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エルゼ回想38話

「水軍!?」


 リーズの希望を聞いてエルゼは耳を疑った。

 ファラスには3軍といって大別すると3つの軍隊がある。

 一つは騎士団。

 一つは魔法兵団。

 そして最後に水軍であった。


 軍隊の花と言われる騎士団は圧倒的な人気を誇る。

 優雅で華やかな騎士団はファラスの人間にとって憧れの軍隊であった。

 魔法兵団は魔法兵団でインテリというイメージがあるものの、知的なイメージが漂う軍隊であった。

 しかし水軍にいたってはあまりいい評判はない。

 戦場で活躍するのは艦船であり、手柄は艦長。

 艦長にでもならない限り日の目に出ることの難しい軍隊である。

 ファラス有史で、騎士団や魔法兵団では一兵卒が英雄になるという英雄たんはよくある話である。

 しかし水軍は滅多にない。


 いや、滅多だとかろうじてあるみたいなかすかな希望的観測を持つことが出来る。

 だから言い換える。

 一兵卒が英雄になることはありえない国なのだ。


「うん、水軍」


「なんでまた……」


「一番軍隊でまともだと感じたからかな」


「軍隊で、まともと感じたって……」


「騎士団なんか様式美にとらわれただけの貴族の社交場じゃないか。 ボクみたいな商人の息子が入ったところであぶられるのは目に見えてるしね。 魔法兵団もボクの柄じゃないよ……」


 そもそも魔法の才能、自分で言って悲しくなるけどほとんど皆無であることくらい認識しているからね。

 と付け加えるリーズ。


「で、よりによって水軍なわけ?」


「うん」


 相変わらず変わった男だな……っとエルゼは思っていた。


「ところでエルゼはここでたらどうするの?」


「……どうなるんだろうね?」


 リーズはキョトンとして顔を上げた。

 そりゃ願望を言えばリーズのお嫁さんに収まりたいって人並みの女の子と似たような感情を持っていた。

 そんな自分、リーズに会わなければまず存在しなかっただろう……。

 でも、リーズにとっては迷惑な話だよね……。


「どうなるって、自分の夢も決めれないのか?」


「あるんだけどね……。 実現不可能だから」


「エルゼにしては弱気な発言だな」


「まあ、弱気になるよ」


「ボクに話してごらんよ。 この前、ボクの話聞いてもらったし、エルゼも言っていただろう? 人に話せば楽になるさ」


 リーズは真剣な目で問い掛けてきた。

 が、さすがにリーズ本人の前で言えるわけがない。

 あなたが好きです。

 これを言った瞬間、すべてが終わるのはわかっているから。

 この関係を終わらせたくない。

 臆病といわれてもいいよ。

 だから、私は言えない。


「どうした?」


「漠然としてね。 まだ言葉に出来ないといったほうがいいかな?」


「そんなに複雑な問題なのか?」


「そうだね。 そんなところかな」


「ふむ」


 うまく逃げたな、私。

 私ってこんなずるい事考える人間だったかな?

 でも仕方ないよね。

 あなたにだけは相談できない問題なのだから。


「わかったよ。 いつか話してね」


「………………え?」


 まったくリーズの感情が読めない。

 もとよりそういう風に作っていたのがいつのまにかそれが自然体になったとリーズは以前語っていた。

 軍学の基礎技、ポーカーフェイス。

 相手に自分の考えてることを敵に悟られるのは、古来から全ての戦場において敗北につながる。

 と、ある軍学書に書かれている。

 リーズはその文面に共感を受けて実践しているというものである。


「リーズの表情ってまったく読めないよね」


 ボソっとわたしは非難を込めて言った。

 リーズは少し考え込んだ。



「まあ…………、そうかもね」


 リーズは心なし弱く肯定した。


「ボクは素直にエルゼに感謝している。 妹のこと聞いてくれて、ボクの犯したミスを指摘してくれたからね。 だからこそ、恩を返したい。 そう思ってるよ」


「恩か……」


 リーズにとって私は友人であり恩人であって、それ以上の感情はない。

 私はわかっている事実ながら、思考してしまいへこむ。


「何難しい顔してるんだよ」


 リーズは私を見て笑いながら言った。

 全く、人事と思って……。

 あれこれ考えているうちにお腹がすいてきた。


「ねぇ、リーズ……。 ご飯食べにいかない?」


「いいね。 屋台でも覗いて行く?」


「そうしよっか」


 私とリーズは屋台が立ち並ぶ広場に向かっていった。

 店構えをしている店などは、いわゆる高級店であり、貴族しか入れない。

 庶民の外食は専らこういった屋台になるのである。

 リーズは適当な屋台に入り、適当に注文する。

 

 その時だった。

 遠方から悲鳴が聞こえて来た。

 それに反応し、悲鳴の方角を見る二人。

 砂煙が上がっていた。


「これはひょっとして……」


 リーズは天を仰いだ。


「何?」


「野盗だ」


「でもなんでこんな大きな町に……」


「守備軍の半数以上が今、ナストリーニ攻めに参加しているからかな」


 この時、ファラスは領土拡大のため、隣国ナストリーニに進攻していた。

 その為に、各都市に配備していた大半の守備軍も、ナストリーニ進攻のため前線に送られており、今や野盗にとっては大きな町は大きな狩場に成り下がっていた。


「エルゼ、逃げるよ」


 リーズは、エルゼの手を引き、逃げ出す。


 しかし、リーズはすぐに立ち止まった。

 逃げようとしている方向からも砂煙が上がっていたからである。


「ただの野盗じゃないな……」


「え?」


「やっていることは野盗と一緒なんだけど……、動きが素人臭くないんだよね」


「か、考えすぎでしょ?」


「いや……、うまいんだよね。 この包囲の仕方……。 とてもじゃないけど烏合の衆かき集めて出来る芸当じゃない」


 町から逃げることができぬよう、東西の町の出入口を塞いでいる。

 全く理性もない野盗に出来る芸当ではない。

 ただの野盗なら我先に、我先にと戦利品を略奪する。

 だが、出入口を封鎖して動かない兵はまさにどこかの正規軍の風貌があるのだ。


「きな臭いね……。 何か起こりそうだ」

長らくお待たせしました。

ただいま私の職が繁忙のため、携帯をカチカチいじる暇すら与えてくれず気付けば長期の連載ストップに……。


アクセス解析を見るとそれでも見に来てくれている読者様がいて下さり申し訳なさ爆発です。


考案はしていながらなかなか書けなかった38話です。

というかいつまで続くのか、エルゼの回想……。


本来は3話で終わらせるはずが……(^-^;


もう当初の計画から道外れていますしね。


どうしてこうなったんだろう(オイ)

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