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第六十二話

毎週木曜日に投稿します。よろしければ読んでみて下さい。

・・・・・・“闇”。イリスはその言葉を耳にすると、苦しそうに目を閉じた。彼に再びあの時の恐怖がよみがえる。

「・・・・・・イリス、顔を上げなさい。苦しい時目を瞑り、それを避ける事は誰でも出来る事。人はその時こそ顔を上げ前を見据えるべきなのです。自分の進むべき道を」

ソルヴェイグは、腰を下ろし、イリスの顔を覗き込んだ。

「・・・・・・」

イリスはその言葉に反応するように目を開けた。そして、母のような眼差しで、自分を見つめるソルヴェイグの顔を見上げた。

―母様・・・・・・似てもいない彼女の顔に母を重ねるのは、ソルヴェイグの髪の銀色の輝きのせいだろうか。

「―・・・・・・」

イリスは甘えるように、ソルヴェイグの肩に、すり寄った。

「イリス、あなたは旅立つことで多くのものを無くしました、その代わり外の世界を知ることが出来ましたね。人は失うものと得るものを繰り返しながら時を過ごして生きていくのです。あなたの旅立ちに起こった事は、ほんの始まりにすぎません。あなたはこれから多くのものを見、人を知る事になるのですよ。その一つ一つが大人へとあなたを成長させる大きな要因なのです。イリス、あなたは“闇”と接触し、以前より”闇”がどのようなものか知ることが出来たでしょう。“闇”の者とそうでない者の差を肌で感じましたね。“闇”がどのような方法で近付いてくるのかも。少なくとも”闇”に対して防ぐ術を学んだはずです」

イリスの視線は、いつの間にか、そう話すソルヴェイグの瞳を向いていた。

「イリス、”闇”を恐れないで。そして、あなたの仲間を信頼しなさい。あなたの仲間は決して”闇”に降る者たちではありません。イリス、今なら私の言っている事がわかりますね?」

イリスは力強く頷いて見せた。自分の身内を疑った事を彼は恥じていた。あの実際の“闇”の恐怖に出会うまでの自分はなんて醜い生き物だったのだろう。

「あなたがこれから進む旅は限りなく困難な道となるでしょう。あなたと旅する仲間は、その旅を支え守ってくれる者達です。大切になさい、その絆を」

「・・・・・・」

イリスは再び頷いた。

「イリス、あなたはクインの裂いた声の三つの内の二つを探しなさい。一つの言葉が三つに分けられたのです。三つの言葉が重なる時、第二の太陽は役目を終えます。幼き子、我らが早く外の世界に出ていれば、言葉を身体に宿すことも無かったのかもしれません。外の世界、我らにとって越えられない運命。この時代に災いとして存在するのは、気の遠くなるほど長く生きた我らなのでしょうね」

ソルヴェイグは母がしてくれたように、イリスを優しく抱きしめた。

―泣いているのだろうか?

イリスは風に踊る銀の輝きを見ながら、彼女の哀しみを思った。世界が自分達のものでない時を過ごした彼らは、どうしてそこまで生きてきたのだろう。こんなに辛く悲しそうなのに。

「過去の遺物にしては、危険なのだよ、我らは。あの光の中、生き延びるべきではなかった・・・・・・」

イリスはソルヴェイグの肩越しから、聞き覚えのある声がかかるのを聞いた。何処からかとイリスは探し、よく見ると、その声の主はイリスの足元に腰かけていた。

「アリ・・エン様?」

ソルヴェイグは小さな老人に向かって声をかけた。その者は手を振ってそれに応えた。

「いつからです?そこにいらしたのは」

「話の始めからじゃ」

「―このような者を寄こさずに早くこちらにいらして下さい。もうあなたも、森の世界にはいられないのですから」

「もう少し、この霧の世界を見ておきたかったが、・・・・・・わかった。すぐに向かう事にしよう」

そう言葉を切ると小さな老人は、力が抜けたようにコトンと草地に倒れ込んだ。

「・・・・・・?」

イリスは確信に満ちた目でソルヴェイグを見ると、彼女は頷き答えた。

「―そう、これは、森の人の長アルウインドのダルモンなのです」



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