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リーズ提督24話

 あぁ、海はいい。

 故郷に帰って来た!


「あのー……」


 この潮風が、この船の揺れがボクの故郷だ。


「リーズ提督?」


 この水面のキラキラという輝きはまさにボクの帰還を喜んでいるに違いない。


「こんな所で寝てたら猛獣に食べられますよ?」


 ユサユサと自分の身が揺れるので目が覚めた。

 突然現実にもどり、山の中の木々を見渡し愕然とする……。

 夢ですか……、そうですか……。


「おはようございます」


 多恵に叩き起こされ、現実に戻ったボクはぐーっとのびをする。

 しかし、夢にまでみるほどボクは陸がいやなのか?

 などと、自分を冷ややかに分析した。


「悪いな、遅いからつい寝入ってしまったよ」


「いや、提督が早すぎます。 てっきり提督の到着は深夜くらいになるものと思っていたのですが」


「素直に歩いていたらそうなるかもしれないな」


「テレポートでも使ったんですか?」


「ああ」


「じゃ、提督はお先にテレポートで帝都に向かっておいてください」


 多恵は切り捨てるように言い放つ。


「いい考えだ。 ……しかし、もうテレポートは使えないんだよ、これが」


 ボク自身がテレポートを習得しているわけではない。

 魔法道具の恩恵だ。

 使い切りと最高級な値段が難点だが…。

 魔法道具は便利である。


「で……、ナオトはどうした? ……無事にここまで着いたということはもう遭遇してないと思うが」


「はい、遭遇してません」


「そっか……。 賭けはうまくいったみたいだな」


 ボクは立ち上がった。


「姫様たちは?」


「先に里に到着しております」


「多恵の里だったな」


「はい、私の里です」


 ボクと多恵は歩きだした。

 山の中に集落がある。

 これが忍びの里か。


「ここが新白衆の里か」


「近々、引っ越しますけど」


「引っ越し?」


「主を得たのですから、主の側に本拠地を構えるのが自然ではありませんか?」


「なるほど……。 一理あるかもしれないな」


 引っ越しがまだだった事は今回に置いては助かった。

 里の中に入るとそこの人々に深々と頭を下げられる。


「みな、提督を歓迎しております」


「いや……、こ、これはなんかむず痒いんだが」


 多恵に案内されて一番大きな屋敷に案内される。

 そこには正装した初老の男が頭を下げて待っていた。


「え……、と?」


 多恵を見る。

 多恵はニコニコ微笑んで


「父です」


 と答えた。


「竜信と申します。 お初にお目にかかります、提督」


「あ、どうも……。 リーズです」


「今宵はごゆるりとお過し下さい」


「助かります」


 ボクは奥に案内された。

 そこには山菜料理がすでに並べられていた。


「何から何まで助かります」


 ボクは竜信に頭を下げる。


「いえ、提督は我らの主なれば……、どうか頭をお上げください」


「確かに主従にありますが、礼には礼を……。 それに、新白衆のもたらす情報に助けられておりますので」


「誠に恐悦至極……。 我らも任に力が入る所存で……」


「ストップ」


「はい?」


「すまないが堅苦しい敬語は使わないでいただきたい」


「御意」


「ところで竜信……」


「は……」


「多恵が何故、頭目なのだ?」


 ちょっと思った疑問である。

 見たところ竜信は病に伏せっているわけでもない。

 頭目を譲るには早過ぎるのではないかと。


「実は拙者……、こうして虚勢を張っておりますがすでに病に犯され、頭目の激務には堪えられぬ躯ゆえ、我が娘、多恵に家督を譲って隠居している身であります」


「病?」


「情けない話でありますが、潜入任務に失敗し罠にかかり失明しております。 また毒も受け、朽ちるのを待つ身であります」


「失明……」


 言われて見れば焦点が定まっていない。


「竜信……、多恵以外に子は?」


「いますが、まだまだ幼く里を任せるには無理かと……」


「なるほど……、だから多恵が頭目なのか」


「御意」


「多恵にはよくやって貰っている。 感謝する」


