表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/49

リーズ提督17話

 とにかく決行の合図を待つより他はない。

 緊張してないと言えば嘘になる。

 じっと、索敵部からの報告を待つしかない。


「リーズ様」


 ボクは声をかけられ、そっちの方を向いた。

 そこにはウェンデス海軍の軍服を着た女性士官が立っていた。


「って、お前は…」


 新白衆の多恵だった。


「リーズ様が正式な職位につくまではこの件を言うのは控えておりました。 ですが」


 ……………。


「ああ、雇うよ。 この世界、情報は必要不可欠だ。 今も欲しい情報がある」


 多恵はニッコリと笑った。


「私たち新白衆は、武道派ではありません。 情報を集め、主君に献上するのが仕事です。 それでもよろしいですか?」


「ボクは軍人だ。 自分の身すら守れない軍人など、存在の価値もない」


「それでは、この新白衆頭目、多恵……。 命にかけてもリーズ様が欲する情報を集めてきます」


「……頭目?」


 多恵はまだ見た目若い忍びだ。


その多恵が一忍び衆の頭目だったとは。


「頼りになりませんか?」


「いや、畑違いの分野に関して無知なボクがどうという気はない。 ただ今まで送ってくれた新白衆の情報は信頼の価値がある」


「ありがとうございます。 それではこれからも誠心誠意お仕えいたしますわ」


「ああ、早速で悪いが…、今現在、王弟派はこちらの動きに気付いているのか?」


「一人だけ、気付いております。 ですが、問題ないでしょう」


「一人?」


「王弟フメロン殿下でございます」


「なんだと?」


「今回の決起は貴族の暴走です。 王弟殿下の意思によるものではありません……。 王弟殿下はいうなれば祭り上げられたようなものでございます」


「祭り上げ……られた? 貴族に?」


「王弟殿下ご自身には、陛下に対して反旗の意思はありません。 それどころか、陛下に賛同の意があることを推察しております」


「なんてことだ」


「王弟殿下は、祭り上げられた以上、事を静観し成り行きを見守る所存」


「見守る……。 それはつまり」


「敗北を願い、死を覚悟しておられます」


「陛下はその事を」


「存じております」


 なんというべきか。

 ここまで悲運の兄弟がいたのか。

 ただボクは陛下の臣。

 お家事情にまで口を挟むのは越権行為。

 わかっていても陛下の指示に従う。

 それが軍人だ。


「うん、わかった。 では他の貴族どもは?」


「不孝者、フメレオンを討つと自分たちの正義に溺れ、まさか陛下に躍らされているとは気付きもしていません」


「そうか」


「評定の開始と共に、ウェンデス海軍が王港を占拠。 その混乱に乗じ、陸軍が王城を占拠し陛下を捕らえ処刑するのが筋書きです」


「その出鼻を挫くのがボクの役目か」


 まったく……。

 大任じゃないか。

 さらっとボクにそんな大任を押し付けていたのか、車児仙は…。

 食えない男だな、本当に。


「ところで連中はこの艦に関して何か疑問に思ってたりしないのか?」


 艦隊外とはいえ、すぐ近くに停泊している軍艦。

 そんな艦を不審に思わないわけがない。


「警戒していないというのが実状です。 僚艦だと思っている節が見受けられます」


「僚艦……。 おめでたい連中だな」


「先程申し上げたとおり、自分たちの大義に酔っているんです。 酔いすぎて視野がせまくなっているんですね」


「どう攻めるかと思案している中でこのような穴を作ってくれるんだから、張り合いのない」



 一方、王の間。

 フメレオンの前に数名の貴族とフメロンがやってきた。


「なんのようだ?」


「陛下、ご退位の時でございます」


 貴族はにやっと笑って言った。


「退位? 余がか?」


 貴族は書状を拡げ、読み始めた。


「現国王、フメレオンは前王である父を殺し、現在の地位に治まるは不忠窮まりない! これは、ウェンデスの栄誉を傷つけるものであり、その栄誉を回復させんがため、フメロン殿下を筆頭に我らが立ち上がったものである!」


「立ち上がる……とな?」


「見苦しいですぞ、陛下……。 潔く退陣なされい!」

 



 戦艦トップスリー…。


「城より、花火が上がりました!」


「!」


 リファイルがその声に反応した。


「間違えないか!」


 スピーカーから、再び


「間違いありません。 たった今、城から花火が上がるのを確認しました」


「主砲用意! 目標……」


 いよいよだ。

 ボクの号令で戦争の火ぶたがきられる。

 躊躇っていられない。


「敵艦隊、旗艦!!」


「了解! 主砲用意!! 目標、敵艦隊旗艦!!」


 リファイルが復唱する。


 ガガガガガガガガ


 と、主砲台が旗艦に向かって位置を合わせる。


「撃て!!」


「発射!!」



 ドカーーーーーーン!!



