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7 料理

念のため補足しておくが、ジャガイモらしきものにしても、ニンジンらしきものにしても、はたまた茄子らしきものにしても、これまで俺が使ってきた食材よりもひと回りからふた回り小さいもので、原型のまま投入したとしても無理があるとは言い切れないサイズだが、ここまで手をかけない料理もなかなかお目にかかれない。


フレイアさんは料理が得意ではないのか? この世界の基準がよくわからん。


ディスケスさんとフレイアさんは戸惑う俺と唯に気付かず、普通に食べている。食べ物なのだから大丈夫だとは思うのだが、恐る恐るスープを飲んでみると、少し塩味の効いた味だった。うっすらとしたピリ辛味を感じたのは、唐辛子ではなくコショウと思われる。コンソメスープならば良いと思ったのだが、これも悪くはない。


そんな俺を見た唯も恐る恐る食べ始める。唯の口には少し大きいジャガイモを木のスプーンで掬い、はむはむ、と食べ始めた。


ジャガイモは、ほくほくだった。ニンジンも柔らかくなっている。茄子も同様だ。シャキシャキしているかと思った玉ねぎも過熱されていて、甘みがあった。食べてみる限り、料理に問題はないような気がする。


「ぱぱ、おいしい」

唯が俺を見ながらそう言った。

確かに味に問題はない。ただ、唯はよほど失敗しない限り美味しいと言うので当てにはできないが。

「ユイちゃん、ありがとう」

味を褒められたからか、フレイアさんが嬉しそうにお礼を言う。

「そうだろう、そうだろう。フレイアは料理が上手いからな」

ディスケスさんも嬉しそうにしている。


フレイアさんは料理が上手らしい。


料理人をしていた俺を基準に考えるのは筋違いとして、唯の祖母の料理にしたってこれくらいは作っていたような気がする。そして、祖母は料理が苦手だったはず。


―――この世界の料理の基準を確認するか


もしかしたら、この世界でも料理人としてやっていけるかもしれない。

他に俺にできることなんて、たかが知れているんだから、わかりやすく料理人としての腕を揮うことが一番近道のような気がする。


そんなことを考えながら食事は進んでいく。唯もこぼさずに上手に食べていた。小さな口で、はぐはぐ食べている姿は小動物のようだ。

微笑ましく見ていると、フレイアさんも同じだったようで、唯の食べる姿を見ていた。


「フフッ、かわいいですね」

俺と目が合ったフレイアさんが、ふとこぼす。

「はい」

食べ終えた俺やディスケスさん、フレイアさんは、唯の食べる様を見ている。

そんな視線に気づかない唯は、ゆっくりと料理を平らげていく。


「唯、もういいのか?」

あらかた食べ終わった唯にそう声をかけると、

「うん、ゆい、おなかいっぱい。ごちそうさまでした」

その言葉を聞いたフレイアさんが立ち上がり、お茶を用意してくれる。お茶は緑茶ではなく、紅茶のようだ。紅茶の種類は詳しくわからないが。


「ぱぱ」

お茶を飲みながらまったりとしていると、唯が俺を見上げてくる。

「唯、どした?」

「あのね、ぱぱのごはんがたべたい」

その言葉を理解したとき、とっさに言葉を返せなかった。


唯は長い間病院で入院していた。当然、その間、病院で用意されるご飯を食べていたため、俺の手料理を食べていなかった。

そういえば、入院中も『ぱぱのごはんがたべたい』と言っていたことがある。その時は、元気になったら唯が好きなものを作ってやると言ったが、約束は守らないとな。唯の大好物はハンバーグ。この世界でも作れるかな。


「そうだな。唯の好きなハンバーグ作ってやるぞ。約束だからな」

「わーい」

唯がバンザイをして喜びを表す。

「よかったですね」

フレイアさんも嬉しそうにしている。

「おい、おい、作れるのか?」

ディスケスさんが不安そうに聞いてくる。俺が料理人だったことは、まだ話してなかったな。


唯が病気で入院していたことはさっき話したので、俺が料理人として仕事をしていたことを話すと、ディスケスさんも納得してくれた。俺の作る料理が楽しみらしい。

まぁ、ただのハンバーグだから期待されても困るのだが。


「ところで、はんばーぐ?とは、何ですか?」

この世界では、名前が違うのか、ハンバーグそのものが無いのかわからないが、ハンバーグを説明するのは難しかったので、肉料理であること、具体的には作ったものを見てくれ、ということでごまかした。ひき肉料理では説明にもならんだろうし。


「わかりました。それでは材料を用意しなければなりませんね」

フレイアさんがどんな材料が必要なのか尋ねてくるので、

「そうですね。玉ねぎはある、パンもあるので、卵とひき肉があればいいんですが」

ハンバーグに必要な材料を挙げてみる。

「ひき肉?ですか?」

「もも肉でもいいですよ」

フレイアさんがわからないといった表情なので、これは俺が見るしかないだろう。


「それでは、夕飯をタケルさんに用意してもらうことにして、お買い物に行きましょう」

フレイアさんが両手を合わせて、そう提案する。

「お願いします」


―――街の様子や食材などの食事情をよく確認しなければな。


一休み後、この世界の街を見ることになった。


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