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第10章 お疲れ様

 佐野厄除け大師に到着すると、そこは佐野物産店と向い合せにあり参拝客がお土産を買うように仕組まれたとしか言いようのない場所だった。 もっとも物産店の方がずっと後にできたのは明らかだったが、あまりにも見事なコンビネーションに見て見ぬふりをするしかなかった。

 バスが駐車場に入る道中の参道には例外なく多くの店が軒を連ねていた。 良介達はとりあえず、順路通りに参拝を済ませると各々物産店に行ったり、参道の店を眺めに行ったりとそれぞれに時間を費やした。

 今回の旅行では、お土産スポットが特になかったので、ほとんどの連中は前の日の水沢うどんの店でお土産を購入していた。 そもそも、今回の旅行自体が伊香保温泉と言うこともあり、佐野、つまりは栃木県のお土産など全く予想していなかったのだ。

それが、井川の鶴の一声で、年末には必ずCMに流れる佐野厄除け大師を訪れ予想外の観光スポットに来てしまったので、つい、財布のひもが緩んでしまったのだろう。

名取はなんだかんだ言っても結局水沢うどんしか土産を買っていなくて、子供の喜ぶ土産を買っていなかった。 このまま予定通りにアウトレットに行っていたら、父親として子供へのポイントは低かったに違いない。

良介にしても、娘がお気に入りにしている地域限定の、例えばキティちゃんの携帯ストラップなどを、今回は買いそびれていた。 そう言う意味では、ここは絶好のお土産スポットとなった。

 物産店の中でたまたま一緒になった名取と良介はそんな話をしながら、子供用に“栃木限定の”とちおとめのいちご味のポッキーやお菓子を買いあさった。


 昼食に行った“万里”が昼食と言うには余りにも早い時間だったため、佐野厄除け大師では参拝と買い物を含めて集合時間を12時にしていたが、もう少し遅くてもいいくらいの感じがした。

それでも、集合時間の10分前にはみんなバスに乗り込んでいた。 ただ一人を除いては・・・

「またおっさんか?」

そんな声が当たり前のようにささやかれ始めた頃、井川が物産店から出て来て、場市に戻るのかと思いきや、喫煙所でタバコをふかしはじめた。 確かに、まだ集合時間には達していない。

 井川にしてみれば、そもそも、アウトレット息をやめたのは、ただ単に佐野ラーメンを食べたかっただけではなかった。 今日は、旅行から帰ってくるということで、お土産をやるから、孫を連れて家に集まるように子供たちに通達していたらしい。 どうしても、2時には東京に戻りたかったようだ。

そんな井川の個人的な理由など知る由もないメンバーたちは、どこに行っても集合時間に遅れて来る井川をボロクソにけなしていたが、内心は笑い話しのネタにしてやろうくらいの感覚だったのだ。


 ここで、宇都宮に住む竹山は、電車で帰るとバスには乗らずにみんなと別れた。 この竹山、今回初参加で、よほど楽しかったのか、次回は自分も企画委員になりたいと立候補した。 良介は「ラッキー! 幹事まで押しつけてやろう」そう思った。

三井も家が越谷だったので、東京から逆戻りするのが面倒だと言って東武線の佐野市駅でバスを降りた。

 

佐野厄除け大師を出発したのが12時。 途中、佐野ラーメンを食べた“万里”の前を通ると駐車場の方まで行列がつながっていた。

行きの関越とは大違いで、帰りの東北道は全くと言っていいほど渋滞がなかった。 渋滞がないというより、走っている車自体がほとんどいなかった。

1時を過ぎた頃には首都高を降りて浅草の街を走っていた。 ここから会社までは30分もかからない。 午後1時半には会社に戻り、みんなで後片付けをした後解散した。


こうして、今年も『たま遊会』の旅行は終了した。

みんな、それぞれに武勇伝を残した者もいれば、あまり目立たなかった者もいたけど、次回の旅行にこのメンバーが誰一人掛けることなく再び参加してくれることを良介は心から願った。



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