リーズ提督11話
評定が終わり、周囲の人達がザワザワと色々な話をしていた。
「今日、飲みに行きませんか?」
「最近、妻がうるさくて……」
「やはりガチスは殺しておくべきだと思うんだがな」
評定が終わり、雑談している者たちの会話を聞きながら、ボクはこれからどうすればいいのか思案していた。
車児仙は、陛下派の会合があると言っていた。
どこでやるかも知らなければ、仮に知っていたとしても迷うのがオチだ。
そういえば迷うで思い出したが、サレアお嬢さんにファラスについて教えてくれと言われていた。
かといって陛下派の会合に参加しないわけにもいかないし。
「リーズ殿」
声をかけてきたのはセレスだった。
「車児仙殿から、会合の件……聞いた?」
「ええ、聞いてますよ」
「評定の間に来るのも迷っていたみたいだし、ごめんね。気がつかなくて」
あら……。
迷っていたのばれている。
「なぜ、迷っていたの知っているんです?」
「城の前で会っていたはずなのに評定の間にきたの、かなりの時間がたっているからね」
「なるほど……。 バレバレでしたか」
「でもよく評定の間までこれたね」
「ええ、実はここに来るまで行儀見習いのお嬢さんに案内してもらったのです」
「へぇ〜……。 じゃあ、そろそろ行こうか。 みんな待ちくたびれているかも知れないから」
セレスに案内されて、ある一室にたどり着く。
きらびやかな王城の中では質素な景観のある一室であり、中には10名ほどの武官文官がいた。
「おお、リーズ殿。お待ちしておりました」
車児仙が席を立ち、ボクを迎えてくれる。
「さあ、みんなを紹介します。 こちらへどうぞ」
車児仙に導かれて、席に着いた。
評定の間で受けた、悪意ある視線とは違い興味本位な視線が注がれる。
悪意ある視線は、ファラス時代から経験があり、慣れてしまっていたが、こういう視線はどう対処していいかわからず困惑した。
「リーズでございます。 取り立てた才はありませぬが、皆様の知遇を得て快く思います」
それに反応して、若干白髪の混じった男が握手を求めてきた。
「ヒューリックでございます。」
どこかで聞いた事があるな。
「ヒューリック殿は、ナカラ王国で飛行騎兵団を編成した空の将です。」
車児仙が補足した。
「飛行騎兵団って……、あの気球部隊の……」
聞いたことがあるわけだ。
強大な物量戦を得意とするヴィンセント帝国軍を散々苦しめた空の部隊。
その空の部隊の指揮官がウェンデスに亡命していたとは…。
見た感じ文官の男が次に口を開いた。
「エリックと申します。ウェンデスでは、農務行政官(開墾を主に司る役職。当作の造語)をしております」
他にも、魔法科学(魔法と科学の良い所を組み合わせ、活かそうとする学問。 主にウェンデスにおいては軍事転用主体)の第一人者、ウルブデック。
ボクらファラス水軍を苦しめたあの長距離大砲等を開発した、科学者パンテオンなど…。
そうそうさるメンバーであった。
彼ら、ボクを含め共通して言えることはウェンデス国外生まれか、ウェンデスの貴族ではないということにある。
それはつまり、フメレオン陛下は、貴族に嫌われていることが十分に理解できる。
おそらくだが、自分の一族にも忌み嫌われているのだろう。
だが、それは自分の父を討ったというこの世で最も不孝な行いをした陛下だ。
だからこそ、陛下の味方はウェンデスに縁を持たない者しかいないのか。
逆にいうなら国内の有力者が味方につかないからこそ外から有能な人材を偏見なく集めることが出来たのかもしれない。
「さて、今日はリーズ殿への顔見せということで集まっていただきましたが、このまま解散というのも芸がないのでささやかながら晩餐を用意しております。 ごゆっくりご堪能ください」
車児仙がそういうと召し使いたちが料理を運んで来た。
「陛下からです」
そういって車児仙は酒を取り出し、それぞれのグラスに酒を注いでいく。
ボクのグラスに注ぐとき、車児仙は言った。
「けっこう癖のある人もいますが、みな同じ陛下という旗に集った同志です 。何か困ったことがあったら彼らに相談してください。 きっとリーズ殿の力になってくれるでしょう」
「はい」
ボクは頷いた。
「では、乾杯!」
「「「乾杯!」」」
11話までいってしまいました。
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