決闘
目が回る
視界が陽炎に呑まれた
腿を掠めた鏃には
多分死ぬ毒
果たし状の『一対一』など
初めから信じていない
なのに迂闊
この有り様よ
『卑怯』と叫ぶが
『どの口で』との反論は
これ以上無い程的を得て
取り返しの付かぬ矢傷となる
『心が体を動かすのだ』
心で嘲笑った師の言葉に
すがる我が身は滑稽か
囲む仇敵が嘲笑で追い打ち
震える指で柄握り
白刃抜いて構えれど
立てた刀に額を当てて
祈るように寄りかかるのが精々
渦巻く視界を見渡せど
仇
取り巻き
歪んで見えず
されど嘲笑捉えたり
痛みはもう意味がない
矢が貫く節々が
無情に歩みを咎める
これまで義は語ったが
その実
義とは真逆の道程
ここまで道は歩いたが
寄り道と裏道しか知らぬ
よく考えると獣道だった
結局名とは無縁
悪名でさえも
ただふらふら節操無しに振る舞い
薄っぺらい意地にこだわっただけ
もはや猶予無し
血を洗うための血溜まりの詰まった血の袋は
尽きようとしている
走馬灯?
思い出したい思い出など
どれ程の怒りと憎しみを示しても
始めから最期まで
俺は取るに足らぬ
一度も真面目に振ったことの無い愛剣は
やはり
応えない
真昼の蒼が闇に染まった
血に流れる鉄の味よりも土や砂利や砂や泥のそれが




