてしまい、リーズは首を振った。


「どうした、リーズ……」


  その場にいた同僚がリーズに問いかけて来た。

  リーズはゆっくりと答える。


「ボクら軍人は、ファラスの剣であるべきだ……。 現状に不満があるのも分かるが、ここで謀叛を起こして得をするのは誰だ?」


「だが、俺たちは一生この地位を甘んじなければならないのだぞ! 退役まで、永遠と!」


  リーズはゆっくり周囲を見渡した。

  今、この場にいるのは、下級貴族の息子や、リーズのような有力な商人の息子たち。

  水軍において、中夫や小夫の地位に就いているボンボンなのである。

  彼らが世間知らずにも、謀叛の手を上げた所で、勝ち目などもないことは、明らかである。

  なにより、罪の連座ほど馬鹿馬鹿しいものはない。

  彼らはいきり立ちこそは一人前だが、それを成し遂げるだけの器量など無い。

  リーズから言わせれば、現状の地位が満足できないだけの、子供の戯言なのだ。

  そんな危険な船に乗るほど、リーズは若くても愚かではなかった。

  リーズはため息をはく。


「君達、失敗する事を何も考えてないよね?」


「事をなす時に、失敗を考えるは、大事をなす事はできぬ。 有名な軍学の言葉をリーズ中夫は知らぬのか!」


  確かにそう謳っている軍学書もある。

  だが、リーズはそれを軍学書として認めてはいなかった。

  理由は簡単……。

  実績の無い、平和な時代に書かれた、理想主義者の本だからだった。

  実践出来ない軍学書は星の数ある。

  いかに本物を見抜くかが、軍学書を読む者としての責務でもある。


「他の軍学書にはこうもある……。 勝敗は兵家の常と……」


「それは、負け犬の考えだ」


「確かに敗者の将が言うセリフだ……。 だけどな、敗者のセリフは勝者のセリフより重みがある……。 有史以来、敗戦から学んだ者は多い。 勝利から得るものは優越感と、名誉。 これが後世、何の役に立つ? 敗戦は得るものが大きい……。屈辱と反省だ……。 何故、負けたか反省し、次の機会に活かす事も出来る……」


「負けたらそれまでだろ」


「常勝無敗、確かにボクら軍人はこの気概で臨まなければならない……。 ただね、常勝無敗なんて有り得ない」


「やってみなければ分からないだろ!」


「分かるよ……」


  英雄も負ける時は負ける。


「……………」


  皆、リーズに言い負かされて押し黙った。

  リーズの言っている事は一々正しかった。

  そもそも、軍学を徹底的に学んでいるリーズに対して、かじった程度の知識しか持ち合わせていない、この場にいるものが、軍学講釈でリーズに勝てる訳がなかった。

  だが、彼らは言い負かされつつも、納得はしていない。

  自分の持つ可能性を否定することになるその事実を、認める訳にはいかなかったのだ……。


  結果、謀叛の火の手はファラスを襲った。

  リーズは当然の如く、鎮圧軍として、参戦する。

  若い将校らによる、首都での武装蜂起……。

  ファラス王国最後の内乱が、始まった。

  水軍を始め、騎士団、魔法軍の若き将校らは、現ファラス政権に牙を剥いた。


「馬鹿な奴らだ……」


  リーズは、つい先程まで戦闘をしていた闘艦を一瞥し、呟いた。

  反乱軍として、今しがた沈めた闘艦は、つい先日までは僚艦であった。

  その艦長も、あの会合にいた一人である。

  ゆっくりと水中に沈んでいく敵艦を見ながら、リーズはため息をはく。


「だから、言っただろう……。 負けた時の事を考えろ……、と」


  この艦の艦長には、当然家族もいる。

  彼の家名は、今、この時点で崩壊した。

  小貴族の次男坊は、己のエゴにより、本家を滅ぼす結果になってしまった。

  これが現実である。

  謀叛人の家が、罪を連座されない訳がない。


「………次は我が身か……、それとも……」


  リーズは自艦を反転し、水塞に引き返した。

………………………半角スペース無効の仕様なんて、今始めて知った小説家になろう歴5ヶ月のふじぱんです。おひさしぶりでございます。

読みやすくするために文頭にスペースを入れてみました。

どうも、密集ギュウギュウで書くのは、抵抗感があるため、いっそのこと開き直ってみました。

だって私的に、密集な書き方って目が疲れますから……。

パソコン読者には全く優しくないのはわかってはいますが、こっちを立たせるとあっちがたたないというわけで(^-^;


更新遅れた言い訳を……。

急遽、厄介極まりない出張をこしらえて頂きました我が勤め先様、ありがとうございます。

おかげで血ヘドを吐かせていただきました。

こき使いすぎじゃ、ボケナス〜〜!

同僚と相部屋でカタカタと小説など打てません。

小説書くのは隠れ趣味でございまして、リアルで書いている事を知っているのはほぼ皆無。

弟が知っているくらいかな?


最近、後書きがブログ風味になってしまっているのはきっときのせいです。

更新の時間……、欲しいです。

そんな状態でも、小説を書いてる私ってもはや中毒ですね。

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