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告白

「は、はい」


ソリーサさんが不思議そうな表情でそう答えてくれた。


「なんだよ急に、それがどうした?」


ウルスさんがすかさず食いついてくる。あわよくば話が少しでも逸れればいいと思っていそうだった。


「実は、魔法道具の発明家であるカプーリさんが知っていたんです。

ライブさんがソリーサさんにマズー霊石を渡していることを」


それを聞いてウィルコさんもペンダントの話を思い出す。


「だからソリーサのペンダントの中身がすぐにわかったのですね」


「はい。といっても、実物をみていないのでまだ確定はしていませんが。

僕がソリーサさんを訪ねてきたのは、僕の先輩がカプーリさんからそのことを聞いていて、もしかしたらこの一件と関係があるんじゃないかと考えたからです」


僕はウィルコさんの方を見て続ける。


「しかもカプーリさんは、ウィルコさんに僕の先輩ヌイさんについても話されています」


ウィルコさんはそのことを嚙みしめるように頷いた。


「最初はカプーリさんがこの件を秘密にしておくべきではないと考えていたと思っていましたが、これって、実は勇者ライブが望んでいることなのではないですか?

もしソリーサさんが望むなら、自分の真実を知ることを」


ウルスさんに、あきらかな動揺の色が見える。


「だったら、そのカプーリさんって人に聞いたらいいんじゃないか?」


「その価値はあると思いますが、ここまで回りくどいとすべては知らないんじゃないですか。

例えば、ライブさんとタリサージさんの間でなんらかの契約があって、勇者になったきっかけを公表してはいけないとか」


ヌイさんが話してくれた勇者が自殺してしまった日のことを思い出す。

カプーリさんは慎重に、勇者が自殺したとヌイさんに話したと言っていた。もしかしたらあれは周りを警戒していたのではなく、このために勇者が打ち明けことだったのだと気が付いて、少し動転していたのではないだろうか。


僕は改めてウルスさんに向き直る。


「ウルスさん、もしライブさんから何かを聞いているのなら、それは絶対の秘密なのではなく、なにか条件付きだったのではないですか?」


ウルスさんが答えに迷っていると、ソリーサさんがウルスさんの手を離し、真っすぐウルスさんの顔に目を向けた。

その表情は、穏やかに見えてどこか悲し気に思えた。


「ウルス」


その一言にすべてが詰まっていた。


知っているなら話してほしい。

私のことを考えてくれてありがとう。

でもそれはあなたが背負うことではない。


ウルスさんの両腕は力を失い、うなだれる。


「それを聞かされたのは、ソリーサとの婚約を伝えた次の日だ…」


ソリーサさんのために隠しておくと決めていた秘密が語られる。


「それを俺にだけ話す。ソリーサにも伝えるかは自分で決めてくれと無責任なことを言った後、あの人はこう言ったんだ。

"ソリーサを救えたことで俺の命は尽きる。もしその意味を知りたかったら冒険家のジェミを探して、マズー霊石のせいで勇者は死んだと言え。

ソリーサが俺の死を受け入れてくれたならそれでいい。でも万が一、不透明な死因に心を病ませるようなら真実が必要になるかもしれない"…と」


明かされた内容、勇者からの伝言はとても曖昧なものであった。

が、ウルスさんがそれを隠そうとした理由はなんとなくわかった。

聞いた内容から察するに、勇者の命を差し出して妹の命を救ったように聞こえる。

そんなことがあり得るのか?当然その疑問が浮かんだが、ソリーサさんの様子を伺うと身に覚えがあるような様子だった。


目は大きく開かれ、唇が小さく震えていた。


「わ、私が…あの時助かったのは…」


ふらつくソリーサさんをウルスさんが支える。

ソリーサさんからそれ以上言葉は無い。

ウルスさんは静かに呼びかけながら、ゆっくりと地面に座らせる。


その様子をただ茫然と見つめるだけだった僕にウィルコさんが近づいてくる。


「ソリーサは幼い頃大病を患っていたのをご存じですか?」


「はい、そのためにもライブさんは働きに出ていたと」


「医者が診る前に治ったのでなんの病気だったのか正確にはわかっていませんが、その症状を聞く限り、自然治癒は考えにくいものだったのです。おそらくですがタサン病だったのではないかと」


タサン病。

発生源や治療法などわかっていることがほとんど無い未知の病。

一説には、大地に溜まった瘴気がどこからか噴き出して、それを吸ってしまうとかかる呪いとも言われている。

そのため、大地への祈りや供物はてまた生贄といった話も付いてまわる。


「もしその言い伝えが丸ごと本当だとして、

勇者は自ら生贄となり、マズー霊石を使ってソリーサさんを治したと?」


それが本当に合っているのなら、勇者が隠しておきたいと考えるのはわからなくもない。

助けた妹には、そんなことを知らずに幸せでいてほしかったのだろう。

それだったら、どこにも記録が無いのも頷ける。


しかし、本当にそれだけだろうか?

それだとタリサージさんは勇者の願いをすべて叶えてあげただけの聖人になるが、そうなのか?

そして、世界を平和にする旅とはいったいなんだったのか?

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