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FULL THROTTLE  作者: 磯ノ上一
2/2

罪人金田

取り調べが終了し、オレは裁判所へ連れて行かれた。

「それでは、開廷します。」

裁判が始まった。

「被告人は、証言台に移動して、座ってください。」

オレは裁判官に言われるがまま証言台移動した。

「まず、確認しますが、名前は何と言いますか?」

「あ、き、金田 一…デス。」

「生年月日はいつですか?」

「2648年、7月14日…デす。」

「職業は?」

「あ、学生、でス」

オレは馴れない敬語のせいで情けなくキョドっていた。

「それでは、被告人に

所有者の許可なく所有物を使用。

銃刀法不所持のまま銃の使用。

超電磁力使用許可証不所持。

超電磁力物管理許可証不所持。

管理許可証所有者の見届け無しで管理者所有物の使用について審理を行います。検察官からの起訴状の朗読がありますから、被告人は、その場で、聞いてください。」

裁判官の指示に従い検察官が朗読を始めた。

「起訴状を読み上げます。公訴事実、被告人は、2666年9月20日

罪名及び罰条…(上記の5つの罪を読み上げる)以上について、審理をお願いします。」

検察官が読み終え、裁判官が続ける。

「ここで、被告人に対して説明しておくことがあります。まず、被告人には、黙秘権という権利があります。これは、言いたくないことを言わなくても良いという権利です。質問があっても、最初から最後まで黙っていることもできれば、答えたくない質問に対してだけ、拒絶するということもできます。

