陰謀 31話
「君がウェンデスの……」
「はい」
「私たちはフメロン王弟派でございました。 多くの仲間がフメレオン王の残虐な処分によって消えてしまったのです」
「だからフメレオン王を恨むと?」
「御意」
「悪いが信用できないんでね。 ウェンデスのリーズは謀略を好んで使うと聞く。 貴様がリーズの放った埋伏の毒という疑念を持つのは不思議ではないだろう?」
埋伏の毒とは三国志に詳しい人ならご存じかと思うが、敵勢力に味方勢力から離反したと思わせて潜り込み、敵を撹乱させる作戦である。
「確かに……。 我が方はあなたさまから見たら埋伏の毒の可能性がありますね」
「古臭い手だ。 俺はそこまでバカではないのだよ」
「では、行動で示すしかありませんね」
「行動? どうやってだね」
「決戦時、私の艦が先手をきってリーズ提督の艦に砲撃を加えます。 それにより浮足立つでしょう。 そこをムハンマド提督らが突いていただければ……」
「それを信用しろと?」
「御意」
「ふふふふ……、甘いな。 貴様の言うことを今信用できもせぬのに、そのような重要な曲面を任せた戦略などたてることはできんな」
「さようでございますか。 それではユハリーンは敗北の道を辿るということで?」
「なんだと?」
「ムハンマド提督。 あなたはリーズ提督の本当の怖さを知らぬと見える」
「リーズ提督の怖さ……とな?」
「彼が今、ユハリーン第6艦隊を討つために何をしているか知らぬようで」
「知っているよ。 我々の諜報能力を甘くみるな。 奴は今、軍事調練しているな……」
「ええ、今砲撃の命中性能と操縦性の効果をあげるため、調練を行っております」
「厄介だ……。早めに潰しておくに越したことはないがな……」
「潰す? あの男をですか?」
「あれは我がユハリーンにとっても友邦であるナストリーニにとっても脅威であるのは間違いない……。 あれは危険すぎる」
「危険……。 そこまでリーズ提督の事を畏怖されておられるのですか?」
「警戒するなというほうが無理であろう……。 あれほどの男がウェンデスにいるということにおいて、我らに取っては恐怖である……。 他のやつならともかくな……。 あれは、危険だ」
「危険……。 それは認めます……。 彼ほど放置してはまずい男はウェンデスにいない」
「君の名前はなんだったかな?」
「フェインと申します」
「ふむ……。 フェイン君、君はなかなかあの男の危険性について危惧しているようだな」
「ウェンデスにおいて最も警戒しておくにこしたことはない人材は車児仙とリーズ……。 これは事実です」
「ふむ……。 まったくあの不忠の王によく優秀な人材が付き従っているものだな」
「彼らの場合、活躍の場をフメレオン王から与えられたという立場にあります。 ただそれだけのこと……」
「……即ちリーズや車児仙は、ウェンデスに固執はないというわけか?」
「御意」
「……リーズは釣れるか? あの男ならユハリーンでも高い地位におくことができよう……」
「十分可能かと……」
「そうか……。 どのようにしたら彼は我が方に動くか?」
「ユハリーンは新興国家にもかかわらず大国と呼ばれています。 それはひとえにユハリーン王のカリスマに引き付けられた有能な士がきら星のように集まっているからです」
「うむ、その通りだ。 我がユハリーンは人材によってでかくなった国家。 まだまだ伸びる」
「はい。 私もそのように考えます……。 ですから私はウェンデスを捨ててここにきたのです」
「ふふふふふふふ……。 つまりフェイン君。 君にはウェンデスでの活躍の場は無いといいたいのかね?」
「御意……。 私の逃亡はまだリーズ提督らの耳にも入っていないはず。 ですので内からかく乱できると思いまして」
「……ふむ。 なるほどな……」
「どうか私にユハリーンに帰参の手土産を持ってくる機会を与えてください」
「そんなに君はユハリーンに帰順したいのか? ……王への裏切り行為というのは一生君の心に十字架をはりつけることになるのだぞ?」
「かまいません……。 私は私の力を世に試せるのであれば汚名くらい平気でかぶれます」
「ふむ……。 そこまでの覚悟が……」
「御意」
「わかった。 君に機会を与えよう……。 見事、ウェンデス海軍艦隊を内からかく乱させてくれ。 それによって君の帰順の意を我が王に示すこととなる」
「ありがとうございます……。 私、フェイトは今後……、ユハリーンに忠誠を誓います」
「うむ。 頼もしく思う」
「それでは私は気づかれぬよう早めにウェンデスに帰還します。 私の砲撃を確認して、攻撃に移っていただきたいのです」
「わかった……。 君の命がけの手土産……。 無駄にはすまいぞ」
「よろしくおねがいします」
うあ・・・。
一応会話しているのはユハリーン王国第六艦隊提督ムハンマドと、ウェンデス海軍艦隊の艦長フェイト(初登場)です。
見事に会話のみ・・・。
うーーーん^^;