表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/49

リーズ提督29話

「これならどうだ?」


 相変わらず読めないので挿絵で判断する。

 二人の男女が描かれていた。

 挿絵には男が幽霊らしきものを指し、壷を持っている。

 もう片方の女性は恐怖に怯えお金を両手に持っている。


「………これは霊感商法かな?」


 チューイは愕然としていた。


「霊感があるかのように振る舞って先祖の因縁や、祟りなどを用いて法外な値段で商品を売ったり、金銭を取ったりする商法だね」


「そ、そのとおりだ。 な、ならばこれならどうだ?」


 また挿絵で判断させる気か?

 めんどくさいが付き合うか。

 挿絵にはまた男女が書かれており、男の目はハートマーク。

 女は手元に何やら妙な物をもっており邪悪に微笑んでいる。


 ………………この手口は、あれか。


「恋人商法だな」


「…」


「異性の恋愛感情を利用して契約を締結させる商法だ。 思い出すだけでも忌まわしい」


「ん? 忌まわしい?」


「気にするな」


「う、うむ。 ……しかしなんだ。ファラスという国は…。 詐欺のオンパレードではないか」


「考えつく限り、たくさんあったな。 その手の詐欺は…」


「参考までに他にどんなのがあった?」


「まあ、ポンと思い付く限り、アンケート商法、お礼商法、架空請求、借金アルバイト、当選商法、ニセ募金………」


「もういい。 わかった。 少し黙れ」


 チューイはため息をついた。


「なんと荒んだ国なのだ、ファラスという国は……」


「国民の大多数の人間が何かしら引っ掛かってるな。 悲しい話」


「提督も引っ掛かったことがあるんですか?」


 サレアが聞いてきた。


「………………」


「沈黙の肯定か!」


「ウェンデスという国がいかにまともな国ということが改めて理解できました」


「んで、貴様は何にひっかかったのか?」


 チューイはニヤニヤと聞いてくる。


「あー、いい天気だね。 こういう日は釣り日和だな」


 ボクは白々しく暗雲立ち込める空を見上げた。


「デート商法か」


 ギクリ



「道理で21の身空にしては堅物すぎると思った。 それなら納得できよう」


「………………」


 チューイとサレア姫から同情の目が注がれる。

 なんだろう、この敗北感は……。


「どのようにして引っ掛かったんです?」


 サレア姫が悪気の無い好奇心で聞いてくる。


「…………………」


 いくらサレア姫の質問でも過去の汚点をさらけ出すほど人間は出来てはいない。

 誰にだって若気の至りというものがある。

 そう、作者にもあるのだから(聞いてない)。


「隙があるから付け込まれるのだ」


 チューイがグサッと胸に突き刺さる一言を言い放った。


「いや、巧みなんだって。 上手いんだよ、連中は……」


「ボクなら引っ掛かることはない」


 自信満々にそう言いのけた。


「いや、多分引っ掛かっると思うがね……」


「ありえん……」


「一度も経験がないからそんなこと言えるんだ。 自分は大丈夫とか思っている奴ほど引っ掛かかるんだ」


「では、お前はどのように引っ掛かったのだ?」


「……………」


「沈黙は敗北宣言だ」


「……………」


 言える訳がない。

 自分でも今ではバカだったと思えるのに、それを暴露できるわけがない。


「ふん、小物が」


「私の主君に対して小物は言い過ぎです」


 いきなり多恵が会話に混ざって来た。

 チューイもサレア姫も急に会話に割って入って来た多恵を見る。

 いつものことながら気配を消すのは見事だな、と感心していると


「なんだ、貴様は!」


 とチューイが多恵に対して突っ掛かる。


「私は忍びの多恵ですわ。 神童6人衆のチューイ殿」


「……なぜボクを知っている?」


「あら、有名ですわよ。 貴方の事」


 多恵はクスクス笑って答えた。


「どう有名なのだ?」


「あら、本人を目の前にして言ってしまうほど私は外道ではないですわ」


 それ、言ってるのとなんら代わらないから……。


「忍びだと? しかもリーズを主君? ……どういうことだ!?」


 チューイはボクを睨みつける。


「そういうことですよ?」


 多恵は答えた。


「回答になっていない! 質問された場合は人にわかりやすく簡潔に答えるのがマナーだ」


「人の事言えない気がする」


 サレア姫は的確な指摘をチューイにした。

 チューイはサレア姫を睨みつけて


「ボクのどこが?」


「チューイ君って前から思っていたんだけど、自分の意見をさっさと自己完結する傾向があるよね……」