また、法廷で発言することもできますが、その場合には、被告人に対して有利であれ、不利であれ、証拠になりますから、注意してください。」

裁判官が長く説明した。

「は、ハイ…」

緊張し過ぎで途中途中聞き逃したがオレがやらかしたのには変わりないから無罪なわけ無い。

こうしてオレの裁判が始まった。

「そこで、今説明したことを前提に聞いていきますが、検察官が読み上げた起訴状の事実について何か言いたいこと、間違っている点はありますか?」

早速裁判官が質問した。

「正当防衛とハイエ、やらかした事は事実、デす。」

オレは正直に話した。

「本来はここで弁護人の意見を聞きますが今回は弁護人無しでの法廷。よって弁護人の意見なしで行います。」

オレは裁判の仕組みも弁護士とやらも知らない。だから今法廷(ここ)でオレの味方をしてくれる人はオレだけだ。

「被告人は、自分の席に戻ってください。」

裁判官の指示によりオレは自分の席に座った。しかし座っても疲れが消える事なんてなかった。

「それでは、ここから証拠調べの手続きに入ります。まず、検察官は、冒頭陳述をしてください。」

証拠調べが始まった。

「検察官が立証しようとする事実は次のとおりです。被告人は、・・・」

偶然学校の防犯カメラが事故の経緯を捉えてたため真偽の時間などなく終わった。

「被告人は、証言台に立ってください。

これで本件の審理を終わりますが、最後に何か言っておきたいことはありますか?」

弁護士がいないため裁判は早く終わった。

「…ナい…で、す」

オレは力無き声で答えた。

「それでは、被告人に対する今回の事件についての判決を言い渡します。」

「(一番緊張するやつー…!)」

「主文、被告人を無期懲役に処する。」

「「「!!??」」」

裁判官の判決に周りがざわついた。

「え!?む、無期懲役って事は、一生独房ってこと!?ですか?」

オレは衝撃のあまり冷静さを取り戻した。

「それでは、被告人を連れて行くよう。」

裁判官は最後にそう言って去って行き、警察がオレを取り押さえた。

「ちょ!待ってよ!オレは未成年だよ!?なのにムショに送るの!?それって違法じゃないの!?ほら!青年法があるよね!?…ない…?」

オレは取り押さえられながらも必死に訴えた。しかし警察は無言のままだった。

オレは抵抗する力もなく裁判所の入り口前に停まっている護送車にぶち込まれた。

「大人しくしていろ。安全運転は心掛けるから安心しな。」

さっきまで無言だった警察のうちの一人はそう言って運転席に座った。

「…ハァ〜…変に疲れたなー…けど、今だけなら少しでも休めるかもな。」

幸い護送車の中にはオレしか居なかった。そしてオレの座席の前には大きめの箱があった。オレは興味本位で箱のフタを開けてみた。

「…菓子パンだ。パックのジュースもある。…」

オレは運転席が見える窓を覗き、助手席に座る警察に聞いた。

「なんか菓子パンあるんすけど食べていい?です、か?」

「…何故聞く?君以外に誰か食べる人がいるのかい?」

「…じゃあ、いただきます。」

普通に「食べていい」って言ってくれればいいのに。

オレがそう呟いて菓子パンを貪り、ジュースを飲む。

朝飯も昼飯も食べてなかったからか、食べてるのにどんどん腹が減っていく。

「多分ムショ行ったら碌なモン食えねえもんな。(モグモグ…)」

オレは少しの寂しげな気持ちを紛らわすように食べ続けた。

「…きろ…オイ、起きろっつーのっ!」

「へあっちょ!?」

どうやら寝てしまったらしい。オレは投げ飛ばされて眠気を覚ました。

「あ~、!?サーセン!って、え?」

寝起きでぼやけてて分からなかったがオレを起こした人は警察では無かった。オレよりも少しだけ年上っぽい金髪ピアスの兄ちゃん系の人だった。

「よぉ!お前が罪人(新入社員)か。」

「…新入社員…?オレは被告人で無期懲役を喰らったハズで…」

まだ寝ぼけてて記憶が曖昧だがヨロヨロと立ち上がりながらオレは覚えてる限りの事を金髪ピアスの兄ちゃんに話した。

「なるほどねー、けど安心しな!お前は今日からウチで働くからなっ!」

「…へ?働く?」

寝ぼけてて周りを見てなかったが周りはボロボロの倉庫がいくつか設置され、他にも鉄くずなどが一か所に無造作に捨てられていたり、見たことない重機が停車され、キレイとは言えないが海が近くにある。恐らく港だろう。

「よし!じゃあ早速ウチのボスにご挨拶と行こーじゃぁないかー!」

金髪の兄ちゃんはオレを担いで近くにある事務所に向かった。

「ボスー、連れてきたよっと」

「ぐえっ」

金髪の兄ちゃんはオレを雑におろした。(正確には担いでいたオレをその場で手放した)

「もう少し優しく扱ってくれませんっ!?」

オレはただでさえ精神的にボロボロなのに投げ飛ばされて落とされてボロボロになりながらもなんとか立ち上がる。すると

「久しぶりだね。金田一(きんだいち)君。」

目の前にいたボスはオレの名前を間違えて呼んだ

「スンマセンね、、オレの名前は金田 一(かねだ はじめ)で…って、アレ!?」

ボスはオレの取り調べを担当してたあの時の警察官(・・・・・・・)だった。

「え、貴方はあの時の警察官、すよね!?」

「そうだね。一応私は警察官でもあるがここの事務所の所長でもある。取り調べの時君に魔術についての質問をしたことを覚えてるかね?」

「あ、あのオレの愚痴すよね」

「そうだ。実は我々は魔術が誕生したことによって新しくできた部署なのだよ。例えば君がやったゴーレムの処分や魔術による抗争を止めるなどのね。」

「へぇー、で、何で罪人のオレがここに?」

本来ならオレはムショ送りだったはずだ。

「君には才能があると見抜いた。だから私が事前にスカウトしたのだよ。なに、ここの部署は新しく出来たばかりでね、ちゃんとした警察は私一人なのだよ。例えば金田君をここに連れてきた人。」

「今隣にいる人すか?」

出会って間もないがオレから見てあの人の印象は極めて最悪だ。

「あの人も君と同じ感じだ。折角だ。オイ、自己紹介しろ。」

ボスが呼びかけると金髪の兄ちゃんは自己紹介を始めた。

「あー?あー…名前は佐上 尋(さがみ ひろ)。年齢は20。就職先奪われた連れとホムンクルス製造工場カチコミ行って片っ端から壊してるところをサツに見つかって捕まって今に至る。ヨロシク」

「佐上は今日から金田君の教育係だ。」

「あぃす、つーかボスも自己紹介してないじゃん」

「そうだったね、私は高屋 健三(たかや けんぞう)。ボスと呼ばれてるが好きに読んでくれて構わない。」

「て、言ってるけど本人はボスって言って欲しいからボスって言っとけよ」

佐上さんはオレにそう耳打ちした。

「では少しだけウチの部署について説明しよう。…

魔術の異常な発展により新しく作られた魔術取締課課長に私は任命されたが、警視庁に空き部屋が無かったせいで数年前廃業したこの港を拠点にし、人員は私と佐上と今回金田君含め8人で活動している。

仕事内容は先程少しだけ話したが、今後仕事をしていく上で分かることだ。ボロボロな所ですまないが心から君を歓迎する。」

ボスはそう言って頭を下げた。

「えっとー、今更ですが…ここってどこすか?」

オレは恐る恐る質問した。

「ん?ここは…―ヨコハマ―だ。」

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