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第3章 ビンゴ

 バスが出発すると、良介はデジタルビンゴマシーンとビンゴカードを広げて後ろの座席に見えるように差し出した。

「それでは、そろそろお土産代でも稼ぎませんか?」

「おっ、いいね! 1枚いくら?」

石山がノリノリで手を挙げた。

「1枚200円で。 一人何枚でもいいですよ」

良介はそう言って、自分の分のカードを1枚抜いて、ボトルクーラーの脇に置いてある紙袋から紙コップを取り出し、100円玉を2枚入れ、カードの他馬と紙コップを後ろに回した。


 “たま遊会”の旅行では恒例の現金争奪ビンゴ大会。 1枚200円で配布したビンゴカードで集まったお金を最初にビンゴした者が総取りするという、ルールだ。 出費が200円で、一人数枚買う者もいるので3000~4000円になるとあって、いい小遣い稼ぎになるので、けっこう厚くなるゲームだ。


紙コップがひと通り回ると、一旦回収しビンゴマシーンのスイッチを入れた。

「それじゃあ始めますよ」

車内に鳴り響くデジタル音。 

「ハイ! Bの14番」

「よしっ! あった」 「無い!」

・・・・・・・・・・・・

「次、Iの26番」

「リーチ!」

「さあ、リーチ出ました!」

その後、何人かがリーチ、さらにはダブルリーチの者も出てきた。

「そろそろ誰かが当たるころかな・・・」

良介はそう思いながら自分のカードを見た。 これだけやっているのにまだ3ヶ所しか空いてない。 『こんなのあり得ないだろう・・・』

「ハイ! 次。 Nの41番」

「ビンゴ!」

そう言って手を挙げたのは今回初参加の竹山だった。

「竹山さんおめでとうございます」

良介は集まった現金を竹内に渡した。

すると、竹山は受け取った現金から1000円を紙コップに戻して、それで続きをやるように提案した。

「おっ! 粋だねぇ」

そしてゲーム再開。 次はまたまた初参加の秋元がビンゴを引いた。

「おめでとうございます。 ところで、秋元さんは戻し無いんですか?」

「ほら!」

秋元はそう言って半分の500円を紙コップに戻した。

「ありがとうございます。 さあ、もう1回戦行きま~す」

再々スタート。

最後に当ったのは、山瀬だった。

「俺も、しこし戻すか?」

山瀬はそう申し出たが、良介もさすがにそれは気が引けたので遠慮した。


 良介にはこの山瀬に対して、ひとつ気にかかっていたことがあった。 

それは、前回の旅行で山瀬は、ことビンゴに関しては全く運がなく、リーチどころか、今の良介のような状態で終わっていたのだ。 挙げ句、機械の操作が怪しいだのインチキだのと、ふて腐れてしまったのだ。

そのことがあり、今回はどうしても山瀬にビンゴの当りを引いて欲しかった。


「ということで、第1ラウンド終了しま~す。 あと、今回、宴会の時には全員に何かが当たるようになっていますのでお楽しみに。 ただ、当たり外れはありますので、ご了承願います」

ビンゴ大会が終了すると、サロン席では再び、酒盛りが始まった。 これもまたいつものことだ。


バスが目的地に近付くと、窓の外には雄大な群馬の山々が連なって否応なしにも旅行気分をかきたてた。

左手には雪を被った浅間山が煙を吐いて、右側には赤木山が颯爽とした雄姿をたたえ、正面には谷川岳まではっきりと見て取ることが出来た。


良介は八田のテンションが妙に高いのが少々気になっていたが、運転手に次の予定について相談されたので、そちらに意識を移した。

「幹事さん、皆さん、けっこう摘まんだりしているのでお昼が少し遅くなっても大丈夫ですかねぇ? であれば、先にしんとうワイナリーに行きますか?」

良介は後の様子を見て運転手の提案を承諾した。

「・・・ということで、先にしんとうワイナリーに行きます」

「おおっ、前回は全種類試飲したからなあ」

川島は毎回、試飲を楽しみにしている。

「よし、いいぞ! この前の伊豆のワイナリーには試飲するところに可愛子ちゃんがいたんだ」

いかにもそれが楽しみなんだという風に井川が言うと、運転手がすかさず、切り返した。

「可愛子ちゃんはいません。 オバさんだけです。 オバさんだけでもたくさん試飲して買ってあげて下さい。」

「なんだよ。叔母さんじゃしょうがないなあ」

井川はがっかりしたようにつぶやいた。

 ワイナリーに到着すると、運転手は集合時間を告げてみんなを送りだした。

バスを降りると、八田の足元が少しふらついているように思えた。






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