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リーズ提督15話

朝早く、車児仙がボクの家やってきた。


「寝ているところ、すみませんが緊急事態です」


「緊急事態?」


「王弟派に動きがあります」


「動きって……、早過ぎないですか?」


「彼らにきっかけというものを与えてしまいましたからね」


「……きっかけ?」


「あなたの登用です」


「ボクの登用……。 そうか、……ボクの登用は陛下の独断っぽい節がありましたからね」


「気に病む必要はありません。 遅かれ早かれ、王弟派と対決することにかわりはないのですから」


「そうですか。 ……ではボクは何をすれば?」


「あなたに艦隻を与えますので、王城から合図の花火が上がったら主力艦隊を砲撃してください」


「主力艦隊を?」


「王弟派海軍軍人が決起のため乗船しております。 王都制圧のために」


「わかりました……。 ですが問題があります」


「何か?」


「その艦のクルーはボクの指示を聞くでしょうか?」


「それはあなたの才覚次第です。 難題かもしれませんがあなたならきっと出来ると私は期待しています」


 ボクが浪人から仕官したのならば、確かに才覚次第だと思う。

 だがボクは敵国から仕官した。

 わだかまりは残るはずだ。

 何よりボクはフェン提督率いる旗艦と、その護衛艦4隻を沈めている。

 彼らからしたらボクは戦友の仇だ。

 その禍根を消すのは無理にしても薄れさせる努力すらしていない状態で、果たして戦えるのか?


「リーズ殿、失敗は許されません。 こちらは先制攻撃を仕掛ける側です。」


 失敗したら逆賊の汚名が残るというわけか。

 陛下は愚王なりのレッテルを後生まで残し、ボクらは陛下をそそのかした悪臣として印象を残し、再起の機会を永久に失う……、か。

 こちらの準備を都合よく待ってくれる敵などいるわけもないということだ。

 敵は敵としているわけだ。

 臨戦準備を整えて。

 そんな敵に正面から戦っても勝ち目は薄い。

 ならば寝首をかけ…。

 兵法の初歩だ。


「………わかりました。 全力を尽くしましょう」


 こちらは統率もとれていない上、数の上では圧倒的不利。

 ボクがこの厳しい乱世を生き残れるかどうか、最初の試練。

 ここで朽ちるならそれまでの男だったということだ。



 ボクはすぐ、与えられた艦隻に乗り込む。


「艦長、はじめまして。 この艦の副長に命じられたリファイルと申します」


 初老の男が敬礼し、ボクを出迎えてくれた。


「戦艦トップスリーへようこそ」


 ボクは改めて自分の乗り込んだ戦艦をみる。

 帆船ではなく、鉄で武装した船だった。

 艦前部にはみたこともないくらいの巨大な砲が2門。

 相当な重量に違いないのは一目瞭然だ。

 何故、鉄でできているこの船は沈まないのだろう。

 帆船でないということは動力は風ではないはずだ。

 なにもかもわからない。

 こんな未知の艦で、ボクは戦うことはできるのか?

 自分の中にあった常識が根底から覆されたこの感覚をどう表現すればいいのかよくわからない。


「今は最低限の説明でいい。 この船の利点と欠点を述べてくれ」


「利点ですか。 動力が風ではなく火なので、燃料切れにならないかぎり自在に動き回ることができます。 後、この砲ですね。 ファラス水軍所持の大砲から比較すると約6倍の射程を誇ります」


「砲撃の際の欠点は?」


「欠点……ですか。 なにぶん新兵器なため、そのような情報ははいっておりませんが…」


 リファイルはムッとした顔で答えた。

 まあ、気持ちはわかる。

 自技術の優れを誇りに思う気持ちが強く、欠点など認めたくないのだろう。

 だが、そのいらない誇りを捨てないかぎり、一流の水夫とはいえない。

 船に自分の命を載せるのだ。

 その船の利点欠点を知らずに船に命を預けることはできない。

 まあ、今は仕方ない。


「やるだけのことはやるしかないな…」


 艦橋まで案内され、艦橋を見渡す。

 ボクが入って来たのを確認したクルーは起立し、敬礼をする。

 見たことのない艦橋の設備をざっと見渡し、興味本位の目をむけるわけにもいかず、最低限の説明だけを求める。

 城からいつ合図の花火があがるかわからないため、時間はない。


「これは何?」


 ボクは艦長席と思われる席に取り付けてあるマイクを見て言った。


「これは伝声管と同じものです。 オペレートを通じて、目的の部署に艦長の声を届ける装置です」


「ほう……」


「全部署に同時放送も可能です」


「そんなことができるのか…」


「海戦において、情報伝達の速度ははやいに越したことはありません」


 そのとおりだと思う。

 情報伝達の速度が全ての戦場を制する。


「……これで喋れば、艦内クルー全てに通達できるの?」


「ええ……」


 ボクはマイクの前に座る。


「はじめまして。 先程、このトップスリーの艦長として赴任してきましたリーズです」


 ファイルは、目を丸くした。


「ボクはかつて、ファラス水軍艦隊5番艦の艦長としてみなさんと戦った者です。 皆さんがボクに対し、恨みや憤りを感じているは最もだと思っております。 ですが、この艦に集ったクルーは、フメレオン王陛下の意思に賛同し陛下の旗の下、集っていると聞き及んでおります。 これから始まるであろう戦闘は、陛下にとって避けて通れない試練であり、この勝敗によって陛下の運命が左右されると言っても過言ではありません。 敵は同等戦力。 勝敗の鍵は、皆さんの心次第で動きます。 皆さん、陛下に勝利を捧げるため、今、一時だけで構わないのでボクに力を貸してください。 陛下の勝利の為に…」


 リファイルは敬礼して


「艦橋部、了解……」


 と言った。

 それに乗って、スピーカーから


「機関部、了解!」


「主砲部、了解!」


「機銃部、了解!」


「主計部、了解!」


「白兵部、了解!」


「索敵部、了解!」

 と、次々と様々な声が流れて来た。


「艦長……」


 リファイルは敬礼をしながら言った。


「私もかつて、ファラス水軍艦隊との一戦に参加したものであります」


 え?


「そして、艦長の船の突撃により弟や息子を失いました……。そのため、艦長に対するわだかまりがありました。 ですが……」

 

 リファイルは敬礼をといた。


「艦長の陛下のための勝利という意見は最もだと思います。 こたびの戦は陛下の興亡この一戦にあります。 我らトップスリー艦クルー一同、陛下の為、命をかけて戦うことを誓います!」


 リファイルは握手を求めてきた。

 ボクはそれに応じ


「頼むぞ、副長」


「ええ、我らと共に勝利を掴みましょう」


 船の至る所から歓声が上がる。

 トップスリーは一つになった…。

人を奮い立たせる演説って難しいですね。


ヒトラーみたいにうまく民族優位性を持たす演説ってのも最も効果があるのですが、そもそもリーズは外国の人です。

この場合はただの皮肉になりますし…。


要勉強ですね(^-^;

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