回想40話
リーズは仕事を終え、帰宅する。
「ただいま」
「お帰り、リーズ……」
「て、な………」
リーズの父は、じっくりとリーズを見据える。
「なんであんたがここに……」
「金さえ払えば得られない情報等ない……。 商売の鉄則だ……」
「何しに来たんだ、あんたは……」
「エンセンツ商会の恥部を精算しに来た……」
エンセンツ商会とは親父の経営する商会である。
「恥部……」
「お前は俺の言うとおりにしておけば良い……。 それが、エンセンツ商会の社長に生まれた者の義務だ……」
「あんたの敷いたレールに乗れってか?」
「そもそもお前、俺を敵に回して生きていけると思っていたのか?」
「……………」
「あの娘、エルゼと言ったか……」
「!」
「あんな安い女なんぞに惑わされよって……」
「エルゼに何をした!」
「まだ、何も……」
「……まだ、だと?」
「口に気をつけろ……。 お前もエンセンツ商会の人間。 バカじゃあるまい……」
「……………」
「よし、いい子だ」
リーズの父はニッコリと笑った。
リーズはこの時、初めて父から「いい子」と言われた……とか思っていた。
そんな単語知っていたのか、こいつは……。
「さて、ビジネスだ」
「ビジネス?」
「取引だよ……」
リーズの父は絶対的に優位なカードを持っている。
リーズの父主体の取引……。
リーズには従うしか、手元にカードは残されていない。
だが、リーズも模索する。
まだ何か、この状態を覆すカードがきっと……。
「お前は大人しく家に帰り、軍属になれ……」
「それだけか?」
「それだけだ」
「エルゼは?」
「俺の提示した条件を守れば会わしてやらないことも無い……」
「国家貢献度を上げろ……ということだな?」
リーズの父はニンマリと笑う。
「中々優秀だ……、ゼルハより何倍もな……」
ゼルハ……。
あのボンクラ兄貴の名前だ。 (一度も作中に名前を出していなかった事に改めて驚いている作者がいる。)
「そりゃどーも」
「まあ、いくら次男が優秀でも家督を継ぐのは長男だ……。 至らない争いが起きるくらいならお前はしっかり国家貢献度を上げるのだ」
「…………わかった」
「ならば、帰るぞ……」
リーズの父は馬車に乗る。
「早く乗れ!」
「っ………」
リーズは大人しく従う。
リーズはよく知っている。
この男が目的のためなら手段を選ばないことを……。
下手に反抗したらエルゼはこいつに消されかねない。
それだけ、この男は表裏を持つ。
見た目は人の良さそうなおじさんだ。
こいつの本性を知っている人は一握り……。
こいつによって地獄を見た者はリーズの知る限りでもかなりいる。
こちらが必勝するカードを所持していない限り、カードを切るわけにはいかない。
飲み込まれるから……。
あけましておめでとうございます。本年度も皆様に取ってよき年でありますよう、心よりお祝い申し上げます。私は喪中ですがね(笑)
お久しぶりでございます。最近めっきり更新する暇を与えてくれないほど仕事を与えてくれる会社にボーナスを頂き、遊びほうけていまし……いえ、失礼(^-^;
休日は頑張って更新します。