表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

一人百物語 2

ここの子

作者: 犬猫夜行
掲載日:2026/07/20


津村さんが勤める介護施設での話。

施設の入所者の中に、

「夜中になるとここにいる子供が押し入れに入ってくる」

と何度も訴える入所者がいた。その人は本田さんというおじいさんで、認知症の症状が出始めている人だったため、津村さんをはじめ施設の職員の人たちはその症状による妄想か幻覚だろうと思っていた。

しかし、本田さんは自分の部屋の押し入れに入ってくるという子供の事を

「ここの子。赤い着物で裸足の、髪の短い女の子」

だと言い、妄想にしては細かいところまで言うんだな、でもそれが妄想というものなのかな、と津村さんは思っていた。


それからしばらくして、津村さんが同僚と、別の認知症の入所者とデイルームにいると、その入所者が窓の外を指差して

「子供がいる、ここの子だ、ここの子だぁ」

と言うので、やはり幻覚だろうと思いながらも

「どんな子?」

と津村さんが聞くと

「赤い着物だぁ。男の子かぁ」

とその入所者は言った。

(え?)

その言葉に、津村さんは思った。

赤い着物、ここの子?

それって。

ここにいる子供が押し入れに入ってくる、とよく言っている本田さんと同じものが見えているとすれば……

髪が短い女の子が男の子に見えたんだ!

と、やはり本田さんに〈ここの子〉の話を聞かされ知っていた同僚と無言で顔を見合わせ、しばらく声が出なかった。


〈ここの子〉の話は施設内では知られた話だが、職員や看護師で実際に見た者はあまりいない。

が、入所者の中には〈ここの子〉の事をいう人は何人もいるという。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