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第七十一話

毎週木曜日に投稿します。よろしければ読んでみて下さい。

 「―海の縁に一人でいるといけないよ。波がすぐにさらってゆくからね」

急にリオンはそう声かけられた。

振り向くと背の低い老婆が立ってこちらを見ていた。

「あなたは?」

リオンはその老婆に問いかけた。

「―そこらに居る婆さんだよ。あんたは海を知らなそうだから、注意してやっているんだよ」

そう言うとフンと鼻を鳴らした。

「そうですか・・・・・・ありがとうございます」

「波はその者を絡めとり、海の奥地へと連れて行く深き青の世界へ」

老婆はいきなり声を上げて詩のような一節を詠った。

「何でしょうか、詩ですか?」

「―昔からある言い伝えだよ。それじゃお姉さん、気を付けてな」

老婆は言いたい事だけ言うと、満足そうにリオンから離れて行った。

「あの・・・・・・」

リオンが声をかけたが、老婆は振り返ることなく去って行く。

「・・・・・・」

波はリオンの足元をするりと流れて行く。

「―・・・・・・」

リオンは先程の老婆の言葉を思い出し慌てて砂浜から離れようとした。

―がなぜか先に進めない。老婆の言う通り波にさらわれるのだろうか。リオンは恐怖を感じた。

「助けて!誰か!」

リオンは声を上げた。

「―・・・・・・」

足元はリオンの足を強く掴んで離さない。

「助けて!」

「待ってて!今行く!」

聞き覚えのある声がする。この声はカイトという青年だろうか。

「手を取って!」

やはりカイトという青年だった。長身で手足が長い。カイトはリオンに手を差し伸べた。

「よし、行くよ!」

彼はリオンの両手を海から引っ張り上げ、海より離れる為、二人で、そこから駆け出した。

「―ありがとうございます」

リオンは彼に礼を言った、と同時に自分がした事に気が付き青ざめた。『助けて』をランドールの言葉で叫んでしまったのだ。

「―な、何か私変な言葉を使いませんでしたか?」

逃げなきゃ、ああ、ばれてなければいいのだけど。リオンは頭が真っ白になりそうだった。

「えっ?別に・・・・・・。助けてとしか聞こえなかったけど」

「―そうでしたか、ならいいのです」

リオンはホッと息を吐いた。

「淡き想いを君の姿に抱く。銀色の髪は・・・・・・えーなんだっけ」

カイトは詩を絞り出すように言葉にして見せた。

「昨夜先生に聞いてもらいたかった詩なのですが・・・・・・。緊張して浮かばない」

「やはり、昨夜浮かんだ詩でしたか、さわりを聞いただけでも素敵です」

ストリニキアは夜分に来たカイトに怒り心頭だったが、彼は詩人だ。芸術家というのは時間など関係ないのではないだろうか、とリオンは理解していたので、彼に対して寛容だった。

「ああ、僕の詩の女神(ミューズ)の前では言葉が緊張で思考が止まる。僕の心の女神(ミューズ)よ」

カイトはリオンの手を取り跪いた。

「えっ?」

「貴女は僕の詩の源。愛する人。生ける伝説」

「あ、あの」

戸惑うリオンの手に熱い口づけをするとリオンに迫り抱きしめた。

「―!」

リオンは自分が彼にとって、どういう存在かを初めて気が付き全身が騒めいた。

「・・・・・・」

逃げたい、逃げ出したい。リオンは彼の腕の中困惑し続けた。リオンはじっと身を固めたまま、ある人の姿を思い浮かべた。助けて・・・・・・。

「―俺の女に手を出すな」

急に体が解放されたと思ったら、目の前にアイン・フォードの姿があった。


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