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Interests

私が勇者と旅をしたことがあるジェミだとわかると、シーノは家へ招いてくれた。

家の中は外装の印象に近く、質素なものであった。

聞くところによると彼はちゃんとした勤め先があり収入もちゃんとあるはずで、もう一つ上の暮らしを無理なくできる気がする。

片付いてはいるが書類があちこちにある。たぶん仕事関連で勇者に関するものだろう。

ただそれ以外に、話に聞いていたようなものは見当たらない。


案内されるがまま私は椅子が一つしか無いテーブルに座らせてもらう。

一応紅茶があると言われたのでいただくことにした。

たぶん、私が初めての客だろう。誰かを招こうという意思がこの家からは感じられなかった。


お湯を沸かす音が聞こえる。

紅茶を入れてから本題に入るつもりなのか、それとも何を言えばいいのか迷っているのか。


「もしかしたら色々と聞かれるかもしれないと思っていたけれど、リトの誇張だったかな?」


シーノという人間の感じが知りたかっただけなので、特に遠慮とかは無しにする。


「どうでしょう、そこまで誇張でもない気がしますが、いざ本人を目の前にすると気を使ってしまいます」


そういう割には落ち着いている。まぁ、新聞屋なのだから当然の対応だろう。


沸騰寸前くらいで火を止めて、マグカップに紅茶が注がれる。

いかにも男の一人暮らしといったところだが、私としてもこういう方がやりやすい。

しぶみが少なくておいしい。私が適当に入れているやつとは茶葉が違うのだろうか?


さて、どうやって話を切りだろうか?

キッチンにいるシーノの頭を見て、私は考えてきた通りのことを言う。


「頭のそれ、とらないの?」


シーノはわずかに動揺して、つけているターバンを触った。

私は彼が何かを言う前に、自分の前髪を掴んで持ち上げてみせる。

私の髪の中から出てきたものを見て、彼は目を丸くした。


「その角…」


「君も、キューマ人じゃないの?」


シーノはゆっくりとターバンを右手ではずし、左手で髪をかき上げる。

私と同じ、髪に隠れてしまうほどの小さな角が彼の頭にもあった。


「これもリトさんから?」


「そうだけど、ヌイっていう人から聞いたって言っていたよ」


シーノは困った顔をした後、何かを察したように苦笑した。


「わざわざ僕なんかに会いに来るほど、勇者を崇拝するキューマ人が珍しいですか?」


「失礼だとは思うけどその通りだよ。一応言っておくと純粋に興味だけ。私は生まれた時から外の世界にいるから、どっち側とかは無いからね」


「そうですか。たしかに、あなたもキューマ人となると聞きたいことが増えてきます」


この世界には二つの人種が存在する。

角を持つキューマ人と、角を持たないタージュ人。

そして私がシーノに興味を持った理由は、"勇者が引き起こした戦いは多くのキューマ人を敵にまわすものであり、だからキューマ人は勇者を恨んでいる方が自然なくらい"だからである。


ある時、勇者はキューマ人にとっての聖地がタサン病の根源と公表して、そこを封印したいと交渉を始めた。

当然その交渉は受け入れられなかったが、次第にその話が本当であると次々に明らかとなり、タサン病に苦しむ人達が火種となって、今まで燻っていた人種間のわだかまりが一気に燃え上がった。

それは大きな戦いとなり、勇者側の勝利と共に聖地は封印された。

そのおかげでタサン病は激減している。

しかし、聖地のために戦ったキューマ人の怒りと、一部のタージュ人による偏見が今なお問題になっている。


だから、勇者の行いをしかたないことと受け入れるならまだしも、それを称賛しているのは特殊と言わざるおえない。

異常と言ってもいいかもしれない。

勇者の時といい、どうも私はそういう人間に興味を持ってしまう悪いクセがあった。


「じゃあ私のことから先に話そうか」


私は自分の両親のことと、自分の価値観を先に説明した。

そして、勇者と出会ってからについて話し始める。


「あの子は初めて会った普通じゃない人間だったよ。

目的が妹を助けてもらった恩のためだったのは後から知ったことだけれど、そのためにあれだけの人間を巻き込む大事件にできたのは狂人だけが成せる業だね。

何割かは騙されていたって可能性はあるだろうけれど、まともじゃないのはたしか。

おっと、勇者の悪口は言わない方がよかったかな?」


シーノの表情はぴくりとも動かなかった。

このくらいのことなら慣れているということだろうか?

リトの話によると、勇者の偉業を聞いて回り、それを新聞の記事にしていたとか。

勇者はタサン病を解決しようとしながら、各地で色んな人助けもしている。

それが偶然なのか必然なのか、その人達が結果的に勇者の味方として戦ってくれることになる。

あまりに出来過ぎた話で少し気味悪さを感じてしまう。

タージュ人にとってそれが逸話に聞こえるのはまだわかるが、キューマ人のシーノにとってもそうなりえているのはなぜなのか?


彼は私の期待に応えてくれるだろうか?

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