第八十四話
毎週木曜日に投稿します。よろしければ読んでみて下さい。
「・・・・・・ここは、何の建物ですか?」
リオンは街の喧騒から離れた静かな場所に少し不安を抱いた。
「ここは絨毯織職人の工房です。今日からリオン様、あなたはここで絨毯の織り方を習ってもらいます」
「ええ?私は絨毯の職人になるのですか?」
アイン・フォードの突然の言葉にリオンはとても驚いた。
「はい、ここで修行してもらいます」
「イリスは?イリスも一緒ですか?」
「いいえ、私としばらく旅を続けます」
「そんな、イリスと一緒じゃないなんて、嫌です」
リオンは急に孤独を感じた。一人でこの場所で生きて行くのかと思うと先が真っ暗だ。
「イリス様の目的を果たすには、二人で行動をしておきたいのです。ずっとここにいるわけではありませんので、安心してください」
「―・・・・・・そんな、イリスがいたから、苦しい時も乗り越えられたのです。弟がいなくなるなんて、嫌です」
リオンは堪らずアイン・フォードに縋りついた。
「ここで、修行をしてもらわないと、あなたは次の街には、イリス様と一緒に入れないのです」
「え?どういう事です?」
「次の街は、職人が集まる街で、技術が無いと入れない街なのです。あなたは、ここで、技術を学んで職人の街アリスタジオールへ入る事を目指して下さい」
「それしか道はないのですか?」
「今のところは、そうですね」
「そんな・・・・・・」
リオンは目の前が真っ暗になっていく感覚に襲われた。
「・・・・・・」
泣きそうなリオンの腕を引っ張るのはイリスだ。
「何?イリス」
「・・・・・・」
イリスを見ると、彼の口が‟大丈夫”と動いた。
「イリス・・・・・・」
リオンはそっと弟を抱きしめた。
「こうして、ずっとあなたを抱きしめていたいわ。傍に居て」
「・・・・・・」
イリスはそんな姉の頭を優しく撫でた。
「一年で修行も終わります。この街に春が来た時にお迎えに参ります」
アイン・フォードがそう畳みかけてきた。
「イリス・・・・・・」
リオンはイリスをギュッと更に強く抱きしめた。そして、イリスから離れ顔を上げた。
「一年ですか・・・・・・わかりましたわ。ここで修行します。もう決まった事でしょうし」
決意したリオンの顔は潔い。
「一年は長いわね。でも、これしか道が無いなら仕方ないのね。イリスそれまで無事でいてね。どこも怪我などの無いように」
リオンはイリスの顔を覗いた。
「・・・・・・」
今度はイリスがリオンを抱きしめた。大丈夫と伝えたいようだ。
「うん、この温もりを忘れないわ。あなたも元気でいてね」
姉弟は互いを強く抱きしめ合った。




