第八十七話
毎週木曜日に投稿します。よろしければ読んでみて下さい。
「さあ、お腹が空いてないかい?パンとスープがあるから貰ってきなさい」
ラーカッティア・ヌーはそうリオンに指示した。
「あのスープ鍋の側にいるのがフクシュマーさんだよ」
彼が指差す方向を見ると、コロンとふくよかな体型の女性が、スープ鍋をお玉でクルクル混ぜている。
リオンは近くに行って「はじめまして、リオンと申します。お世話になります」と彼女に挨拶した。
「ああ、リオンね。挨拶がちゃんとしている、良い子だ。スープは飲むかい?」
「はい、いただきます」
「はい、皿を持って」
フクシュマーはリオンに皿を渡すと、柄の長いお玉を綺麗に動かしスープを注いでくれた。
トマトベースで具沢山のとても美味しそうなスープにリオンは「美味しそうです」と緊張な面持ちの笑みを浮かべた。
「そうだろうとも、美味しそうじゃなく、美味いんだよ。早くお食べ」
フクシュマーは、あそこ空いているから、そこに座りなさいと指差した。
「そうだ、ほら、チーズパンも持って行きなさい」
「は、はい」
リオンは慌ててフクシュマーからパンを受け取ると、二人の女の子の座る席に近付き、「ここいいですか?」と断りを入れ、彼女達が頷くのを見て席に着いた。
「・・・・・・」
二人はリオンと同じくらいの年齢に見える。一人は綺麗な金の髪で、頬のそばかすが印象的な娘と、赤毛の髪の瞳が細い娘で、どちらかというと大人しい印象だ。今もリオンを見てコソコソと話をしている。
「はじめまして、リオンと言います。このスープ美味しそうですね。いつもこんな美味しそうな料理がここではいただけるのですか?」
「・・・・・・」
二人はひとつ頷いただけで、リオンと会話をしようとはせず、又二人だけでコソコソと話を続けた。
「そうですか、すみません話しかけて」
リオンは話しかける事を諦めた。気分を切り替えて、スープを口に運ぶことに集中することにした。でないと孤独感が彼女の心に渦を巻き離れない気がしたのだ。
―ここでは、心を置いてはいけないのよ。一人で生きて行くのよ。
リオンは折れかかった心を慰めながらスープを口にした。
スープはとても美味しく、この味を共用したい弟の姿を思い浮かべた。
イリス、美味しいわよ。あなたは、あの固いパンで何処へ行ったのかしらね。
「―・・・・・・」
リオンは鼻をすすりながら、食事を終えた。




