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第八十五話

毎週木曜日に投稿します。よろしければ読んでみて下さい。

 「ラピス、クルネッタ、アファーン」

アイン・フォードが茶色の扉に向かって声を掛けた。

「ラピラピ」

扉の向こうから声がかかる。

「さあ、入りましょうか。絨毯職人の工房ラフタヌーンです」

アイン・フォードが手を上げると同時に扉が開いた。

中に入ると巨大な絨毯が壁一面に、はためく建物が目に入った。

「凄い大きな絨毯だわ」

「あれはまだ未完成の代物ですよ。これからも大きくなるのです」

「まあ、これからも大きくなるのですか」

「一人の職人の作品です」

「あれを一人で織り上げているのですか?」

「そうです、彼の作品は大規模なのです」

「作者をご存じなのですか?」

「ええ、ここの職人たちの長ですよ。ラーカッティア・ヌーという愉快な方です」

「ラー・・・・・・カッティア・・・・・・ヌー」

リオンは長の名を口にした。楽しい方なのかしら。修行というものが厳しいものだけではありませんように。彼女はそう願い目をキュッと瞑った。

「呼んだかね、ワシの名を」

リオンの耳元で急に声がした。

「え?」

とリオンが言うと

「ん?」

と男性の声がした。にゅっと首から上がリオンの肩から見えた。

「きゃあ!」

リオンが驚きで叫んだ。

「これは、お嬢さん。驚かせて申し訳ない」

突然現れた人物は深々と頭を下げた。そして、頭を上げ二カッと笑って見せた。

豪華で様々な布を身体中に巻き付け、全体的に黄色の印象のある老人はリオンを前に豪快に笑い嬉しそうだ。

「私がラーカッティア・ヌーです。よろしく」

老人はそう名乗ると手を差し出した。

「リオン・・・・・・と申します。よろしくお願いします」

「ここで修行すれば、アリスタジオールにすぐに行けるよ!頑張りなさい」

「はい!頑張ります!」

リオンは思わず大声で答えた。

「元気でよろしい」

ラーカッティア・ヌーはうん、うん、と頷いた。

「さあ、お嬢さんはここで、連れの者とはお別れだ。さよならを十分にしておきなさい」

―え?もうお別れなの。リオンは急に寂しくなった。

「・・・・・・」

リオンは最愛の弟の顔を覗き込んだ。

「・・・・・・イリス、怪我の無いように。寂しかったら空を見て、姉さまも空を見上げるわ。同じものを見ているから繋がっているようでしょ?」

「・・・・・・」

イリスは満面の笑みで答えてくれた。

「アイン・フォード様、イリスをお願いします。・・・・・・一年後にいらっしゃることをお待ちしております」

「承知致しました」

そう快諾するとアイン・フォードはリオンの耳元で「イスの地の出身であることは伏せてお過ごし下さい」と囁いた。

「・・・・・・!」

驚くリオンから離れると何事もなかったかのようにアイン・フォードは振る舞い、そうして、震えの止まらぬリオンを残し彼らは門の外へと去って行った。


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