「いえ、提督。 こちらとてまだ若き新白衆の頭目にも関わらず、登用なさっていただき……」


「ボクは陛下と一緒でね。 老若男女問わず、有能なら問題ないと思うようになった」


 ボクは料理に箸をつける。


「まだ至らぬ娘ではありますが何とぞよろしくお願いします」


「って、なんの会話をしているかと思えば……」


 多恵がいきなり現れて口をはさんできた。


「コラ、多恵! 無礼であろう!」


「いや、だから気にするなと……」


「ですが、主従というものは……」


「ボクは気にしない。 それでいいだろう?」


「御意」


「で、多恵。 どうした?」


「はい、ご報告を……。 マウンテーヤ王、何者かの調略によって出陣しヴィンセント領に進攻しました」


「やっぱり動いたか、単純な王で助かった」


「はい?」


「その調略をしたのはボクだ」


「は?」


「準備も整っていない軍など烏合の衆だろう? たやすくヴィンセントは撃破できる。 軽く恩をヴィンセントに売っておけば交渉が容易になる。 それに戦端を開いてしまえばボクらに刺客を向ける余裕など同盟軍になくなるだろうしね」


「ああ、それでマウンテーヤ王の性格を私に聞いてきたのですか」


「うん。 正確な情報、助かったよ」


「ですが、戦端を開いた以上、私たちが皇帝に会うのは難しくなったのでは?」


「いや、向こうも知ってるはずだ。 ボクらが向かっていることを。 カルザールが知ってるくらいだしね」


 おそらくボクらの到着を待ち侘びているだろう。

 大国ゆえ、自ら申し出るわけにもいかないという変なプライド。

 つまりボクらの同盟提案は恰好の餌。

 得はあっても損はない。

 そんな情勢なのだ。

 若干策に頼りすぎだと思うが……。

 ここまでボクは策を用いる人間だったかなっと、微笑した。

 正直、ファラス時代では考えられないな。

 ウェンデスに来て、やり甲斐を感じるからこそ成し遂げるための最善の策を用いるのだ。


 この自分の意外な変化に戸惑いもあるものの、何か笑いが込み上げてくる。


「怖い方ですね、提督。 敵じゃなくてよかったです」


「全く……、よく多恵は提督を見抜いたものだ」


 竜信は自分の娘に感心する。


「この先見の目を信じたからこそ、私に家督を譲ったんでしょ、お父さん?」


「うむ、違いない」


 いいなぁ……。

 と素直に思った。

 ボクは両親と仲良く会話したことがまるで記憶にない。

 家族なのに他人みたいなものだった。

 父は仕事に夢中で家族など省みることはなく、ましてやボクは次男。

 どんなに頑張っても兄が死なない限り家督は継げない為、父の興味は失せていった。

 母は俗に言う母より女を選ぶような人で、自らの子供に興味を持たず、父に隠れて年下の男にうつつを抜かしていた。

 兄が酒や女に走ったのも思えばこの希薄な家族関係が原因だろう。

 だからボクは家族愛を知らず、娘と父の会話が珍しく、羨ましくも思った。


「提督、ご飯口にあいますか?」


 突然話題を振られ、我に帰った。


「うん、好物だからね」


「好物……ですか。 珍しいですね、野菜を好む殿方は」


「だってほら……、ボクはずっと海の人間だし。 新鮮な野菜を食べる機会は陸の上でしかないだろ?」


「ああ、そうですね。 確かに……」


 肉とか野菜とか、保存の効くものというのが主食な海に生きるものとして、新鮮な食物は好物である。

 ファラス水軍時代の食生活は凄まじかった。

 上陸日という休暇以外、保存食と呼ばれる干し野菜や干し肉、古い穀物など。

 とにかくまずく、食事というのは栄養補給という概念しかなかった。

 食事を楽しむなどという感覚もなく、いかに素早く食べて仕事に戻るかというのを気にする日常。

 その反動かも知れない。

 新鮮なという言葉だけでときめくのは。



 翌朝、すっかり疲れも癒え、ボクら一行は新白衆の里を後にした。

他の作者様の作品を読み耽っていて自分のところの更新をすっかり忘れ気味のふじぱんでございます。


他の作者様に比べ私の作品のレベルの低さに冷や汗タラタラでございます。


精進せねば…。

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