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第六十六話

毎週木曜日に投稿します。よろしければ読んでみて下さい。

 灰色に凍る海の上を風に削られた波が重なる。船は高まる波を乗り越えて進む。その船首は、ぶつかる飛沫が絶えず張り付いては消えて行った。

・・・・・・この海は水ではなく岩の上を進んでいるかのよう。何処からこんな荒々しい色が湧いてきたのかしら。

リオンは船内の窓からわずかに覗く外を見ていた。イリスとリオンは船が港を離れてから、この船にある部屋から一歩も外に出る事を許されていなかった。部屋にある唯一の小窓も乗船してからずっと閉じられていたが、二、三日前から外の様子をうかがうことが出来るようになっていた。

―海というのはこんな哀しい色をしているものなのね。

窓の外は灰色の空と海の風景しか広がっていなかった。外の世界というものはこんなにも寂しい風景でしかないのかと、二人で、ため息をついた。

外の色は、冬の悲しい悲鳴のような音が鳴り響いているようで、リオンは思わず窓から離れた。

―姉さまはこんな哀しい海の底に眠ってしまったの。リオンはこの海に流されていった姉の事を思った。ランドールの土地に帰してあげたかった。リオンは部屋の隅からもう一度窓の外を見た。

―もう二度と帰れなくなってしまった。

船が出た港も銀青山も、もう無い。ここの海には何も無い。既にリオン達の手の届かない所まで来てしまったのだ。

灰色の窓辺に僅かに光が鈍る。光を得た海は銀の色を帯び輝いていた。海は光に満たされ船の行く先まで、色を与え始めていた。

「お二人とも食事です」

その声と共にアイン・フォードがドアから現れた。彼の手には二人分のスープとパン。それらをテーブルの上に置くと何も言わずに出て行こうとした。

「―いつ外に出られるのですか?」

「―そうですね・・・・・・」

アイン・フォードは扉に手をかけたまま二人の様子を見た。

「わかりました。外に出ても構わないでしょう。もうじき着く港も近い事ですし」

「港に泊まるのですか」

「ええ、船の旅も終わりです」

リオンはアイン・フォードの言葉にそっと溜息を漏らした。これ以上息の詰まる思いを続けることに精神的にも体力的にも限界だったのだ。

「―それでは、お食事が終わりましたら、甲板に案内いたします。お二人とも外はまだ寒い、マントを羽織っておいて下さい」


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