第七十五話
毎週木曜日に投稿します。よろしければ読んでみて下さい。
「さあ、召し上がってください」
リオンはアイン・フォードに紅茶を注ぐとパイに生クリームと果実が乗ったお菓子を勧めた。
「今まで、どちらにいらしたのですか?」
リオンは紅茶に手を付けたアイン・フォードに質問した。
「イリス様の進むべき進路の確定の為、様々な古き種族の遺跡を探っておりました」
「遺跡ですか、どんな所なのです?」
「・・・・・・申し訳ないですが、遺跡について詳しく話せることはありません」
「どうしてです?」
「イリス様の行く先については話せないのです」
「姉の私にでもですか?」
「ええ、そうですね」
「そうですか・・・・・・そうですね、イリスは何かを抱えているのでしたね。失礼しました余計な事を聞いてしまいました」
リオンは少し寂しそうに俯いた。アイン・フォードはそんな彼女に「いえ・・・・・・」とだけ反応した。
「残念です。遺跡ってどんな所か興味があったものですから」
「古い過去しか残っておりません。寂しい所ですよ」
「そう・・・・・・詩の世界で知った範囲では素敵な場所の様に思っていましたわ」
「詩の世界は夢でしかありません」
「・・・・・・夢ですか。夢を見過ぎているのかしら、現実的じゃありませんね、私」
「姫君なら夢を見ていても良いのではないでしょうか」
「夢ばかり見ていたら今を生きれませんわ。私はこの世界に生きていかねばならないのですから」
「確かにそうかもしれませんが・・・・・・」
アイン・フォードは続ける言葉を探しているように見えた。
「もうこの話は無しにしましょう。さあ、このお菓子はイリスも手伝ったものですよ。召し上がって下さい」
リオンは少し突っぱね過ぎたかしら、とアイン・フォードを見た。どうしても素直になれない自分が嫌になる。上手く自分を動かす事が出来ない彼の前では。この感情は何処から来て何処へ行くというのだろう。この制御できない荒々しい感情は。
「・・・・・・」
リオンは溢れる感情を殺して、アイン・フォードをもてなした。そんな彼女をイリスは静かに見ていた。明らかに無理をしている姉を心配そうに見ているようだ。彼女の感情が揺らめくのは彼のせいだろう、それを指摘したら姉は壊れてしまうのではないだろうかという思いがイリスにあり、リオンに対し何もできないでいた。
―沈黙が何かをもたらすかもしれない。
イリスはリオンのもてなしを手伝いながら一人そう結論付けた。




