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第4章 水沢うどんと氷の榛名湖

 しんとうワイナリーは榛名湖の東、榛東村にあり、年間7万本のワインを出荷している。

ワイナリーの入口に行くと、バスの運転手が言ったとおり一人のオバさんが出てきて案内してくれた。 ジョーク混じりの案内に酔っ払いのご一行は拍手しながらついて歩いた。

お楽しみの試飲コーナーでは酒が飲めない江藤、竹山以外は全種類の試飲を行った。

皇后陛下が来場した際、おいしくてお代りをしたという梅ワインは焼酎で割って飲んでもイケるというのでホテルに帰って試してみようということになった。

「いいねぇ! じゃあ買っていこう」

中川が切り出した。

「幹事さん、頼むよ」

「えっ? 俺が払うの? 金握ってるのは石山さんなんだよ。 まあ、いいや。 どうせ自分で飲むんだから」

そうして、良介は梅ワインを1本購入して中川に預けた。

良介はそんなやり取りをしながらも、八田の様子をうかがっていた。 階段を降りるとき多少よろけているようだったが、まあ、普通に酔っているくらいだったのでとりあえず、安心した。 何と言っても八田には、酔っ払って転んで骨折した前科があったので、どうしても気にせずにはいられなかった。


 ワイナリーを出ると、昼食をセットしてある万葉亭という、水沢うどんの店へ向かった。

差すが、稲庭、讃岐と肩を並べ日本の三大うどんの一つと称されるだけのことはあり、そのコシがあり、みずみずしいのど越しにさすがの酔いどれ軍団も舌鼓を打った。

良介も、その旨さを堪能しつつ、てんぷらと炊き込みご飯が付いた御膳をぺろりと平らげた。

食べ終わると、土産物コーナーで6食入りのお土産を購入し、小暮、名取と外で食後の一服をしようとタバコに火を付けたその瞬間、館内放送が流れ始めた。

~小林商事“たま遊会”の幹事様、お食事のレジまでお越し下さい~

「ん? 今、小林商事と言ったか?」

木暮と名取の確認すると、二人揃って頷いた。

「まさか、さっきのビール金払ってないのか?」


 そういえば、昼食の時ビルで乾杯した。 昼食時のビールは別料金、現金払いになっているので、てっきり頼んだ井川が払ったものだと思っていた。

 

「まさか?そんなオチないでしょう。 たぶん、サインとかしなければいけないんじゃないんですか」

木暮がそういうので「そうだよな。あれは井川さんが払ってるよな」と安心し、レジへ向かった。

「600円×3本で1800円の支払い願います」

レジの係員がまさかのオチを口にした。

『なんてこった!』良介は仕方なく自腹でビール代を支払った。

木暮達のところに戻ってその話をしたら、「マジですか?」と二人は腹を抱えて大笑いした。


 本来なら、次はハルナグラスの工房を見学する予定だったが、急きょ予定を変更して水沢観音に行くことにした。

参拝した帰りに、ワインの試飲が効いたのか八田が急によろけて転びそうになった。

そばにいた秋元が慌てて支えて転ばずに済んだのだが、既に()(れつ)も回らない状態でもはや八田は泥酔状態に陥っているのは明らかだった。


 水沢観音を出ると、榛名湖に向かった。

30か所のヘアピンカーブを経て榛名山の山頂に到着するとメロディーラインが酔いどれ軍団を迎えてくれた。 時速50キロで走行すると♪静かな湖畔の森の中から・・・♪とメロディーが奏でられるのだ。 良介はすぐに分かったが、後の酔っ払い達は全く気が付いていないようだった。

 そうこうしているうちに榛名湖が見えてきた。 本来ならこの時期、湖は氷で覆われているはずなのだが、温暖化の影響からか、氷で覆われているのは湖の半分程度に過ぎたかった。

バスは、町営の無料駐車場に停車しドアが開くとさすがに冷たい空気が車内に流れ込んできた。

「さあ、着きましたよ」

良介が後ろを振り向くと、井川、山瀬、八田の3人は山登りの最中の緩やかな揺れが心地よかったのか、熟睡モードに入っていた。

「あら・・・ まあ、小うるさい年寄りはほっといて行きましょう」

バスを止めた側は湖面が凍っていた。 加東がボートの桟橋から棒きれで湖面をつついている。 それから恐る恐る湖面に足を踏み出した。

「全然大丈夫。乗っかれるよ」

川島は“危険 立ち入り禁止”と書かれた桟橋の上をひょいひょい歩いて行き、柱につかまりながら湖面に降りた。

「おお!乗れる。乗れるよ」

そう言ってはしゃいでいる。

「川島さん、氷は大丈夫かもしれないけど、その桟橋やばいって。 立ち入り禁止って書いてあるよ」

秋元にそう言われると、川島は慌てて引き返してきた。

「おお、本当だ」

『まったく、いい年をして子供みたいな連中ばかりだ』良介はそう思いながらも、こういう連中ばかりだからこそ幹事をやっていても面白いのだと思った。

湖畔から上がってくると、土産物屋の女将がお茶を入れてくれるというので店に入っていった。 店に入ると、ストーブの温かさがありがたかった。

しばらくすると、女将が黒胡椒入りのしいたけ茶を入れてくれた。 続いて唐辛子茶を持ってきた。 これは体が温まるし、けっこう美味しかった。

「今お入れしたお茶はこちらにありますよ」

「そういうことなのね。」

そう言いながら、中川はしいたけ茶を買った。 バスに戻ると、年寄りたちは目をさましていた。






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