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Option of Amazoness  作者: カピパラ48世
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21話 痛みと闘うもの

「始め!!」

コウの声が聞こえたと同時にシルフィーネが前に出る。そしてウォルドの剣に突きを出す。ウォルドは剣をすっと動かし、それを避ける。

「ふん!!」

気合の入った声と共にその剣をシルフィーネに向けて振り下ろす。シルフィーネは左側へ回り込むように躱し、そのまま右の肘をウォルドに向かい繰り出す。避けるウォルド。そこへ独楽のように回転をかけたシルフィーネの剣がさらにウォルドに切りかかる。両手で剣を持っていたウォルドが、左手を離し、自分の右手の下からシルフィーネの右肩を掴み、独楽の回転を止めた。一瞬剣の動きが止まったが、シルフィーネはそのまま腕のみの動きで切りかかろうとする。そこへ右手のみとなったウォルドの剣がシルフィーネに向けて振り下ろされる。それに気づいたシルフィーネが切りかかる剣を防御に回す。


ガキン!!と強い音が鳴った。


シルフィーネが押し付けられるように屈みこんだ。それを確認した後に、シルフィーネの肩を掴んだままのウォルドが彼女を放り投げるように投げた。

シルフィーネはたまらず転げた。ズンと下腹に痛みが走る・・・が、すぐに姿勢を整え間合いを取った。


一瞬の間に激しい攻防があり、観客は息をのんだ。呼吸を忘れているかのような緊張感がコロシアムを支配していたが、この休憩のような間合いのタイミングに観客は我に返った。

―――そして―――

ワー!!!という地を揺るがさんばかりの歓声が起こった。シルフィーネは顔をしかめた。

“・・・いや・・・この振動はつらいわね・・・・”

そして

“剣を受けられるのも受けるのも何とか我慢できそうだけど、打ち付けられるのはツラいわね・・・”

地面に転げた際の振動を思いだし、そう反省をした。



シルフィーネはしかめた表情を元に戻した。弱みを見せて相手に調子づかせるわけにはいかない。

「試合が始まる前の状態を考えると、よくそこまで動けるものだ。」

ウォルドがシルフィーネに向けそう呟く。

「あら・・・そうかしら・・・でも・・・今回の闘技は私もいろいろ驚いたわよ。」

シルフィーネが軽い口調で答え、右手をウォルドに向けると人差し指をあげ、言葉を続けた。

「アーシャが仲間の為に動いてくれたこと・・・」

そして、中指をあげ、二つ目ということを示した。

「ジーナが、二勝せんが如く、奮闘したこと・・・」

さらに三本目の指として親指を立てた

「あなた達が、やっぱり強かったこと・・・」

それを聞いたウォルドは、「フッ」と微笑した。シルフィーネはさらに薬指を立て・・・・つられて小指があがってきた。「おっ!」というような失敗を隠すような表情をした後に、手の形を崩して、親指を畳み、他の指で4つめを表した。呆れた表情のウォルドを尻目に、

「・・・え・・・えっと・・・そうねぇ・・・」

照れを隠す接尾後の後にはっきりとした口調でウォルドへ言うその表情は自信に溢れていた。

「ロタとカレンが、「かわいい女の子」って思い出したこと・・・」

ウォルドはそれを聞いて苦笑いした。そうだ、誰であれ、王国の民を守るのが王宮警備隊である。そうウォルドは考えてきた。鼻っ柱を折ることが良いこととは思わない。我々が道を示して導く。それが役目と信じている。

「みんな必死で頑張ったのよ・・・」

言い終わると、シルフィーネは大きく深呼吸し右手を開き自分の方へと向け、

「だから、私もちょっと頑張ろうかしら・・・」

自分に向けてそう呟いた。


対峙していた二人の緊張を打ち砕くが如くウォルドが切りかかる。それをシルフィーネは、左足を軸に回転するかのように躱す。

“・・グゥ・・・”

回転のような体をひねる動作は下腹に応える。しかし、直線的な動作で避けていては動きも読まれやすいし、何よりも間合いが遠のくので攻撃ができない。

ウォルドは連撃で切りかかるが、シルフィーネは、それを鮮やかに避け回避した。

三回目の切込みの後、シルフィーネは避けるときの回転の動作に乗せ切りかかる。ウォルドはそれを剣で受けた。

ガキーン!!

パワーで上回るウォルドを回転によるスピードで押し返す。

「グッ!!」

ウォルドは思わず声をあげた。

“まったく、簡単にいかないわね!!”