 腹に響く大音響。

 主砲が今、発射された。


「命中!! 敵旗艦甲板炎上を確認!」


「第2射発砲と共に、機関全力運転! 敵砲に備えよ!」


「了解! 第2射発砲! 同時に機関全力運転!」


 ドカーーーーーーン!


 発砲と同時に艦が動き出す。



 ウェンデス艦隊、旗艦ヘルメデス。


「なんだ、今の爆発は!」


 フェンは、急に僚艦から砲撃されたことを信じられずそのように叫んだ。


「トップスリーからの砲撃です!!」


「誤射!?」



 ドカーーーーーーン!



「次は何事だ!?」



「ご、護衛艦エリュダイル…、トップスリーの砲撃を直撃。 沈黙です」


「トップスリーの艦長はだれだ!」


「リファイル中佐であります!」


「血迷ったか、リファイルめ!」


「提督! 指示を!!」


 ドカーーーーーーン!!

 

 艦橋が揺れる。


「か、艦橋下部…、被弾!!」


 艦橋に直撃しなかったから今、生きている。


「ダメです。 当艦は、当艦は沈没します!」


「な、なぜだ。どこでどうなった?」


 フェンは信じられないといわんばかりの顔付きでトップスリーを睨む。


「あのトップスリーを沈めるんだ! 我らが挫かれると、我らの大義ある作戦が台なしとなる!」


「そんな事を言っている暇はありません! 早く脱出を!!」


 ズガーーーーーーン!


「弾薬庫に引火!! 消火不能! 消火不能!」


「トップスリーより機銃掃射!」


 ドカーーーーーーン!


 すでに旗艦ヘルメデスは混乱に陥っていた。

 それでも容赦無く、トップスリーの砲撃をただ浴びている。

 指示がないため周りの艦も何をすべきかわからずただ旗艦がいたぶられるのを見ているしかなかった。

 それどころか、武装解除の信号弾を放つ艦まででてくる始末だった。


「総員退艦!」


 やっとフェンが我に返り、退艦命令を出す。

 しかし、出した瞬間に轟音を立て、旗艦ヘルメデスは爆発しながら沈んで行った。


 その光景を見ていた王城制圧のために集っていた陸軍兵たちは愕然とする。

 こんなのは、予定にないのだ。

 急にトップスリーから放たれた砲撃により、旗艦ヘルメデスが沈む。

 ただ茫然とそれを見ていた。


「そこまでよ!」


「!?」


 セレスとその配下が陸軍を囲んでいた。


「あなたがたの企みは失敗に終わりました。 抵抗せず、武装解除を…」


 陸軍兵らは、素直に敗北を悟り武装解除に応じた。



 場所は戻って王城…。


「まだ、何かあるか?」


 貴族らは、トップスリーの砲撃音に驚き、湾岸で起こった一部始終を見届け、膝を砕くもの、地面に手を付き絶望するものなど様々なリアクションをしていた。

 その中でフメロンはフメレオンに向かって軽く礼をした。

 フメレオンは微かに頷いた。



「反逆者どもを逮捕せよ」


「は……」


 車児仙は、貴族たちを立ち上がらせ、


「こちらへどうぞ…」


 と言い、連れていく。

 完全勝利である。

 ウェンデスの歴史がこの瞬間に動いたのだった。


「まず、第一段階の終了だ……」


 フメレオンはそう呟いたのだった。

今回はリーズの視点オンリーだと全く流れが伝わらないので様々な視点になりましたが、なんとなくブザマ…。


二度目の海戦…。


全くブザマ…。



一発いいの当たれば終わりな大艦巨砲主義の海戦だからってアッサリしすぎました。


実際、予期できなかった事態にフェン提督は何もできずに終わってしまいました。


もうちょっと賢い男な設定にするべきだったかと自問自答(^-^;


でも腐りきった貴族の小物という代表人物なだけに賢い男にしてしまうのもなんだかなあっと思った末、こんな結末に。


海戦に迫力不足は否めませんね。


ですが、バカとの戦いはこれで終わりです。

次はリーズと同等レベルの指揮官との戦いになる予定です。

海戦の迫力は次からということで今回は勘弁を

m(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