02話 迷わず訪れるもの
朝は迷わず訪れる
カレンが朝の光を感じ、いつもより早く目が覚めた。
「ふぁー」
欠伸と背伸びをして、周りを見渡す。
寝相もすごいが、豪快なイビキをして寝ているロタ、それと対照的に静かにシーツに収まって寝ているフィーネ。
いつもと違うのはフィーネがうなされている。
「・・・・・・」
一旦記憶をたどり、
「あー、今日はフィーネお休みの日だったねぇ」
カレンはそう呟きながら、ベッドから起き、フィーネを確認しに行く。
土気色の表情と、すごい汗だった。優しく額の汗を拭き取り手を当てる。少し体温が高い。
「あんたも毎月大変ねぇ・・・。私は軽い方でよかったわ」
優しい表情でシルフィーネの頭を撫でながらそう呟いた。
バチーン!!
カレンは目を疑った。
体調の悪いフィーネの為に水と手拭いを調達して部屋の外から帰ってきた風景に言葉をなくした。
「・・・あ・・・あんた、な、な、な・・・なにしてんの!!」
なんとか言葉になった言葉でロタを怒鳴った。
目の前にある風景は、ロタが綺麗に折り畳んだシーツでシルフィーネを叩いているシーンだった。
それはいつもの通常の風景だった。ただ一つシルフィーネが超絶不調であることを除き‥
「ちょっ、ちょっとフィーネ、大丈夫!?」
駆け寄りシルフィーネを確認する。かなり虫の息になってはいるが、意識があるようだ
なにかをカレンに伝えようとしている。
「・・・え、なに?ちょっと‥」
聞き直すカレンに弱々しくかすれた声で、伝えてきた。
「・・・の・・・う・・・、・・・脳みそ・・・プー・・・に・・・」
カレンはあまりの内容に目をパチクリさせた。そして一瞬頭の中が真っ白になり、冷静さを取り戻した。
「もー、ロタ! 今日フィーネは月のもので動けないの!!」
毎月の事だから、いい加減理解しなさいと思うのだが、自分も毎回同じように焦っているのに気づいた、そしてロタはきっと覚えてくれないだろうと、そこは飲み込んだ。
「あ〜、そうだったんだ!、大丈夫かシィル!!」
ロタが申し訳なさそうにシルフィーネに駆け寄って来た、
「はっ!」、これは危険な予感がする!カレンは迷わずそう思った。
完全に弱り切ったシルフィーネを抱き抱え明らかに過剰に揺すり始めた。
「やめんかー!」カレンは手元にあった手拭いで思いっきりロタをはたいた。
「じゃあ、ジーナには伝えておくね。」
カレンとロタは弱ったシルフィーネを介抱し、仕事に赴いた。
シルフィーネはこうなると二日くらい動けないのだ。
「全く、戦場で二日も動けないでは死んでしまうぞ!」
ロタは呆れてそう言い残した。
しかし本当は、彼女たちは知っている。生死をかけた戦場での緊張感の中では、このような不調すら後回しになる。平和だから不調を感じ休めるのだと。
「・・・へいへい・・・それは悪うござんしたねぇ・・・」
ロタの言葉に小さな声でそう答えた。
こんなことがあっても、また明日には同じことが起こるのだろうなぁ・・・
カレンはそう思いながら部屋を出た。
日常は別け隔てなく、普段通りに包み込んでくれる・・・。
その日も迷わず過ぎていった。