何食わぬ表情の裏でシルフィーネは悪態をついた。



「・・・押してるわね・・・」

アーシャが呟いた

「・・・いや・・・互角さね・・・」

ジーナが悔しそうに呟いた。互角では体調の悪いシルフィーネは分が悪い。

少々うつむき加減で闘技場の二人を見つめた。シルフィーネは諦めていない・・・。

“私はどうしたらいいのだろう・・・”

ジーナの気持ちが揺らいだ。




シルフィーネが剣を繰り出す。ただでさえ体力に差があるのに今の体調を考えると、さらに不利だ。早くケリをつけたいというのが本音だ。

対するウォルドは、それを冷静に受け止める。

シルフィーネは顔をしかめた。この状況で冷静に対処される時点で良い状況とは言えない。剣技はひいき目に見て互角としても、これだけのパワーの差があるのであれば、本来はカウンター攻撃をしたいところだが、ウォルドは確実性のない時には、なかなか先手を打ってこない。

「見かけによらず慎重ね・・・そんなんじゃ勝てないわよ!」

ウォルドに挑発した・・・が・・・乗ってこない

「俺は、この国を守る隊長だ。卑怯とも言われようとも、負けることは許されないのだよ。」

挑発と理解してシルフィーネにそう答えた。

「・・・あら・・・真面目ね・・・今度アーシャにその精神を教えてあげて頂戴。」

負けじと皮肉を込めて言葉を返した。

攻めても防がれる。待っていては勝てない。

「ロタ・・・早く起きてこないかなかぁ・・・・・」

シルフィーネは少々上目遣いでそう思った。




「まぁ、この状況だと私が先手を打たないと進展はないのよねぇ・・・」

短い時間にらみ合いが続いていたが、進展どころか、何かに集中していないと下腹の鈍痛が気になって来るので、シルフィーネは少々カウンターを諦めることとした。

二歩後ろに下がると、小さな跳躍を始めた。ウォルドは動かない。

“跳躍って結構隙が多いから狙ってきてもいいんだけど・・・“少々当てが外れたが、それも想定内だ。

“隙を作ってくれないんじゃしょうがない!”

跳躍を続けるシルフィーネが体を右にねじった。剣を持つ左手を前側から右に回し、更に全身を右側に回した。

「!」

ウォルドがその奇可解な行動に一瞬驚いたようなそぶりを見せた、刹那、

シルフィーネが左足一本で前側に大きな跳躍をした。そして右足のステップ、「フン!!」とシルフィーネの気合が入った短い声が聞こえた。更に左足で極端に左側に大きいステップを踏むと、ねじっていた体を勢いよく戻すかのように回転させ、左足を軸に右側からの斬撃をウォルドに浴びせる。ウォルドは咄嗟に剣で受け止めようとする。

今日一番の金属音がコロシアムに木霊した。


“受け止められた!”

傍らで見ていたジーナが悔しそうにそう思った

・・・が・・・

シルフィーネが剣をさらに振り切ると、右足でステップを踏み体を素早くもう一回転して切りかかる。

再び大きな金属音が木霊する。そして、更に左足のステップでもう一回転・・・シルフィーネは回転する連撃を続けた。

さすがにウォルドもこの攻撃に反撃できずに防御するしかない。渋い表情でその攻撃を何とか剣で受け流していた。



ガキン!!、ガキン!!


連続で起こる大きな金属音はもう5回は続いただろうか、回転をかけた強力な攻撃を何とか剣で受けているという状況が続く。大きな金属音が響く度にシルフィーネの下腹へ強い鈍痛が遅いかかる。

“・・・飛んでけ・・・・痛いの・・・飛んでけ・・・!”

強く歯を食いしばり、痛さのあまりに目尻に涙を浮かべながらシルフィーネは連撃を続ける。


ガキン!!

8撃目の音が強く響いた。

「・・・!!・・・」

同時にシルフィーネが、苦悶の表情になった。剣戟前に一瞬の強い痛みで剣戟の角度がズレ、大きな衝撃が自分に跳ね返ってきた・・・同時に下腹へ衝撃が強く伝わった。しかし回転は止めない!次の左足で強く地面を蹴りあげようとした時、下腹からくるズウンと強い鈍痛が全身を襲った。一瞬動きが遅れた・・・・そしてその一瞬の動作によってリズムが崩れた。

“しまった!!”

ガゴン!という鈍い音と共にシルフィーネの剣がウォルドによって止められてしまったのだ。

そして、受けた剣によってウォルドに押し返される。シルフィーネははじき返されるように大きく後ろへ下がった。

「・・・はぁ・・・はぁ・・・」

息が切れた。そして、痛みに耐えかね右手を無意識に動かした。シルフィーネは、この戦いで初めて手で下腹部を押さえた。



「・・・はぁ・・・はぁ・・・やばいねぇ・・・こりゃ・・・」

シルフィーネは息を切らせたまま呟いた。いろいろとやばい、渾身の連撃が全く通じなかった事、想像はしていたが、かなりの体力を消耗した事、下腹の痛みが強く戻ってきた事、そして隙だらけの今の姿勢。

崩れかかった姿勢でなんとか倒れずに踏ん張ってはいるが、それではまともに戦えない・・・・。視線をなるだけウォルドから離さないように必死に睨んだ。


“・・・まだちょっと無理はききそうだけど・・・“

視線はウォルドへ向けたまま、自分のコンディションを素早く確認する・・・しかし、どう考えても、互角に戦うにはいろいろと不足を感じる。

“・・・何とか体力を回復しないと・・・”

そう思っている最中、ウォルドが動いた。「・・・こりゃ・・・まずいねぇ・・・」シルフィーネは苦笑した。


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