第八十話
毎週木曜日に投稿します。よろしければ読んでみて下さい。
「ここで野営をしましょう。夜は冷えます。マントを手放さない様に」
アイン・フォードが砂地から岩が覗く場所でそう言った。
「昼間はあんなに暑かったのに夜は冷えるのですか?」
リオンは今日は歩かなくてすむ安堵感に満ちていたが、アイン・フォードの口から知った砂漠の夜の寒さに驚いて見せた。
「砂漠は熱しやすく、冷えやすいのです」
「そうなのですか、人が生きて行けない環境ですね」
「いえ、一部の人々は、この砂漠で生活していますよ」
「こんなにも過酷なのに、生活しているのですか?」
「ええ、砂漠をよく知り尽くしているのですよ、彼らは」
「凄い人たちですね」
リオンは心から感心した。きっと強い心を持っているに違いないと想像もした。
「さあ、焚き木の草を拾ってきます。この場を離れない様にして下さい」
アイン・フォードはそう言うと空にした鞄を背負うと砂漠へと歩き出した。
「イリス、世界は広いのね。こんな風景見るなんて思いもしなかったわ」
リオンは弟にそう話しかけた。
「・・・・・・」
イリスもそう思っていたのか、二回頷いて見せた。
「これから、どんな風景が見られるかしら。本には決して載っていない事だらけでしょうね。ワクワクしてきたわ」
リオンはそう言うと嬉しそうに笑った。
「・・・・・・」
イリスは姉に砂に書いた字を見せた。
「え?ランドールを出たことに後悔は無いのって?」
イリスはリオンを案じていたのだ。弟は上目遣いで心配そうだ。
「そうね・・・・・・」
イリスの言葉に少し詰まったが、少し考えてリオンは返事をした。
「ランドールに帰りたいわ。でも、それを考えても、もう仕方ないことよ。私はこの旅を楽しみたいわ。もちろん、砂漠を歩くのは疲れるけど、まだ見ぬ世界に心が弾むの」
「・・・・・・」
イリスは嬉しそうに笑ってくれた。破顔した顔を見るのは久しぶりだわと弟の笑顔にホッとし、リオンも笑顔になった。
「ふふふ」
姉弟は見知らぬ風景で顔を寄せ、笑い合った。
―イリスがいてくれて良かった。心が豊かになるわ。
リオンは弟の笑顔に幸福を感じた。




