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第五十四話

毎週木曜日に投稿します。よろしければ読んでみて下さい。

「―」

ヴァー・・・・・・

ソルヴェイグの声が何処からか微かに聞こえた。

「ソルヴェイグ?すぐに、姉さま達がどうなったか、わかるかも」

イリスは先程と打って変わって嬉しそうな声を上げた。

「姉さま」

イリスは立ち上がり戸口の方へと向かった。ソルヴェイグの姿を一目見れば安心できる。ここは安全なのだと。彼女に聞けば、アイン・フォード様は“闇”の者では無かったという証明にならないだろうか?イリスはソルヴェイグを早く見ようと小屋から外へ飛び出して行こうとした。

「イリス」

トマは心配そうに声を掛けた。

「―大丈夫だよ、トマ。何処にも行かないさ。ただ、姉さまの無事を確かめたいんだ」

「―・・・・・・そうか、あまり小屋から離れるなよ。この辺りは霧が濃いから迷いやすいからな」

「―わかった」

イリスはそう返事をし、外へと出た。トマの言う通り、小屋の外は、イスターテのように、霧が立ち込めていた。イスターテより、この霧は濃いように思えた。湿った重い臭いのようなイリスが感じたことの無い空気が含まれていた。

風が右から左へと霧の裾野を引きずるように動いていく。そして、時折思い出したように強風が草地より舞い上がり、イリスに霧の向こう側を垣間見せてくれたりもした。

「―」

霧の裾野から、誰かが近づいて来る影が覗きだしていた。その姿は遠いようで意外にも近くに存在しているようだった。

「―姉さま!」

イリスは思わず二、三歩駆け寄ろうと足を進めた。

「そこに居るのは姉さまだよね?」

「・・・・・・」

声はかけたものの返事がない事に、不安を抱いたイリスはためらいがちに声を絞り出した。

「―」

返事はない。イリスは後ずさりしながら相手の出方を待った。大人しくトマのいる場所にいるべきだったか・・・・・・。イリスは半分後悔しながら、相手との距離を保つため足と前方に神経を集中させた。

風は再び霧をかき消すように強く草地をすり抜けて行った。それは、一瞬の事。霧の中の人物はイリスの目にはっきりとした形で飛び込んできた。

「―・・・・・・!」

イリスは風に髪を任せ、目の前に立つ人を見て呟いた。

「姉さま・・・・・・」


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