第九十五話
毎週木曜日に投稿します。よろしければ読んでみて下さい。
「夕方には帰るように。きちんと帰れるように、肩に鳥をつけておきます」
ラーカッティア・ヌーは工房の門の前でリオンにそう言った。
「?鳥?」
リオンは肩に乗る小さな小鳥を不思議そうに見た。一見普通の鳥にしか見えない。
「夕方になればわかる事です」
とラーカッティア・ヌーは言うと、ニヤリと笑った。
「カーウェイクは円柱の建物を中心に東西南北の道が引かれています。東は服や装飾品の店、西は酒や煙草などの嗜好品、北は絨毯や家具、武器など、南は食料品などの店がそれぞれあります。まずは東と南に行ってみなさい。比較的安全ですから」
まくしたてるようにそうリオンに説明すると、いってらっしゃいとニコリと笑いラーカッティア・ヌーは彼女から離れて行く。
「・・・・・・」
そう様子をしばらく彼が見えなくなるまで見ていたリオンは、寂しさを奮い立たせて顔を上げた。
「さあ、行くわよ。まずは南に行こうかしら」
「なんて人の多さなの」
リオンは南の食料市場に入り人の多さに酔いそうになっていた。ランドールの人の少なさが懐かしい。ティムレオンの市場もこんなに人が多くなかったのに。
目の前を駝鳥がバタバタと飛んで行く。籠の中は様々な鳥が羽音を立てている。足元には・・・・・・。
「亀?」
リオンはランドールで見た図鑑の中で知っていた亀を見つけて、驚いた。
「食べ物なのかしら?」
あんなに可愛いのに食べるなんてゲテモノ食いなのだろうか。
「亀くん、どこ行くの?おいで」
リオンは一匹の小さな亀を両手ですくい上げた。
「お嬢さん、亀を買ってくれるのかい?」
太った女店主が後ろから声をかけてきた。
「ええ、おいくらですか?」
「そうだね、3ルントでいいよ。そいつ小さいし」
「じゃ、お支払いします」
リオンは3ルントを女店主に渡した。
「じゃ、こいつ叩き潰すよ」
「きゃー!やめてください」
「でも、潰さないと食べれないだろう?」
「食べません!この子は私が飼うのです」
「はあ?亀をかい?」
「そうです」
「変わっているねえ」
「亀は何を食べるのでしょう?」
「そこらへんの野菜くずを与えとけばいいんじゃないか」
「わかりました。ありがとうございます」
「ほれ、あんたのペットだよ」
女店主はリオンの買った亀に布をぐるぐる巻きにして、ちょうちょ結びで飾ってくれた。
「可愛い。ありがとうございます」
リオンは笑顔で女店主に礼を取ると駆け出して行った。
「食べたほうが美味しいのにねえ」
女店主は、そのリオンの後ろ姿を、不思議そうな眼差しで見送った。




