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15 異世界のハンバーグ


炒めた玉ねぎ、溶き卵、パン粉、挽き肉を木製のボウルに入れ、塩とコショウを振る。

これをかき混ぜるのは、唯に任せることにした。

「唯、手を洗っておいで」

「うんっ!」

何をするのか、わかったのだろう。元気よく踏み台から飛び降りて、水桶のあるところに駆けていく。


これからどうするのだろう、といった様子でフレイアさんがこちらを見ている。どう説明すればいいのか、言葉に窮していると、唯が戻ってきた。


唯が腕をあげ、手の平を広げて俺に見せてくる。

「ぱぱ、きれいになった」

「よし、それじゃ、これを混ぜてくれ」

「うんっ!」

再び踏み台に登り、ボウルに手を入れる。

「やわらかい」

俺を見てそう言うと、視線を戻し、うんしょ、うんしょ、と混ぜ始めた。


唯が作業している間、溶き卵に使ったボウルや、肉を叩いたナイフ、玉ねぎを切ったナイフなどを洗っていると、

「これは、まだ使いますか?」

片付けをしている俺に気づいたフレイアさんが、コンロにのせてあったフライパンを持ってくる。

「いえ、これを唯が混ぜているやつを焼きますので」

「そうなのですか」

ちょっと驚いたようだ。


この反応からして、この世界もしくはフレイアさんの周りでは、ハンバーグはなかったのだろうと推測できた。屋台で肉を焼いたものを出していたので、肉を焼くこと自体はあるのだろうが、肉をミンチにして焼く、という発想が無かったのかもしれない。


「ぱぱ、もういい?」

十分だったので、俺も手を洗い直す。

「それじゃ、ハンバーグの形にしような」

「うんっ!」


ボウルに入っているハンバーグのタネをとり、型を作って両手でキャッチボールをするように投げ、中の空気を抜いていく。俺の様子を見ていた唯も、同じようにハンバーグのタネをとって、キャッチボールを始めた。


「えっと…何をしているのですか?」

フレイアさんが俺たちの様子に戸惑ったように聞いてくる。確かに、知らない人が見たら奇妙な光景かもしれない。

「こうやって、こいつの中の空気を抜いてやるんです」

「くうきを、ぬくの」

ハンバーグは、家にいたころから何度も作っているため、なぜこんなことをするのかを唯には話してあったのだが、ちゃんと覚えていたようだ。

「空気を、ですか」

「くうき、ぬかないと、こわれちゃうの」

これも唯の言うとおりで、ハンバーグのタネの中の空気を抜いておかないと、焼いたときに割れてしまうことがある。このキャッチボールは、それを防ぐための作業だ。

「そうなのですか」

わかったような、わからないような様子だが、1つ実験してみればわかるだろう。

「それじゃ、これ1つは何もしないままにしておきますね」

そう言って、1つだけ、ミニミニハンバーグを用意して取り分けておく。


「ぱぱ、できたっ!」

そうして、ハンバーグが6つできた。大きいのが3つと小さいのが3つ。俺が作ったものが大きいもので、唯が作ったのが小さいものだった。

「それじゃ、焼きますから油を用意してください」

「わかりました」

フレイアさんが厨房の戸棚から木製の入れ物を取り出して手渡してくれた。入れ物には、注ぎ口がついており、この中に油が入っているらしい。フライパンに注いでみると、サラダ油のような植物性の油のようだった。


コンロに戻したフライパンにその油を敷いて、今度は、フライパンを中火のコンロ口に置く。実際、この中火がどのくらいの火力なのか、使ってみなければわからない。


フライパンが十分熱せられた頃合いを見計り、ハンバーグをのせていく。この時、ハンバーグの真ん中を指で軽く押し潰しておくのを忘れない。すべてはのせきれないので、大きいものを1つと小さいものを2つ。それと、実験用のミニミニハンバーグものせた。


「フレイアさん、フライパンのフタってありますか?」

「フライパン? ですか?」

キョトンとされてしまった。これまでの経験で“フライパン”と呼んでいたが、この世界ではフライパンとは言わないのかもしれない。

「これです」

仕方がないので、使っているフライパンを指差す。

「それは、焼き鍋ですね。フタもありますよ」

やはり、戸棚に仕舞ってあったフライパンに合う大きさの木製のフタをとってくれた。


それにしても、“焼き鍋”か…。

フライパンも、確かに鍋の一種と見ることも、できなくはない。用途は主に焼くことにあるのだから、焼き鍋と呼んでも間違ってはいないとは思うが。


この厨房を見渡すと、お昼に出てきた寸胴鍋、両手鍋が大きさ別に2種類、片手鍋の1つがあった。


ハンバーグを裏返し、フライパンにフタをのせて蒸し焼きにする。

「ぱぱ、おいしいにおい…する」

焼いている俺の横に立ち、鼻をウサギのようにヒクヒクさせている。

「もう少しだからな」

「うん、ぱぱ…ケチャップは?」

唯にそう言われて、初めて気づく。今までハンバーグを焼いたあとに残る肉汁と、赤ワインか日本酒、トマトケチャップなどでソースを作っていたが、今回はどうしようか。


「フレイアさん、トマトとお酒、ありますか?」

「トメトですね。ありますよ。お酒はユイちゃんに飲ませちゃダメですよ」

トマトの発音が違う気がしたが、出てきたのはプチトマトだった。

それと一緒に木の器に注いで、持ってきてくれたお酒を指で味見してみると、渋みのある赤ワインだった。


まず、トマトを細かく刻み、厨房にあった片手鍋を使って強火のコンロ口でとろみが出るまで煮詰める。ここに玉ねぎのみじん切りで余った部分を刻んで少量加え、塩コショウを振って、トマトケチャップモドキを作った。


フタを開けてみると、ハンバーグがいい具合に焼けたので、残りのハンバーグを焼いた。

その後、余った肉汁にトマトケチャップモドキとワイン、買ってきた醤油を少量混ぜ合わせ、ハンバーグソースの出来上がりだ。


そして、この世界の材料で作ったハンバーグが出来上がった。



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