第五十一話
毎週木曜日に投稿します。よろしければ読んでみて下さい。
「そんな事初めて聞いた」
「そうだね。だから、森は僕らとイスターテの者しか通れないんだよ。あの森がランドールと外の世界を守ってきたんだ」
「―森に入った国の人は、知らずに、そうやって死んでいったの?」
「―守りの印を持つ人は僕らに助けられるよ、君のようにね」
(―では、彼の事も助けてもらったのだろうか)
イリスは目を閉じてシェルシードの事を思った。無事であって欲しい。”闇”の者でなければと思う。
「・・・・・・」
全ては自分に都合の良い願いでしかない。
(―見捨てたくせに)
イリスは自身を刺す心の叫びに頭を振った。
「―イリス・・・・・・森の中で何かあったのか?」
トマの問いに、イリスは辺りの空気に、グッと押されたような感覚に陥った。
「・・・・・・」
イリスは口を開けると、涙と共にトマに今までの事を語り始めた。その言葉は一気に畳みかけるように次から次へと彼の口から吐き出された。
「そう、よくわかったよ」
イリスが漸く話し終えた時、トマはそう言葉をかけた。
「―僕は最悪なんだ。姉さまを助けてやれなかったし、シェルシードも見捨てた。彼は逃げる僕の後ろ姿をどんな気持ちで見ただろう」
「・・・・・・人を見てその者が“闇”の者であるという事を判断するのは難しい。仲間を疑うあまり、お互いに殺し合う者さえいる。“闇”はその者がその窮地に陥るのを待っている。・・・・・・イリス、僕を見て”闇”の者だと思うかい?」
イリスはトマの目を見て顔に浮かぶ表情を見た。以前に見た彼と変わりはない。
「―わからない。そうでないと信じたい」
イリスは祈るように下を向くと、両手を固く握りしめた。
「僕は“闇”の者ではない。これは本当の事だ」
トマはきっぱりとイリスにそう告げた。しかし、その証は何もない。イリスにはトマの言葉を完全に信じる事が出来ないでいた。
「しかし、君が信じてくれなければ、何もならない。僕が”闇”の者ではない要因はいくらでもある。まず商人であるダラクの民を治める次代の長は僕であり、”闇”に対する防ぎえる全ての事を知っているという事。とにかく僕が”闇”に倒れたらお仕舞いなんだ。商人は“闇”に対する様々な守りを使い、あらゆる事を施してきたんだ」
トマは壁に大きく飾られた印を指差した。
「―あれが守りのひとつだ。”闇”“はあの印の形を崩す事を恐れる。だから、窓やドアに必ずあの印がつけられている」
「・・・・・・守りの印」




