第七十四話
毎週木曜日に投稿します。よろしければ読んでみて下さい。
「―・・・・・・イリス、いよいよこの街ともお別れになるのね」
リオンはイリスにそう声かけながら、お茶の準備を進めた。
「・・・・・・」
イリスは静かに目を伏せ姉の声掛けに応じた。イリスは島を出てから以前の活発さが無くなってしまい、大人びた瞳でリオンをじっと見つめる事が多くなった。全体的に元気が無い印象だ。声を失った事で、少年時代を過ぎ一気に彼を大人へと成長させたのかもしれないとリオンは悲しい思いで弟を見た。
―もっと声を失った事に泣いてくれればいいのに。私を責めればいいのに。
リオンはイリスにそう心の中で願った。
「・・・・・・?」
イリスが赤い木の実を入れていいか、目で問いかけてきた。
「ああ、それを散りばめてくれるかしら」
「・・・・・・」
イリスが優しく微笑む。そんな弟を見て、もう私の知っているイリスでは無いのだわ・・・・・・リオンは成長した弟を寂しく思った。
「さあ、出来たわ。アイン・フォード様の所に行きましょう」
「・・・・・・」
イリスはお茶セットをワゴンに置き、キッチンから居間へと運んだ。
「本当に大人になったわ」
ランドールの頃の弟を考えると想像も出来ないくらいの行動だ。以前の彼なら甘えて文句の一つくらい言いながら運んだだろう。
「・・・・・・?」
頼もしくなった弟は感慨深げなリオンに不思議そうな視線を投げかけた。
「ううん、何でもないわ。ありがとう運んでくれて」
「・・・・・・」
当たり前だよと彼の唇が動く。
「そうね、もうすっかり大人だものね」
リオンがそう言うと、少し昔の顔に戻った弟を嬉しく思い彼女は微笑んだ。




