27話 おめかしをするもの
「ん~!!」
王宮警備隊とアマゾネスの対決が終わって一週間ぐらいが過ぎたあたりでシルフィーネの全身の湿布が取れ、晴れて自由の身になった。
「あぁ、退屈だったわ! やっと自由に動けるのね。」
大きく背伸びした後に、嬉しそうな声をあげた。近頃はみんな忙しいのか、あまりここに集まらないので、外の様子はよくわからない。包帯を取ってくれたケイトがジャガイモを克服したことは聞いたのだが・・・
シルフィーネは立ち上がって外に出ようとした。
「あっ、今はまだ外に出ない方が良いですよ。ましてや、そんな下着まがいな服装ではやめた方が良いです。」
と。取り外した包帯を巻いているケイトが静かな口調で注意する。
寝間着として着ているシンプルな白いワンピースの服装のシルフィーネを窘めたのだ。
「何を今さら・・・いつもこの格好で宿舎周りは出歩いてるじゃない。」
さすがに仕事場や街中にこの格好で出歩くわけにはいかないが、ここは女性しかいない女宮城の衛兵宿舎なのだ、一体誰が気にするのだというのだ?
ガチャリ。と扉を開けて外に出ようとした。
「・・・ん・・・?」
なにかいつもより人通りが多い気がする・・・ちょっと不安になって恐る恐る少し開いたドアから辺りを見回すと、ギョッとして慌ててドアを閉め踵を返した。
「・・・えっ・・・なに・・・この人だかり・・・」
たしか、アマゾネスは二~三十人規模だから、今の時間帯は多くても十人くらいしかこのあたりを行きかう人はいないはず。しかし、明らかにその三倍くらいの人影が確認できたのだ。
「あれから、入隊希望の方が増えて、今日あたりから、適性を見るために体験で入隊してもらっているのです。」
ケイトが淡々と今の状況を教えてくれた。
「そういうことで、そんなはしたない格好で外には出られませんねぇ・・・さぁ、着替えましょうね。私がお手伝いいたしますよ。」
ちょっと怪しい視線がシルフィーネを襲った。
「い・・・いやね・・・着替えは一人でできるから・・・」
何やら不吉な危機感が身をよぎったのだが、そういうのが精いっぱいだった。
「そんなこと言わずに・・・。」
ユラリと近づいてくるケイト・・・ニヤリとした表情で・・・特に目が怖い・・・
「・・・あ・・・いや・・・その・・・私、病み上がりだから・・・」
「それならば尚更ですわ、私が着替えのお手伝いいたしますわ」
「こ・・・こら・・・あのねぇ・・・」
抵抗するシルフィーネを抱えケイトは部屋の奥へと向かった。
「ちょっ!あんた結構力あるわね・・・」
「さぁ、しっかりとおめかししましょうねぇ。」
虚しく抵抗するも、着せ替え人形を着飾るが如くにケイトに弄ばれることとなった。
「うーん、シィルにしては可愛く纏まったもんだなぁ・・・」
「フィーネったら、すっごくカワイイ。」
「・・・まぁ、あんたがこんなに可愛らしい格好するなんてねぇ・・・」
「・・・・。」
少々幼い顔のメイクと、ツインテールの髪型にそれぞれ赤いリボン、そしてどこから持ってきたのか、フリルのついたスカートに大きく白いリボンのついたフリルのシャツ・・・その、まるでどこかのお嬢様を思い浮かべるような恰好をしたシルフィーネを連れて、ケイトはとても楽し気に隊舎へときたのだ。
「あんた、よくその格好でここまで来たわね。」
最後に楽しそうなアーシャに言われてシルフィーネはさらに言葉を失った。
「あら!耳まで真っ赤にして。可愛いとこあるじゃない。」
アーシャはさらに嬉しそうな含み笑いと一緒に追い打ちをかけた。
「・・・もう・・・からかわないで・・・!」
そう返すのがやっとだった。
「しかし、普通の恰好で来てたらもみくちゃだったぞ。」
ロタがふいにそう言った。確かに今の彼女は一目ではシルフィーネとはわからない格好をしている
「・・・なんでよ!」
少々不満げにシルフィーネが聞き返した。
「そりゃぁよう・・・」
ロタがニヤリとした表情でシルフィーネに向けて
「今の入隊希望の半分くらいが、最強の隊長を打ち破ったシィル目当てだかんな。」
あっけらかんとそう答えた。対するシルフィーネは、しばし大きく目を見開いて瞬きを忘れた。
「・・・はいっ・・・・?」
三拍くらい間を開けて・・・
シルフィーネが理解の追い付かない感嘆符をあげた。




