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12 公園の屋台


帰る途中、行きに見た公園によってもらうことにした。少し遠回りになるが。

「屋台で買ってもいいが、今日は小僧が夕食作るんだろ?」

ディスケスさんにそう言われたが、今回はこの世界でどのようなものが食べ物として売られているのかを確認するためのものだ。唯にも見るだけだと言ってある。

「この世界では、屋台は普通にあるものなのか?」

「まぁ、街と呼べるようなところにゃ、公園なんかにあるがな」


行きに見たときはわからなかったが、公園の真ん中に池があるようで、その周りにベンチが置かれている。その周囲を囲むように点々と屋台があるのだが、今は5つの屋台に人がいた。


「屋台はあるけど、人がいないのはどうしてなんだ?」

「そりゃ、この時間だから、人がいないんだろ。まぁ、空き家かもしれんがな」

空を見上げると、太陽が傾きはじめている。俺の感覚でいうと午後3時くらいか。

「この時間だと店をやらないのか?」

「あぁ、昼に店を開いて、一回休み。夕方もう一度開くってのが普通だな」

なるほど。確かに公園にいる人は、まばらといっていい。店が空いていないから、まばらなのかもしれないが。

そんな話をしている最中にも、1人が空いてない屋台のところにきて準備を始めていた。

「俺もよく知らんが、聞いた話だと、朝に準備して昼に売る、また準備して夕方に売る、というやり方が普通らしいぞ」


二毛作みたいだな。

ともかく、どのようなものが売られているのかを見たいので、人のいる屋台を覗いてみた。

「ぱぱ、おにく、おっきい」

唯が見たのは、何らかの肉を串で刺して焼いたものだった。

……マンガ肉というものをご存じだろうか。知っている人は想像できるだろうが、骨に肉を纏わせたようなものなのだが。

さすがにこの屋台では、骨ではなく木串だったが、持つところが両端についているのは、なかなか斬新だと、思わず感心してしまった。唯は串物だと、焼き鳥しか見たことがないため、肉の大きさに驚いている。

「ずいぶん大きいな。食べづらくないか?」

「あれをガブリっといくのが、男ってもんだろ」

ディスケスさんはともかく、唯には無理だな。ワイルドすぎるだろ。


「ぱぱ、おひるに食べたやつ、あった」

次に唯が指差したのは、フレイアさんが昼食として出してくれた、野菜の入ったスープだった。

たまたま、お客がきたらしく、木の器で渡していた。

「フレイアの作る野菜スープは、あそこのよりうまいぞ」

あれは野菜スープでいいのか。自慢のように言われたが、食べ比べた訳ではないので実際のところは、わからない。


それにしても、唯は“スープ”という言葉を知っているのに使わなかったな。偶然なのか、それともスープと認められないのか…


それ以外の屋台は、飲み物を扱っているところ、何らかの肉を串ではなく木皿で売っているところ、魚を串焼きにして売っているところ、それとリンゴ―――リリーの実を焼いたものを売っているところだった。

リリーの実を焼いているところを唯はジッと見ていたが、欲しいとは言わなかった。手にリリーの実を持っているし、昼食を食べたばかりだから欲しいと思わなかったのかもしれない。


「何か買うわけじゃないんだろ? そろそろ戻るぞ」

ディスケスさんの言葉に頷いて、公園を出る。

公園からフレイアさんの待つ家に戻る間、この世界のお金のことについて聞いてみる。


「この世界のお金ってどうなっているんだ?」

「お金か? これだな」

そう言って、何かを見せる。

「まず、よく使われているのは、金貨、銀貨、銅貨の3つだな。貴族連中だと、金板ってのもあるんだが、まぁ俺たちが使うことはなかなかないな」

見せてくれたのは、金貨、銀貨、銅貨らしい。金色のコイン、銀色のコイン、赤銅色のコインだったので、それぞれ金貨、銀貨、銅貨なのだろう。

「銅貨が100枚で銀貨1枚に、銀貨100枚で金貨1枚に交換してくれるところがある。まぁ、普通は使わないがな」

「何でだ?」

「手数料が取られるからな」

この世界にも銀行のようなところがあるのだろうか? ディスケスさんに言いぶりだと両替商があるようだが。

「たまに、銅貨10,000枚を金貨1枚に替える、というのはあるかもしれんが」

10,000枚も家に置いておくのは邪魔だからな、と付け加えられた。


「ほら」

ディスケスさんが銀貨を渡してくる。銀色のコインは、何かの模様が描かれているが、俺にはわからなかった。唯も渡された銀貨を覗き込んでくる。

「その模様は、アカルナイ皇国の国章だな」

俺が見ていたからだろう、その模様の説明をしてくれた。

「ん? 国によって違うのか?」

「そりゃそうだ。どこで造ったものか、わからんだろう? まぁ、単位はディオール<D>で同じだがな」

単位は同じなのに、貨幣は別なのか。

「もともと、お金は女神から下賜されたもの、と言われているから、女神ディオネから採ったディオールを使っている、というのが教団の教えらしい」

仮にアカルナイの貨幣をハルキスにそのまま持っていっても、一応は使えるらしい。


「そう言えば、さっきの屋台はどれくらいの値段なんだろう?」

「さっきのところのか? 食べ物は、だいたい銀貨1枚、100Dくらいじゃないか?」

この世界の価値がよくわからないので聞いてみると、そんな答えが返ってきた。


大雑把に考えて、銅貨1枚、1Dが1円ということだろうか。

マンガ肉モドキが100円というのは安すぎるような気もするが、この世界の物価が日本より低いと考えれば、妥当な線かもしれない。


「今日の買い物は、1500Dといったところか。コショウやソイなんかが高かったからな」

ディスケスさんが今日買ったものの金額を教えてくれた。

最後に、貸しだからな、と付け加えられたのは、今は聞こえなかったことにする。


やはり、屋台を開いて、お金を稼ぐのが俺には合ってそうだな。

そんなことを考えながら、家路についた。



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