 サレア姫とチューイが揉めている隙に多恵に聞く。


「どうしたんだ?」


「はい。 皇帝が同盟に対する返事をするため、参内してほしいとの要請がきました」


「やっとまとまったか」


「はい」


「返事の内容は色良いものか?」


 多恵は微笑んでいる。


「まあ、ヴィンセントにとっても損のない話だ。 結論がでたのが遅すぎの気もするがな」


「ですね」


「サレア姫。 皇帝が至急参内するようにだそうです」


 その言葉にサレア姫はこちらを向く。

 なんとも言えない顔付きになっていた。


「大丈夫ですよ。 我々は最善を尽くしました。 きっと色良い返事です」


「そう……、でしょうか?」


「はい。 自分を信じて下さい」


 チューイは腕を組んで言った。


「そうか、貴様らはこの帝国と同盟を結びに来たのか。 締結すればボクもコソコソと帝国に来る必要がなくなるな」


 まあ、この同盟が締結すればウェンデスとヴィンセントは友邦になる。

 この二国間に置いて、流通が活発になりチューイが求めているような怪しげな本ですらウェンデスにいても手に入る。

 そういう面ではウェンデス国民にとってかなりのプラスになるだろう。


「んじゃ、行きますか?」


「そうですね、参りましょうか……」


 ボクらは城に向かって行った。



「待たせたな」


 皇帝はボクらに向かって言った。


「それで、返事を頂けるということですが?」


「うむ。 たった今、議会の承認が降りた。 我が国は貴国と同盟を締結する」


 ボクはほっとした。


「期限はそちらの申した時より5年延長。 また、対等な関係を築くため、こちらからは物資の提供と魔法の提供。 そちらからは科学技術の提供が条件だ」


 悪くはない。

 サレア姫はこちらを伺っていたので軽く頷く。


「畏まりました。 ウェンデス国使としてその題件、確かに承ります」


「それに伴い、貴国の技術を使う工業地帯をナカラ地区と、エルワール地区に建造する。 それと両国を繋ぐ鉄道の建築についてだが、費用は我が方が負担し、技術を提供することを望む」


「費用を、全額ですか?」


「うむ……」


 それは考え物だな。

 工業地帯に関してはヴィンセント領にあるため問題ないが鉄道に関してはウェンデス領にも関係する。


「鉄道に関してはウェンデス領にのみ、敷線を我が方で負担させていただきます」


「ふむ?」


「せっかく結んだ同盟にケチを付ける気はありませぬ。 ですがあくまで対等ならではの申し出でございます」


 鉄道の所有権に関しては確実に揉める材料になるだろう。

 その際、資金をだした方に発言力が強まるのが世の常である。

 例え、ウェンデスの財布事情が苦しくてもここはウェンデス側も出す必要がある。

 同盟を結んだ直後に不吉な事を考えるのはどうかと思うが、ウェンデスとヴィンセントが仲たがいをすることだってある。

 その時、鉄道の存在が大きなネックになることはたやすくわかることだ。


「ふむ……、そうか。 その件に関しては皇帝権限で了承しよう」


「有り難き幸せ」


「それでは早速調印に移るか」


 同盟盟約書には後々、ウェンデスが不利になることは書かれていない。


一、両国は国境を無断で越えることなく不可侵とする。また、いずれかの援軍は可能な限り派遣する。

一、両国の流通の自由化を認め、関所にて両国の名の元、発行するものとする。

一、ウェンデスは科学技術を惜しむ事なくヴィンセントに提供し、ヴィンセントはそれと等価価値の物資をウェンデスに提供する。等価価値の判別は両国において決定するものとする。

一、両国首都、もしくは大都市に大使館を置き、そこを治外法権とする。

一、軍官、文官を互いに交換し融和を計るものとする。

一、この同盟の期間は10年とし、10年後、両国に異義がなければ再び盟約を結ぶものとする。

一、必要に応じ、両国の同意のもと、今盟約内容は追加、修正できるものとする。


 皇帝と宰相、そしてサレア姫とボクの連名にてウェンデス・ヴィンセント両国の同盟は締結した。

 この同盟がウェンデスにとってプラスになることは明らかだ。

 ボクは同盟の締結に胸を撫で下ろした。

 確率の高い成功率とはいえ、絶対ではない。

 安堵と達成感。

 なかなか得ることはできない、貴重な体験であった。

というわけで駆け足気味が否めませんが、同盟成立です。


しかし、チューイというキャラ…、出せば出すほど話が長くなっていきますな。


私はすごく気にいってるキャラなんですが、皆様の視線からはどう移っているんでしょうか?



追伸、私の引っ掛かった詐欺については追求しないで下さい( ̄▽ ̄;)





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